いたい
おいてくの?
どうしてよろこんでるの?
おれはここにいるよ
ズキズキ……頭が痛む
無意識に右手を頭に持っていく
1本の髪の毛が手に触れるか触れないかの狭間で手が止まる。これも無意識だ
止まった手を目線の先まで持っていった時、久しぶりに自分の脳が答えを求めて動く
俺は今、自分の髪の毛が汚れるのを嫌がった
もう一度自分の手を見る
そこには汚れひとつない。遠くで見すぎているのか、子供の手のような小ささに感じる
小さいはずなのにいつもより重く感じ、重力に任せて腕から手を落としてしまった
その手は何かにぶつかる。その感覚は自分の背中、腰、太もも、かかと、後ろの頭…と伝っていく。
やっと理解した
俺は今、仰向けで倒れ込んでいる
さっきぶつかったのは床だ。景色が一面真っ白なせいで気がつくのに時間がかかった
重たい体を腕を支えにして持ち上げる
急に頭を動かしたせいか、頭がまた痛みを 伝えてくる。ズキズキ…
痛みが消えていくまでじっと待つ。するとゆっくりと視界のぼやけがとれてきた
それでもまだ痛みが怖かったためゆっくりと頭の向きを変えて周りの様子を伺う
「どこや…ここ…」
全く分からない。真っ白である事以外の情報が入ってこない……こんな空間初めてや
「おっ久しぶりのお客や」
目線の後ろ側から知らない声がした。足音も気配も感じ取れなかったため少々ビビる
「は?何言っとるんや、てかお前誰や」
自分が思っていた以上に肝が座っていたため、変に声を出すことも無く気になった事をそのまま後ろに居る誰かさんに伝える
「おれ?俺は“シャオロン”。よろしくな!君の名前聴いてもええか?」
声から男って事が分かりつつ姿を見ようと顔を向ける。
そこには声からは想像していなかった中性的な学生がいた。少しはねた髪と血と痣だらけの肌、それを隠そうとする学生服。あまりにも痛々しい姿に言葉を失う
“どうして?”と思いながらまじまじ見ていると彼と目が合った。何かを訴えているような目線………そーやった、俺なんか聞かれたな
慌てて聞かれたことを思い出す
「あ、あぁ…俺の名前は…
ロボロ…。」
俺…ロボロって名前なんや…
自分で名前を言ったはずなのにどうもしっくりこない。これほんまに名前合ってる…?
sha「ほーん、ロボロね。おっけ!よろしくな!」
そう言ってシャオロンと名乗る者はニカッと笑顔を見せてきた。
流れるように出てきた右手に答えるために自分も右手を出してその手を掴む
握手してくれたのが相当嬉しかったのか、より口角が上がって眩しく見える
sha「その様子じゃぁなんも覚えてない感じか…?さっきまで何してたか覚えてる?」
そう言われると確かに思い出せない。さっきまで何をしていたのか、どこに居たのか、なんなら自分の姿も名前もこの記憶で合っているのか疑問に思うほど。
rbr「なんも思い出せん…」
sha「生贄…では無いよな、願い事聞いてへんし」
rbr「生贄…?願い事…?何やそれ」
sha「ここが何処なのかも知らんかぁ、、お前ほんまに何したん?人間よな?」
rbr「なんも分からないんやって、質問する前に俺の質問に答えてくれ」
頭の中は空っぽ同然なはずなのに質問攻めで頭がパンクしそうになる。今聞いても頭に入ってくる気がしない
sha「ごめんごめんw1個ずつ説明するな、」
そう言ってシャオロンは笑ってみせると偉そうに腕を組んで話し始める
sha「ここは“呪いの偶像”の中や。そこにお前は多分…封印された」
曖昧な部分が気になるが…今は話を聞くことを優先しよう
sha「んで俺は、その偶像の“願いを叶える部分”でぇ…」
うん……ん?
sha「この下で寝てるやつが“生贄を必要とする部分”や!!」
…あ? 下で寝てる…?
頭の中をはてなマークで埋めながら下を見ると、そこには『小さな子供』がいた。しかもよく見たらツノ生えとるッ??!!
sha「そんなビビんなってwwもうこいつずっと寝てるから食われる心配はないでw」
“食われる心配があるの??!!!” てか、こんなしれっと人外を見ることになるとは…
今の状況が訳分からんすぎて初めて鬼を見たというのに既に受け入れ始めている自分が怖い
sha「どう?わかッ
rbr「なんもわかってないですぅ」圧
ドヤドヤしているシャオロンの顔を切るぐらいの勢いで答える。実際ほんまにわかっていない。これで分かってもらえると思っているこいつの頭も訳分からん
sha「えぇ〜なんでやぁ」
rbr「色々すっ飛ばし過ぎや、じゃあまぁ…呪いの偶像について詳しく教えてもらおうか」
sha「俺もよくわからんᐢoᐢ」
rbr「はぁ〜?」
なんやこいつ、適当すぎるやろ…あとやめろその顔、腹立つわ
あれから結構がちトーンで「教えろ」と聞き続けたが、全部「分からない」と返されてしまった。どうやら本当によくわかってないらしい
……一旦整理した方がええな。
俺が今分かっていることは
ここは呪いの偶像という願いを叶える代わりに生贄を必要とする偶像の中で、それに封印されてしまった事
今目の前にいるコイツは、シャオロンって名前でこの偶像の願いを叶える力の部分って事
下にいる小鬼は何故かずっと眠っていて、この偶像の生贄を必要としている部分って事
……うん。何となく分かったけど分からん(?)
もうええわ、それよりここから出ることを優先に考えた方がええな
rbr「あんさん 願い叶えられるんやろ?」
sha「うん!なんでも叶えられるで!!」
rbr「じゃあ俺をここから出すことも楽勝よな?」
sha「えッあ、ああ〜…」
それを聞いた瞬間 目はそらすし、冷や汗もかきはじめるしで分かりやすく慌て始めた
rbr「無理そうやな」
sha「そっそれだけなんよッそれだけは叶えることが出来ないんやッ……」
今度は目を細めて悔しそうに口を結んだ。
sha「ここからは一生出れない。」
お前はこれから一生呪われ続けるんや
続く