北朝鮮×韓国♀のNL小説。
あの二人がいよいよ登場します。
北韓の出番は回想のみ。
いつからだろう。
我が上手く笑えなくなったのは。
回想
「「老師〜〜!!」」
満開の花畑の向こうから、2人の少女が手を振ってくる。
少女達の名はそれぞれ「日ノ本」「朝鮮」。
我を実の兄の様に慕い、こうして姿を見つけると嬉しそうに手を振ってくれる。
我も、そんな風にされるとつい甘やかしてしまうのだった。
「おー、元気だったアルか?お前ら大きくなったアルなぁ〜!」
「うん!
私も老師や朝鮮と、対等な存在になりたいって思ってるからね!」
「私も!老師に褒めて貰えるくらいの大国になりたいもの!」
懸命に追いつこうとして走ってくる姿に愛くるしさを覚え、歌や遊びを教えたこともあった。
「ハイハイチャイナ、ちょちょ夢心地~」
「ちょっと待て何か魔改造してねーアルか?」
「日ノ本は未来に生きてるのね!」
「何か急に頭の中に浮かんできてつい」
愛らしい存在は、この2人だけでは無かった。
「日ノ本。何してるんですか?」
「あ!」
兄様〜!!と日ノ本が駆け寄って行った先にいたのは、平安卿と呼ばれる男だった。
この時代では、日ノ本の化身を努めている。
「大陸の皆様方。日ノ本と遊んでくれはったんどす?
ほんまおおきに」
「久しいアルな、平安」
「おやまぁ、老師殿ったらおべっかが達者ですねぇ」
「本当の事アルヨ」
完全に平和な時代とも言えぬが、この頃は喧嘩してもすぐ仲直りしていた。
寧ろ小競り合いもじゃれあいの一部。そんな風に考えていた。
──────彼奴らが、やって来るまでは。
「がは、っ………..!?」
身体の節々に激痛が走る。それと同時に、冷たい地面の温度が頬を伝って広がってゆく。
霞んだ視界に映るは、忌々しき “あの野郎” の爪先。
『おや、眠れる獅子などと謳われた清もこんなものでしたか』
呆気ない、と失望したような蔑む様な視線を送られ、奴は我の頭を掴んでペンを差し出してきた。
『ほら、早くこの契約書にサインしなさい。
偉大なる大英帝国様からの命令ですよ?
光栄に思え、老公が。』
翡翠の瞳は卑しく歪み、大きく高笑いしながら
我の家から散々たかった銀の数々を見せつけるように空中へとばら撒く。
野蛮かつ非道。だがそんな奴に我が国は負けたのだ。
西洋の影響が及んだのは、我の国だけではなかった。
『天皇陛下万歳!!天皇陛下万歳!!!!』
燃えるような旭日旗と、緑色の軍服。
災厄は絶えずやってきた。
「…………….なんで、」
『やぁやぁ清国よ。
半島を我が日ノ本の手中に収める為、遥々海を越えて来てやったぞ!
…………….さぁ、堕ちた獅子とやらの悪足掻きを見てやろうではないか。』
──────大日本帝国。
後に誕生するにゃぽんや日本国の父であり、
我にとっては史上最悪の日ノ本化身であった。
いつも優美な笑顔で和歌を詠んでいた平安。
戦闘狂だが、武士道と義理は弁えていた鎌倉。
そして、日陰に籠りつつも我との交流を楽しそうに行なっていた江戸。
彼は、そんな化身達の誰よりも残忍で、誰よりも冷酷な化け物だった。
………..でも、そんな状況になっても我はどこかで信じていた。
日ノ本は列強のせいでおかしくなってるんだ。
朝鮮を併合したって、どうせすぐ解放する。
なぁ、そうなんだろう?
そしてその問いは、意外に早く答えが見つかった。
2度の大戦を終え、世界がめぐるましく変貌を遂げようとしていた頃。
国際連合の会議で、
我は北朝鮮や韓国、日本、台湾と向き合った。
「──────だから!!
何で北朝鮮以外はアメリカの下につくアル!?
