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「なら、飲んでみるか? まぁ、弱くはないけどな…」
差し出されたグラスを受け取ると、指の先が重なって触れ合った。
「あっ…」
指が触れただけなのに、胸がとくんと跳ね上がる。
動揺を抑えるために、手渡されたバーボンロックを飲もうとした。──と、急に銀河にその手を止められた。
「やっぱ、やめとけって。それ、けっこう強いからな。おまえは、飲まない方がいいって」
私の手からグラスがスイと抜き取られる。
「だけど、飲みたかったのに…。銀河がどんなのを飲んでるのか、知りたかったから…」
銀河が再びグラスに口をつけて、(あなたが飲んでいるそのお酒が、私も飲んでみたかったのにな…)と、心の奥でぼんやりと思いながら、バーボンを飲む彼の仕草を目で追った。
「だったら、こうすればいいだろ…」
銀河が、ロックグラスの中身におもむろに指をつけて、
「ほら…舐めてみろよ?」
と、バーボンの薫る指先を私の口元に差し出した──。
どうしたらいいんだろうと、身じろぎもできずに、目の前の彼の指をじっと見つめていると、
「ほら…」
と、銀河が、指の先で私の唇をすーっと横に掃いてなぞった。
たったそれだけのことなのに、一瞬で体温が上がる。唇が一気に熱を持つ。
舌の先をちょっとだけ出して唇を舐めてみると、彼の飲んでいたバーボンの味が口の中にじわりと広がった。
「……どうだった? ロックだとだいぶ強いが、大丈夫だったか? 」
ほんのわずかな量なのに、ひどく心配そうにも尋ねられて、彼の優しい心遣いにクスッと笑みがこぼれた。
「うん、好きかも…」と、答える──仄かな渋みと甘さが合わさったバーボンの舌触りは、まるで銀河そのもののようにも感じられるみたいだった。