テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
渡辺「・・・俺さ、目黒って、めちゃくちゃバカではないと思ってたんだけど」
阿部「まぁ、悪くはないけど・・・ねぇ」
歌番組の生放送後、渡辺と阿部は二人で晩御飯に行った
話のネタはやっぱり、9人揃っての仕事のことと、あの二人
絵に描いたような遠距離恋愛中なので、久々に会うとなれば、まぁ何か起こるだろうと思ってはいたけれど
フタを開ければ、楽屋も本番も想定以上のことをやってくれるわけで
夜のゴールデンタイム、全国のお茶の間で見ていた方々は大丈夫だったんだろうか・・・?と、阿部は心配でならない
検索サイトのトレンドがどうなってるのかは、もう目に見えている
当面、SNSはお祭り騒ぎだろう(一部で)
主演映画の主題歌だし、3ヶ月ぶりの帰国でいろんなメディアに出てるなか、今回のグループの歌番組に出演することは本番まで、ほぼトップシークレットだったわけで
なにもしなくても話題にはなるのに、まさかの追い打ちをかけるとは
あそこまで堂々とやってくれたことは、もうアッパレだと思った
阿部「楽屋の出来事を、まさか本番で返されるなんて思ってなかっただろうしね」
渡辺「楽屋出て行く時の佐久間、めっちゃドヤ顔だったのにな」
阿部「そうそう」
二人で思い出し笑いをしてしまう
そんな簡単に、目黒に勝てるわけがないのに
******************************************
不意打ちキスをした佐久間が楽屋を出て行った後、目黒はしばらく止まったままだったが、しばらくして不敵な笑みを浮かべていた
その場にいた全員が思った
佐久間、詰めが甘い
一緒に過ごせる時間は本番終了まで
目黒は本番終わりで別の仕事が入っているから、現場でお別れになる
そのまま出国まで会う予定がないから、この数時間に何かあるだろうな・・・とは思ってた
パフォーマンス後、本番中は仕事モードスイッチが入ってたせいか、佐久間は相変わらずテンション高く番組終了まで、きちんと仕事をこなした
そして楽屋に戻ってドアを閉めた瞬間、佐久間は真っ赤な顔で目黒に詰め寄っていた
佐久間「おおおおお、お前は!!!!!!」
目黒「お返しだよ」
佐久間「本番中にやることじゃねーだろーーーー!!!!」
目黒「でも佐久間くんだって、最後に口とんがらせてたじゃん」
佐久間「あんなの、笑いに誤魔化すしかねーだろ!!!!」
目黒「瞬時にそれができるのって、すごいね。さすがプロ」
駄々っ子のように迫る勢いの佐久間を、目黒は真面目な顔して感心していた
深澤「さーくま、外に聞こえるよ」
岩本「目黒、静かにさせとけよー」
佐久間の世話はもう任せた、といった具合に声がかかる
目黒「あ、もうすぐに着替えて、出なくちゃ」
佐久間「うっ・・・うぅぅ〜・・・」
“ 次がある ”
だからこんなくだらないやり取りで、彼を引き止めてるヒマなんてないっていうのは、重々承知している
佐久間はまだまだ言いたいことはあったが、ぐっと我慢して、踵を返した
2,954
1,906
2,668
佐久間「・・・・・・またな」
目黒「・・・うん、またね」
佐久間は俯いたまま、静かに楽屋を出た
阿部「・・・これでお別れでいいの?」
目黒「まぁ・・・ちょっとやり過ぎたかも」
阿部「本当に怒ってるわけじゃないよ、佐久間は」
目黒「・・・わかってます」
少ししゅんとした雰囲気で、目黒は苦笑いをする
阿部「佐久間はこっちでフォローするから、早く着替えて行きな。頑張ってね」
目黒「ありがとう、あべちゃん」
そう言って、目黒が衣装を脱ぎ始めたと同時に、阿部は佐久間を追いかけるために楽屋を出た
目黒の横にラウールが来て、話し始めた
ラウ「・・・・・・派手にやってくれちゃって」
目黒「ごめんね、隣で」
着替えの手を止めずに、目黒が答える
ラウ「佐久間くんさ、仕事に痴情を持ち込むのって、好きじゃないと思うんだけど」
目黒「・・・俺はいつオープンにしてもいいけど」
ラウ「そこはちゃんと話し合いなよ、独断しちゃダメだろ」
目黒「・・・うん、わかってる」
目黒も佐久間以上に暴走しがちなところがある
そこを見抜いてるラウールの指摘には、目黒も反論できない
ラウ「佐久間くんがめめのことを「もうイヤ!」ってなったら、俺が支えるから安心してね」
目黒「おい、ちょっと待て」
ラウ「じゃ、まったね〜」
着替えで身動きが取れないことをいいことに、ラウールは阿部を追いかけるように外へ出た