老師と共に共産主義を発展させれば、素晴らしい世界が待っているアルヨ!?」
日本も韓国も台湾も、押し黙ったまま答えない。
「我と一緒の方がお前らも得アル。なぁ、そうだよな北朝鮮!?」
「…………韓国、お前と俺はずっと一緒だ。こちら側に来てくれないか」
北朝鮮が表情の読めない顔つきで韓国を誘う。
しかし韓国は首を振って拒否する。
「っ日ノ本!!お前は我と一緒に──────」
「嫌です。」
無表情でも憎悪でも無く、口元に少しの笑みを浮かべて優しく断られる。
台湾はそっぽを向いて目も合わせようとしない。
「日ノ本、韓国、台湾….お前らは我のきょうだ、」
「申し訳ないのですが、私は貴方と兄弟だった日ノ本ではありません。
これからは “日本国” として見て頂けると幸いです。」
では、とアメリカ達の方へと立ち去っていく。
……….ただ、またあの頃のように談笑したいだけだったのに。
平和主義を謳っておきながら、東亜の関係を引き裂くというのか。
そういう事なら……
「韓国、韓国」
あの日、
北朝鮮と共に眠っていた韓国の横に立つと、彼女は化け物を見るかのような目で此方を凝視してきた。
…酷いアルなぁ。”兄” が折角来てやったというのに、わざわざ暴れなくても良いじゃねぇか。
北朝鮮には睡眠薬を盛っておいたし、当分起きるはずも無いというのに何故そこまで必死に起こそうとするのだろう?
…………あぁそうだ。
暴れるなら押さえ込んでやれば良いヨロシ。
震える首筋に素早く手刀を当ててやると、韓国はあっさり倒れた。
これで、第二段階は完了した。
「さてと。後は前々から撒き散らしてた韓国の悪評がちゃーんと美国の上司を抑え込めるか…
あとはコイツアルな」
何も知らない北朝鮮の寝顔を数秒見つめた後、中国はフッと視線を逸らして韓国を抱き抱えた。
「ま、コイツにやれることと言えばたかが知れてるし良いヨロシ。
ここまで来たら我の理想圏は完成されたも同然アル」
日本達から拒絶されたあの時からずっと願っていた、元宿敵の理想郷。
この時の為に、必死こいて発展させた国内経済。
我は今この瞬間、誰にも悟られずに王手を打ったのだ。
「………….やっとまた、一緒に過ごせるアルネ」
そう、思っていたのに。
「何で……なんで………..」
狙撃の痛みに、膝を折って動けない我。
それを遠巻きに傍観するパーティーの参加者達。
そして、涙をためて此方を睨むかつての兄弟達。
「中国……」
沈黙を破って、台湾が声を掛けてくる。
「もう辞めよう。中国だって怪我してるし、これ以上にゃぽんや韓国を泣かせてどうするんだよ」
「………………」
「……傷の手当するから、その代わりあの二人に近付くのも辞めて。
これ以上やっても無駄だし、終わりに───」
「だめ」
気付いたら我は、台湾の首を掴みあげていた。
周囲の国々から悲鳴が上がり、西欧諸国は止めに入ってくる。
「触るなある、離せヨ」
「お前が!!先にっ、台湾を離せよ!!!!」
「フランスの、言う通りだ!!!いい加減諦め───!!」
欧州共の言葉には耳を貸さず、
我は目の前で立ち尽くしている可哀想な仔猫にゆっくりと視線を送る。
目が会った瞬間、にゃぽんはビクッと肩を跳ねさせたがすぐに此方に向かって来て我の手を掴んだ。
「辞めてっ!!!!台湾を離して!お願い!!」
「ならお前が “こちら側” に来い!!!!」
そのままにゃぽんに手を伸ばす。
後方で控えていたイギリスが彼女を守ろうとするが、もう遅い。
朝鮮は逃したが、コイツらだけはもう逃さない!!
「…………….い、や……。」
にゃぽんがそう短く漏らしたその時だった。
─────バシッ!!
