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涼さんは完全に面白がっていて、それがまたニクタラシイ。
「添い寝するの初めてじゃないでしょ。もっと凄い事だってしたんだし」
「だからって、わざわざ休憩にくっつきますかね?」
「休憩だからくっきたいじゃん。コアラ見た? ぴっとり」
「あれは親子だからです!」
「ママ~!」
「ふんぎゃーっ!」
不思議と、男性に「ママ」なんて言われたら、心の底から「キモい」と思って終わりなのに、涼さんが相手だと、なぜかおふざけの範囲に収まるのが不思議だ。
「それはそうとマジで、楽しく旅行するのもいいんだけど、恵ちゃんとのふれあいもほしいな」
「……ふれあい動物園じゃないですよ」
「フワフワの仔猫を愛でたいじゃん」
ぶーっ、と膨れると、涼さんはその顔を見てクックックッ……と笑う。
「オーストラリア旅行、どう?」
改めて旅行の感想を尋ねられ、私は「んー……」と考える。
「……ぶっ通しで色んな体験をして、本当に現実じゃないみたいで。『夢見てるんじゃないかな?』って思うんですが、いつもと変わらない朱里がいるし、なんか凄いなーって」
「何が楽しかった?」
「全部です。スカイレールも楽しかったし、今日のダイビングやパラセーリングも凄かったし、コアラも抱けました。……カジノはヒヤヒヤしたけど、いい社会勉強になりました」
「また今度、別の場所に行こうね。四人でも全然いいし」
「はい。……でも、沢山お金使わせてしまってすみません」
「なんで謝るの? 全然高額じゃない……って言ったら語弊があるけど、まぁ、確かにある程度の額ではあるけど、みんなと一緒に楽しい思いをして、恵ちゃんが喜んでくれるならゼロ円みたいなものだよ。こういうのが、俺の好きな『生きた金の使い方』だって思ってる」
彼はそう言ってくれるけれど、どこまでが見栄なのか分からない。
飛行機のビジネスクラスに幾らかかるか、前に旅行会社のパンフレットを見たから大体は分かっている。
ホテルだってこんなにいい部屋を用意してくれて、アクティビティも沢山。
今までだって何度も贈り物をされては、『諦めて受け取って』って言われていた。
ここで「また行きたいです。連れて行ってください」って言ったら、涼さんは物凄く張り切るだろう。
でも、余計にお金を使わせると思うと、素直に言えない。
黙っていると、涼さんはクスッと笑って私の髪を撫でた。
「恵ちゃんの考えている事、当ててあげようか? 『お金使わせて悪いな。素直に喜んでいいのかな』でしょ」
図星を突かれて目を見開くと、彼は私の髪をサラサラと手で梳きつつ言った。
「俺はまだ恵ちゃんと付き合って期間が短いから、一緒に色んな事を経験して、君の『好き』を知っていきたいんだ。残念ながら、朱里ちゃんほど君の事を知らないからね。……でも、朱里ちゃんにはできない事……、色んな所に連れて行って多くの経験をさせてあげる事はできる。国内でも海外でも、金で解決できる事はほぼ全部」
何とも言えずに頷くと、涼さんはニコッと笑う。
「じゃあ、聞き方を変えようか。ジュエリーを買うのと、今回みたいな旅行、どっちが良かった?」
「勿論、旅行です!」
即答すると、彼はクスクス笑う。
「うん、予想はついてたけど、分かって来た。……恵ちゃんからすれば、俺に『○○してほしいです』って言いづらいよね。俺は君の感覚から見れば、いつもやりすぎるから。今回も凄く楽しんでくれてるように思えて、でも確証がなくて不安だったから、答えが分かって良かった。……ところで、ジュエリーは迷惑だった?」
「う……。迷惑っていうか、何十万、何百万もする物を身につけて外出する感覚がないので、落としたら終わりだし、パーティーとかで仮につけても一日で終わるし。……誰かに見せびらかす前提のアクセサリーは、正直あまり魅力を感じません。普段使いできないワンピースやハイヒールも、使うシーンが限られているので、着回せる数があればそれでいいです」
涼さんはしばらく何かを考え、うんうんと頷くと、ニパッと笑った。
「よし、今後の恵ちゃんの喜ばせ方の指針が分かって来た。俺自身、服飾品はある程度の物があれば、片っ端から買う必要はないと思っていたから、それを恵ちゃんにも適用していくよ。……ついつい、お人形さんみたいに色んな服を着てもらいたくなるんだけど……」
「あはは……」
脳内に〝ケイちゃん人形〟という単語が浮かび、私は乾いた笑いを漏らす。
「涼さんは何をすれば喜んでくれますか?」
尋ねると、彼は少し驚いたように目を見開いたあと、笑みを深める。
「……分かってるくせに」
……あ。ヤバイ。