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変異者 加藤 駿【偽名:畠中 幸人】/現在
そんな事件が未解決ではあるが終わり。それから3日後、北上先生の車に乗って、学校から直接平賀さんの世界に来た。今日は仕事が多く、ここに来るのが4時になってしまった。
「よぉ。一昨日は災難だったな。」
整形をしていない素の状態の北上先生が、背中をバシバシたたきながらそんなことを言ってくる。
「災難というか。あの後、普通にBBQをやれる生徒会が怖くなってきましたよ。」
「まぁ、変異者の中にはもっと図太いやつがいたけど、あいつらもあの年にしては図太とすぎるんだよな。」
「アレの上位互換がいるならば一度見て見たいわ。」
「あぁ、あれはやばいレベルだったな。坂本 旭さん 芹奈 井口」
「そんなにいるんですか?」
「いるいる。はっきり言って、長い間生きてるやつは大抵、人か変異者を1人以上殺してるから。常軌を逸しているやつが多いんだよね。たぶん、はたから見れば私も入っているんだろうけど。」
「まぁ、常軌を逸していなかったら。ためらいなく人に銃口を向けられませんよ。」
「ははっ。違いねぇ。」
「遅いよ。」
城門の200m程手前のところで、彼方が待っていた。おそらく、天守閣からずっと見ていて、走ってここまで来たという事だろう。こういう風に、軽く叱りながらも、心配してくるあたりが椿によく似ている。
「ごめん。ごめん。」
頭をなでながらそう言うと、手をバシリと叩いてくる。反抗期突入だろうか。
彼方はくるりと回れ右をして城門をくぐる。彼女の足を一度切り落としてからはやした。北上先生の能力は、健全な状態に戻す。であるため、彼女は地面を歩けるようになった。しかし、まだ軽くなれないのか、走ることはあまりない。しかし、歩けるという事で、以前よりも外出欲求が強くなった気がする。
「そういえばさ、彼方は〘科学者〙って知ってる?」
「知らない。ラガか旭さんなら知っているんじゃない?」
だろうな。ラガはどうかは不明だが、旭さんは1800年以上生きているというので、知っているだろう。
「なんでその人が気になるの?」
「なんでもないよ。この前、話の中で出てきたんだ。」
「そう」
北上先生が、彼方に見えないところで毎秒八回ほど腹をつついてくる。やめろ。
「ラガはね、今日は用事があるらしくていないんだよね。朝慌てて出て行った。」
「そうなんだ。あの人なら、彼氏彼女いてもおかしくないだろうな。」
「まっ、はっきり言って何をしていようと興味ないけど。」
地味に放任主義なところが萩野さんに似ている。
「そういえばさ、幸人ってなんでそんなに強いの?」
「‥‥」
まさか急に危機に陥るとは。しかし、ここで萩野さんを出すことは難しい。運動部なんだよね。といっても、確実に運動能力が高すぎる。変異者だから。といえば、彼方様を傷つけてしまう可能性がある。そうすればいいんだ?
「幸人はね、ほら、才能の塊みたいなやつだからさ、なんでもできるんだよね。」
ナイスです。北上先生。ですが、私はそこまですごい人間ではない。ただただ、変異者であっただけ。ぉれでただただ、人より強い力が得られただけの人間である。他人と、何ら変わりもない普通の人間だ。
「そんなたいそうな者じゃないよ。」
「謙遜が過ぎると嫌味に聞こえるぞ。」
「謙遜じゃありません。事実です。」
北上先生と彼方が二人そろって、わざとらしく大きなため息をついた。なぜ僕の周りにはわざとらしくため息をする人が多いのだろう。気付かれないように小さくため息をつくか、ため息をつかないか、まず空気を吸わないか、の3択のうちどれかにしてほしい。
「今日は何をしますか?」
「外に出たい。」
「今どうするか話し合っています。」
「誰と?」
困る。ただただ困る。平賀といえば即座に許可を取りに行くだろう。平賀の場合は、彼方に嫌われるのが嫌だから即座にオーケーするだろう。ただ、萩野さんの名前は出せない。北上先生とも言えない。旭さんは‥‥無理。井口さんは‥‥無理。詰み。やばい、やばい、やばい。どーしよー。あっ、いい奴いたわ。
「優也っていう名前の僕の弟と話しててさ。ここの外にいる人って意外と危険な人もいるんだよね。だから、どうしようって。」
「うん、じゃぁ電話して。」
「えっと‥‥」
頬を冷や汗が伝う。この子詰将棋みたいな方法で攻めてくる。
「お願い♡」
後ろにかわいいハートマークをつけているため、胸キュンしそうなのを〘爆弾魔〙で感情を消して何とかこらえる。
「お願い」
やばい、なんかすごい圧力を出しながら言ってくる。ヒェッ。普通に怖い。下手なピエリストよりも怖いの何なん?