我の手を、何者かが遮った。
それと同時に台湾が我の手から脱出して床へと崩れ落ちる。
「ッ、離せ!!!我に無礼を働く奴は誰であろう、と………..」
遮った手を見て、我は目を見開いた。
白くて細い手首。少し草臥れた紺色のスーツ。
視線を上げてみれば、そこにあるは『日の丸』。
……嗚呼、姿を見せなかったのはこの時の為だったんだな。
「………..はっ、ははははっ….(笑)
ヒーロー気取りでご登場アルか?相変わらず生意気な奴ネ」
「お兄、ちゃん………..!」
日本国化身、満を持してのご降臨。
誰もが予想しなかった人物に、さしものイギリスも固まってしまった。
「随分派手にやりましたね、中国さん。
先程から聞いていれば汚い悪巧みが出るわ出るわ…まぁいつかこうなるとは思ってましたけど」
口調はやれやれ、と言った風だが、目が完全に笑っていない。
日本にしては珍しく、その澄んだ瞳の奥に怒りの炎を燻らせている。
「でも、もう終わりですし。
とりあえず一言文句言わせてもらいますよ。」
そう告げた直後。
我は気が付いたら思いっきり床に叩きつけられ、日本に拘束されていた。
「ッッッ……!?離せ、離せアル…!!」
「黙れ───」
ワントーン低くなった声と共に、とてつもない殺気が背中をビリビリと刺す。
そして日本は全て吐き出すかのように叫んだ。
『私の妹に、気安く触るなっ!!!!!!』
今まで聞いた事も無いような怒号が、日本の口から放たれた。
西欧諸国は硬直。親日組は日帝のキレた姿でも思い返したのか少し怯えを見せる。
「…..私達は中国さんの手駒じゃないんです。
見下すのもいい加減にして下さい。」
冷たく言って中国から離れた後、日本はにゃぽんに向き直った。
「…………にゃぽん」
「お兄ちゃん…」
「えっと、その………..埼玉さんの件、なんですけど…..わたしは──────」
言い終わる前に、にゃぽんが日本に抱きついた。
「へ……?」
「…………~っ、ふぇ、ふえぇ”ぇえぇ….!!(泣)」
お兄ちゃぁあ〜〜ん!!!!(泣)と泣き出すにゃぽんに、日本も堪えていた涙をボロボロ零して抱き返す。
「ごめんッ、ごめ”ん”な”さぁ….~~っ!!(泣)」
「いいんです、何も謝らなくていいんですっ…!! わたしが…もっと、はや”ぐッ、~~~~!!!(泣)」
「ちがうもんっ、ちゅぅごくこわいしっ、いぎりすさんに”も” ッめいわくかけちゃったのぉおお”~~~~…」
うっかり名指しされたイギリスは、珍しく「やべぇ」といった表情で身を強ばらせる。
ドイツやフランスから物凄い視線を感じて素知らぬ顔をすると全員寄ってきて質問攻めをし始めた。
「イギリス???どういう事だよアレ、
お前仔猫ちゃんと何やった??何やらかしたんだ???」
「よく分からんが、お前があの二人を泣かせたのなら1発殴るぞ」
「男なら泣いてるレディー慰めるのは当然なんね!さっさと行ってこいこのエセ紳士が」
何て好き放題言ってくれるのだろう。
ほんとこいつら、と心の中で悪態をつきながらイギリスは日本とにゃぽんを優しく慰める。
「あー、その…..お二人共どうぞ落ち着いて。
まず涙吹きましょ?ね??」
「いぎりしゅさぁん….(泣)」
「しんしですぅ~……」
あまりにも純粋過ぎるうるうる上目遣いに、イギリスはどこか浄化されていくような感覚に襲われた。
アジアは大体そうだが日本家、やっぱりかわいい。
「ま、まぁとりあえず別室で休みましょうか。
フランス達は中国何とかして下さい。私はこの二人を連れて別の─────」
ほのぼのしつつ言いかけたその時だった。
「日本ッッッ!!!!!」
倒れていた中国の目が見開かれ、イギリス達に向かって飛び掛ってきた。
まだ倒れてなかったのか!!
「ッ、この私に同じ手が通用するとでも!?」
腰に忍ばせていたステッキを向かってくる中国の眼前に突きつけ、魔法名を唱える。
『Protego!!(守れ!!)』
その瞬間、透明なバリアが三国を守る。
しかし中国の腕力が思ったより強く、すぐにバリアが壊れそうになる。
バリアを盾に、イギリス達はそのまま後方へと飛び退るが中国がバリアを飛び越えてやって来る。
「な………..」
「にゃぽん、伏せてっ……!!」
一撃を覚悟した島国組。しかしその拳が彼らに当たることは無かった。
そう、何故ならば。
タァンッ─────────。
中国の側頭部から、赤い液体が吹き出す。
にゃぽんを守っていた日本とイギリスの目が見開かれる。しかしこの乱暴な攻撃の仕方、まさか………..!!
「Hey, “オレの友達” に何してるんだい?」
「……あ…………..な……ぜ……………………..?」
霞んでゆく中国の視界に映るは、銃口を向けて佇む世界一の男。
首元のフワフワが特徴的なダウンジャケットに、十字の形をしたドッグタグ。
キラキラの青と赤のオッドアイ。
我の前では決して外さない、ブランド物のサングラス。
「な……何故貴方が此処に…?」
「お前を守るのは俺の役目って言っただろ?
なっ、JAPAN!」
──────HEROは遅れてやってくる。
アメリカ合衆国、此処に参上。
To be continued…
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国達の設定についての補足: 幕府や国が滅びると化身は消えてなくなり、後継者の国達が生まれてくるが、紡いだ歴史の記憶も受け継ぐ仕組みになっている。(例: 日ノ本の記憶を日本が受け継いでいる。実はにゃぽんも記憶あり) 日帝やナチス、イタ王、そして未登場のソ連は旧国だけど消えない激レアなタイプ。何故消えないかというと、彼らは後世に対して多大なる影響を残しているから...らしい。