残されたメンバーは、少々不穏な雰囲気が渦巻き始めた目黒を横目に、それぞれの身支度を整え出した
******************************************
阿部「・・・佐久間くーーーん、佐久間大介さーーーーーん」
閉じられた男子トイレの個室を阿部は小さく叩きながら、声をかける
個室の中からは、小さな啜り泣きが聞こえる
阿部「めめ、もう行っちゃうよ、いいの?」
佐久間「・・・ちゃんと、言ったから」
阿部「めめもちょっと反省してたよ、許してあげなよ」
佐久間「・・・怒ってない」
阿部「じゃあ、出てきなよ〜・・・」
この人、俺より1学年上のはずなんだけど、なんでこんなに子供なんだろう・・・と、阿部は思った
頑固な部分は良い部分ではあるけれど、悪い部分でもあるよなぁ・・・と、ため息をつく
このまま、目黒が出て行く頃まで籠城する気だ
トイレの出入口から、ラウールが入ってきた
ラウ「あ、いた」
阿部「ラウ、まだ、めめいる?」
ラウ「もう出る直前かも」
阿部「ほら、佐久間・・・後悔するって」
天の岩戸はまだ開かない
佐久間「・・・もう最初の出発の時に、ちゃんと見送ったもん」
阿部「まぁ、そうだけど・・・」
打つ手が思いつかなくて、阿部が考えていると、ラウールが手を伸ばして個室ドアの上の部分に掴まった
阿部「えっ!? ら、ラウ!?」
ラウ「上から行けそう」
阿部「いやいやいや、入らないって、あの隙間じゃ体は!!」
ラウ「大丈夫じゃない? 俺の体、薄いと思う」
阿部「妖怪じゃないんだから!」
個室のドアと壁をガタガタさせながら、ドアの上に腕を乗せる
ラウールの行動に、さすがに佐久間も仰天している
佐久間「ちょ!!! お、おい!! 危ないって!!!」
ラウ「あ、ちゃんと佐久間くんだ」
上からラウールの顔がひょっこりした
佐久間「降りろって!! トイレ壊れるぞ!!」
ラウ「佐久間くんが出てくるなら、降りる」
佐久間「カンケーねぇじゃん!!」
ラウ「あるよ、だって俺、佐久間くんが好きだもん」
佐久間「ほあ!?」
阿部「うえっ!?」
壁を隔てて、2人が同時に叫んだ
阿部は、なんとなくわかってはいたけど、今ここで言うか!?という叫び
佐久間は、全く気づいてなくてただただ驚いていた
ラウ「佐久間くん、厳しいし、優しいし、可愛いから、俺、大好きなんだよ」
佐久間「ぅえっ・・・、ちょ、ちょ、ちょ・・・」
トイレのドアの上からの突然の告白
どのマンガでも、こんなシチュエーションは見たことがない
その状況と内容に、佐久間の目は泳ぎっぱなしだった
ラウ「でも佐久間くんって、たまに優しすぎるんだよね。そこはあんまり好きじゃないの」
佐久間「へ?????」
ラウ「俺、佐久間くんがちゃんと言いたいこと言える人がいたらいいなって、思ったの」
佐久間「・・・・・・・・・」
ラウ「めめにちゃんと言っとかないと、また暴走されるよ」
佐久間「・・・わかったよ、だから降りろ」
ラウ「は〜い」
ドアの上からラウールの顔が引っ込んで、またガタガタと音がした
足が床に着地した音がして、
ラウ「ちゃんと、降りたよ〜」
と、明るい声が響く
カチャっと鍵が開く音が鳴った
ラウ「・・・泣いてんじゃん」
佐久間「・・・違うってば」
ラウ「ほら、行こうよ、まだ地下駐じゃない?」
ラウールは佐久間の返事を待たずに、手を取って走り出す
阿部もその後ろを追いかけるように、トイレを後にした
******************************************
佐久間「さすがに、あいつのスケジュールじゃ、もう出発してんじゃねぇかな・・・?」
地下駐車場に着いた3人は手分けして探すが、マネージャーの車なのか、タクシーなのかすらわからないので、見当もついていない
他の出演者や、スタッフなどで人はそれなりにいるものの、目黒の姿は無さそうな雰囲気がした
阿部「メッセージで聞いてみたら? もう局、出た?って」
佐久間「・・・・・・スマホ、楽屋なんだが」
阿部「・・・・・・そうだね」
二人してしょげている間に、ラウールが初老の警備員に話しかけていた
ラウ「すみません、目黒の迎車ってまだ出発してません? 彼に忘れ物がありまして」
警備「うう〜ん、まだかな・・・、今、ちょっと混み合ってるからねぇ」
ラウ「そうですか、ありがとうございます」
穏やかな雰囲気で丁寧に挨拶をする彼は、本当にいい子に育ったなぁ・・・と、佐久間と阿部はしみじみ思った