「うーん」
頬を膨らませながら下を向いて考えている。その最中にチラッ チラッとなんどもこちらを見てくる。だるい系の人間が良く使う方法じゃん。
「すいませーん。この人が今襲ってきました。」
彼方は、城門の前で大声でそういった。なんかいろいろな方法で攻めてくる。これ以上待ってもいいことは無い。いや、平賀さんの世界でやばいやつ認定される可能性がある。悪いことしかない。そもそも優也に電話をかけて、優也が出ない、もしくは、優也が否定をすれば問題ないんだ。そもそも、北上先生まで僕をやばいやつみたいな目で見てくるのをやめてください。
「分かりましたよ。電話しますよ。でも、さすがにここでスマホを使うと目立つので、中に入ったらでいいですか?」
「うん、やっぱり話が分かるね。」
話が分かっているわけじゃない。名誉棄損もいいところだ。
城門をくぐり中に入ってから、スマホを取り出し優也に電話をかける。
『はい、もしもし、畠中です。』
出ちゃったよ。無視してよ。ねぇ、ねぇ。
「優也。誰からかかってきたかをきちんと確認してから出やがれ。」
『幸人か。で?どうした?今県大会の打ち上げの最中なんだけど。早めに終わらせて』
「あぁ、軽く足を怪我している女の子を外に出そうか出すまいか話になっていてさ。お前はどうするべきだと思う?」
『子供は遊んでなんぼだよ。』
「チッ。ありがと。」
『ちょっ。おい‥‥』
即座に電話を切った。
「はい、じゃぁ、外に遊びに行くぞ。」
「そんな眉間にしわを寄せないで上げなよ。彼方ちゃんがほぼ泣き顔だよ。」
知るかんなもん。といえば、平賀さん、萩野さん、場合によっては旭さん、井口さんに殺されるが。心の中でくらい愚痴らせてくれ。できることならば優也を一方的にボコしたい。無理だけど。一方的にボコられることは可能だがな。
メールを呼び出し、萩野さんに『彼方が、外に出たいというので、安全に気を付けて、命に代えてでも彼方をお守りいたします。』とだけ送っておいた。それから彼方を着ものから洋服に着替えさせた。
「じゃあ、行きますか。」
彼方とともに桜の木などを通過して、家の外に出た。始終、彼方は物珍しそうにいろいろなものを見ていた。やはり、デジタルの無いところに住んでいたから当たり前といえば当たり前であるが。
北上先生の車に彼方とともに乗り込んだ。どこに行くかなどは決めていない。その時スマホから音楽が流れる。萩野さんからだった。
『処刑するぞ。』
『ギロチン台買っておくね。』
『今度拷問室に行かない?』
『彼方に傷1つでも負わせたら、臓器全部売るよ。』
『彼方に変なことするなよ。』
驚くほどの速度でメッセージが送られてくる。狂人。やはり、狂人だ。
『了解いたしました。』
そう送ると、即座に既読が付いた。
『彼方を楽しませろよ。』
『了解』
そう返して、スマホを閉じた。
「で?どこに行くんですか?」
「とりあえず、百貨店。」
何しに?とは聞かない。彼方に聞こえて楽しみを半減したくないからである。
百貨店に着くと、北上先生の足は迷うことなく、着物屋に向かった。
「嵐山にでも行くつもりですか?」
「畠中君の行く場所のセンスがないね。デートの時に困るんじゃない?あっ、彼女できないか」
幼稚なあおりをしてくる顧問の靴をギュッと踏む。もちろん小指である。もし自分がハイヒールを履いていたら迷うこと無く、かかとで踏んでいただろう。
「今日はね。お祭りがあるんだよ。あぁ、ごめんね。誰ともいけないボッチだったから、そんなことを知らないのか。かわいそうに。」
言わなくてもいいことを言ったので、迷わずすねを蹴る。ちなみに今はいている靴はかかと、つま先などに金属の板が入っているため、普通蹴られたら骨折するだろう。なぜ北上先生を蹴れるか?〘医者〙だから。変異者だから。以上。
着物は僕と北上先生はレンタルにした。彼方は、記念に取っておいてあげたいという理由で買っておいた。彼女なら通常遣いもできるというのも大きな理由だが。
着替え終わって待っていると、誰かから電話がかかってきた。相手は萩野さんだった。
「もしもし」
『君の周りに〈オウム〉〈百舌鳥〉を配置したから。何があっても守れよ。』
「過保護ですね。了‥‥」
