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「我が次の標的も制圧したアル。次はどこだヨロシ。」
中国は血の滲んだ剣を肩に乗せ、通信機を睨みつけた。
だが、政府からの命令はない。彼女はそれを知っている。
『我が、我の道を決めるアル。』
そう心の中で呟き、足を進めた。
その頃、指令本部ではイギリスが通信機を静かに置いた。
「……中国殿、また勝手に戦線を動かれましたか。」
イギリスは軍服の袖を整え、双眼鏡で遠くを見つめる。
「ナチス殿も単独で南部を殲滅。フランス殿は……相変わらず、自由気ままに。」
目を細める。
「まるで、命令を無視する貴殿方が……正しいように見えてしまいますね。」
◆
南部都市――そこには既に死体の山が築かれていた。
「……終わった。」
ナチスは淡々と呟き、軍帽を深く被る。
『次、北東部にて交戦発生。進軍、迅速に。』
「了解。」
そこに、フランスが悠然と歩いてきた。
「よお、お疲れ。」
「……なんだ、フランス。命令か?」
「命令じゃないよ。あたしの意志。」
「……意味がわからねえ。」
ナチスはフランスを睨む。だが、その瞳はどこか虚ろだった。
「お前も……政府の人形だろ。」
フランスはふっと笑う。
「違うね。私は“私”の命令でここにいる。」
「……俺は、俺の命令なんて知らねえ。」
ナチスの手が、わずかに震える。
「俺は……命令がなきゃ、動けねえ。」
「哀れだね、ナチス。」
フランスは背を向け、去り際に言い残した。
「私は、私の意志でしか動かない。お前がいつか、本当の自分を知ることを――
ちょっとだけ、期待してるよ。」
◆
同時刻――中国は一人、山中を歩いていた。
「……ナチス、フランス……我には関係ないアル。」
剣を肩に担ぎ、ゆっくりと夜道を進む。
「我は、政府の人形なんかじゃないアル。我は我のために動くヨロシ。」
彼女は、国を守るためでもない。ただ、戦うことを自分で選んでいる。
「……だが。」
ふと立ち止まり、彼女は夜空を見上げた。
「我は……一体、何のために戦ってるアル?」
初めて、迷いが生まれた。
◆
一方、イギリスは冷たい目で戦況を整理していた。
「彼らは全て、政府の指令から外れた存在……。なのに、勝ち続けている。」
「……ならば。」
イギリスは、静かに通信機を握る。
「政府の命令に、私も背いてみる価値はございますか?」
その呟きは、静かに、戦場の新たな火種を生む――。
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