ラウ「佐久間くん、次の予定あるの?」
佐久間「うん、俺も大急ぎじゃないけど、まだあるな」
阿部「じゃあ、次の場所まで追いかけるのは無理か・・・」
3人で顔を突き合わせて悩んでいると、EVが到着する音が鳴った
扉が開くと、マネージャーと共に目黒の姿が現れた
佐久間「あっ・・・・・・」
目黒「・・・・・・あ」
目を合わせたものの、気まずくなって2人して俯く
気を利かせてくれたのか、次に間に合わないと思ったのか、マネージャーは先に車を準備しに行った
ラウ「2人とも、時間ないよ」
阿部「俺らちょっと離れるから、すぐに済ませな」
俯いたままの2人に追い打ちをかけるように、ラウールと阿部が声をかけてその場から離れた
******************************************
最初に口火を切ったのは、目黒だった
目黒「・・・ごめん」
佐久間「・・・・・・」
目黒「大介の気持ち、考えてなかった」
佐久間「・・・オレも、こういうのはイヤだって、ちゃんと言えてなかったし」
2人は目を合わせることができず、そのまま会話が途切れる
ラウ「あと1分もないよーーーー」
阿部「ら、ラウ!」
2人の様子を見て、遠くから声がかかる
その言葉に煽られて、佐久間が顔を上げた
佐久間「・・・蓮から好きだって言われてから、オレずっと蓮のペースに合わせようとしてたのかも」
目黒「・・・ずっと、しんどかった?」
佐久間は首を横に振った
佐久間「ううん、そうじゃない。蓮と同じ景色見たりとか、いろんなことを一緒できて、すっげぇ楽しいの・・・・・・だけどさ、」
目黒「・・・・・・」
佐久間「その、2人だけの秘密をまだ持っておきたいな・・・って」
目黒「え・・・」
佐久間「いつかバレるかもしれないし、公になることもあるかもしれないけど・・・、でもそれまでは2人だけの時に、あーいうのをしたいっていうか・・・その・・・」
目黒「・・・・・・うん」
佐久間「なんか、まだ、その、人前だと恥ずいというか・・・」
だんだんと赤くなっていく佐久間の顔を見て、目黒の顔が緩む
目黒「うん、わかった。こんな大介の顔、他の人に見せられないし」
佐久間「お、おう、・・・まぁ、そういうことで・・・」
目黒「・・・一緒に行く?カナダ」
佐久間「いや、無理。レギュラーあるのに」
キッパリお断りされて、目黒は吹き出した
目黒「仕事好きだもんね」
佐久間「そーだよ、オーディションも勝ち取ってんのに」
目黒「そんなところも、ホントに好きだよ」
さらりと言われる告白に、また佐久間の顔が赤くなる
ラウ「迎えの車、くるよーーーーーー」
阿部「ラウ、あとちょっとだって」
また遠くからお呼びがかかる
今度こそ、また長い別れの始まりが来た
目黒「・・・じゃあ、行ってくるよ」
佐久間「おう、・・・待ってっからな」
ちょうど目黒の真後ろに、遠くにいるラウールと阿部の姿が重なるように立ち位置をずらして、見られないようにキスをした
さっそく作った、2人だけの秘密
ニッと笑い合って、グータッチを交わす
佐久間「行ってらっしゃい」
佐久間はまた、笑顔で見送ることができた
車が去った後、少しだけ涙が出てきたが、悲しい気持ちではなかった
ラウールと阿部は、そっと佐久間の隣に寄り添った
******************************************
渡辺「・・・目黒、ホントに佐久間のことになると暴走しがちだよな」
阿部「いや〜、もう、こっちも照れちゃうよ」
阿部は手で顔を仰ぎながら、ビールを飲む
渡辺「佐久間追いかけた後の楽屋、ものすごい雰囲気で居心地悪かったわ〜・・・」
阿部「だろうねぇ」
渡辺「ラウの煽りもあったから、余計に目黒が落ち込んでんのか、妬いてんのかわかんねぇし」
阿部「でも今回、ラウはスーパーファインプレーだったよ」
渡辺「あいつ、人生何回目なんだろうな・・・」
一番年下なのに、妙な説得力と観察眼
でも、ラウールにはまだ子供の気持ちでいてほしいとも思ってしまう
対して、年上チームなのに子供の気持ちをもつ佐久間には、少しだけ落ち着きを持ってほしいとも思った
阿部「ホントに・・・、妙な人が集まったグループだよね」
渡辺「あ、それ、俺も妙な人??」
阿部「え?・・・普通の人って、いるかな?」
渡辺「・・・いねぇな」
自分の居場所は、個性的で最強のチームなんだと2人は再認識した
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!