一方的に切られた。
「萩野さんから?」
「そうそう。過保護すぎるんですよあの人。」
「まぁ、いいんじゃないの?安全なことに越したことはないし。じゃっ。トイレ行ってくる」
北上先生は早足で、トイレの方へ走って行った。
「幸人。どうかな?似合う?」
いつの間にか、着物を着た彼方が僕の前にいた。逃げたな、あのクソ野郎が。
そんな僕の心中とは関係なく、彼方は僕の目の前でくるりと一周した。
「うん。似合うよ。」
こういう場合はお世辞でもそういうものだが、これに関しては心からの言葉である。
「よっ。ロリコン」
優也が気配を消して忍び寄ってきた。
「お前打ち上げは?」
「抜けてきた。というか、抜けさせられた。唐揚げ4個と手羽先3羽分しか食べてないからきっちりその分の金だけ置いてきたわ。」
「だるっ。」
「で?なんで着物なの?」
「祭りに行くから。おまえにも金渡すから、レンタルしてこい。」
「はいはい。」
普通に金を要求するポーズをとってくる。普通に給料同じくらい貰ってんだからそっちから出せよ。別にいいけどさ。
優也は金を受け取るとルンルンとスキップをしながら着物屋に入っていった。経費で落とそ。
それから優也の着替えている最中に北上先生が帰ってきた。
「着替え終わったよ。」
優也が着物屋から出てきてから、北上先生の車に乗り、四ノ宮祭りに向かった。
祭りという事真有結構渋滞していたため、結構遠めのコインパーキングに止め、そこから歩いて向かった。
『旧約聖書』の「出エジプト記」のモーセかと思うほどに、勝手に道が開いていく。祭りの会場に着くまでが快適すぎた。
いや、語弊があった。ただ、歩く分には快適だった。ナンパされなければ。今日のナンパ65回目これは全員を合わせた数だが、だるい。
💣 💣 💣
「久しぶりじゃん。芹奈にラガ。こんな古ぼけた時計屋に何の用?」
「皮肉が強いね。」
「僕も忙しいんだよ。」
「こんなに閑古鳥が鳴いているというのに?」
「これでも、客は来るんですよ。」
「ほへー。そんなモノ好きがいるとは。」
「時計の長針に刺されて死んじまえ。」
「死ねっていうな。殺すぞ。」
「で、どうでもいいんですよそんなことは。用件は?10文字以内で。」
「能力使って。(9文字)」
「報酬は?」
「あの子の成績表と画像。」
「分かった。」
「で、何してほしいの?」
「この馬鹿がcakeの手記のコピーを無くした。だから、記憶を漁ってどこで無くしたかを調べて。」
「‥‥マジかよ。」
「そういう事。できるだけ早く回収しないと。」
「〈時計〉」
彼はそう言いながら平賀の頭に触れた。すると、からりと音がして、下にHIRAGA。と書かれたこぶし大ほどの時計が出てきた。時計には細かい文様が書かれていた。
「で、なくしたのは今日だよね」
「あぁ、今日だ」
彼は、時計の短針を2周回し、上のボタンをかちりと押した。
すると秒針と長針は驚くほどの速さで回り、1秒ほどで元の位置に戻った。
「八坂神社から一番近いカフェ。右から3番目のテーブル。」
「なんでそんなところに。」
「抹茶すいぃつとやらを食べたくなったからなんだけど、他にも行ったから。どこにあるかがわからなくて。」
彼と芹那は大きなため息をついて頭を抱えた。
「じゃぁ、ありがと。明日郵送で送っとくわ。」
彼はポイッと先ほど作り出した時計を芹奈に投げて渡した。
「はいはい、出てけ出てけ。仕事の邪魔だ」
カランカランと音を立ててドアが閉まっていく。
「まったく、早く見つかってほしいもんです。」
そう言って、彼は大きな伸びをしてから、深い眠りについた。
コメント
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あおいです🌷 第23話、読みました! 幸人くんの焦る気持ちがひしひし伝わってきて、「お願い♡」攻撃に耐えるシーンは思わず笑っちゃいました😂 萩野さんからのメッセージの嵐も怖すぎますね…でもそれだけ彼方が大切に守られてるんだなって伝わってきました。 優也くんが急に登場して「ロリコン」って言っちゃうところもツボでした。最後の時計屋さんのシーンはまだ謎が多くて、続きが気になります!