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🍶 みりん亭 ―仮想町の食事処―
ようこそ、みりん亭へ。
ここは、古びたVRゲーム内にぽつんと残された小さな食事処。
時代遅れのデバイスと、退屈なレトログラフィック。
でも、なぜか――誰かの心がここに戻ってくる。
かつて流行したRPGの町マップ「フェイドタウン」。
その片隅にある食事処には、今日も誰かがふらりと立ち寄ります。
味はない。でも、思い出の味が、心にしみる。
🍚 みりん亭の店員たち
🐦 やまひろ(アマチュアプログラマー/管理者・鳥の姿)
しゃべらない。飛ばない。バグも治せない。
でも、プログラムが好きで好きで、仕方ない。
VR空間の花が話すのも、食器がうたうのも、全部やまひろが集めた「シェル(他人のプログラム)」のおかげ。
本職にはなれなかったけど、みりん亭では誰より“世界”を動かしてる。
🍽 くもいさん(みりん亭 店長/和食屋風アバター)
和服エプロン、すこし物静かな口調。
現実では壊滅的な味音痴だけど、VRでは“絶品料理”を次々と出す。
「味」はないけど、セリフと空気が“思い出”を呼び起こす不思議な一皿たち。
🎮 VRの世界
昔は「最先端」だったRPGマップ。
今はプレイヤーもまばらな、忘れられた仮想空間。
それでも、誰かがここに来て、食べて、少しだけ泣いて、ログアウトしていく。
みりん亭は、“食べられないのに沁みる”料理を出し続けます。
了解しました。以下に「みりん亭」の舞台となるVR空間の設定を、技術的にも社会的にもリアルに描写してまとめました。
■ VR空間の設定
タイトル内名称:「旧RPGワールド:フェイドタウン」
開発元:かつて存在した中規模ゲームスタジオ「CosMicTown社」
現在:公式サポート終了後、残されたユーザーが有志で運営
◆ VRデバイス環境(現実側)
主流デバイス:サングラス型“簡易透過VR”
本体は耳掛け式。投影レンズによる“現実越しの映像重ね”方式。
指先の小型チップや腕輪によってジェスチャー操作も可能だが、精度は悪い。
「映像に没入する」というよりは、「現実に薄くレイヤーが載るだけ」という仕様。
旧型VR端末との互換性
昔ながらの「密閉式VRゴーグル(没入型)」もサポートしているが利用者は少数。
ゴーグル派は“懐古プレイヤー”と呼ばれる。
感覚再現は一部制限
触覚・味覚の完全再現技術は法的規制(依存・誤認事故防止)で廃止。
音声、簡単な視覚、呼吸同期、背景音、微かな体感圧のみが許可範囲。
その代わり、**「記憶を補う演出」や「感情に合わせた環境変化」**が重視されるようになった。
◆ フィールド(フェイドタウン)
マップ仕様
正式名称:RPG-style Layered Town Ver.3.11
設定は「古びた旅の町」。石畳、木造家屋、酒場、宿、神殿風の建物など。
時間の流れは現実の1/2で進行。夕暮れ時が基本。
マップ内はNPCが巡回しており、一部に**やまひろの組み込んだ“感情シェル”**が存在する。
没入レベル
臨場感はあるが、画像解像度はあえて低め(デフォルメ感重視)。
目にやさしい温系グラデーションで構成され、ユーザーに“ストレスを感じさせない設計”。
頭上には“VR機特有のHUD(仮想メニュー)”が浮かんでいるが、やまひろが独自スキンでレトロ風に変えている。
◆ ネットワークとログイン
みりん亭の空間は“ローカルエリアに近い非公式実装”
サーバーはP2P型。正式な企業運営はされておらず、やまひろが有志でメンテナンスを行っている。
プレイヤーが滞在できる時間に制限はないが、一定期間ログインがないとアバターの痕跡は削除される。
来客の履歴は「記憶ログ」として一時保存
会話ログや視線の動きなど、行動はサーバー側で匿名記録。
くもいさんの対応セリフは、過去のログデータを参照して感情的に調整される。
◆ 社会的な背景
VR業界全体が「一周まわって退屈になった」時代
視覚刺激に飽き、**“無言の体験”“あえて何もない空間”**が流行。
SNSやゲームは統合されたが、「ただそこにいるだけのVR」が密かな人気。
「みりん亭」はその象徴的存在
物語もストーリーも目的もない。
ただ、空間に入って、くもいさんと会話して、仮想の料理を眺めて、ログアウトするだけ。
けれどそれが「今の人間には一番沁みる」と言われている。
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