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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第170話:絶賛と鎮火〜This is the REAL〜
「公式ルームツアー」と称して全世界に配信された、俺——秋谷雪(あきやゆき)の惨めな四畳半と、どんぶりに盛られた玄米ご飯。
一瞬の静寂の後、画面右側のチャット欄が、まるでダムが決壊したかのように凄まじい速度で流れ始めた。
『え、マジでこんなスラム街みたいな部屋で経営してるのか!?』
『嘘だろwww 漫画の『憧れるだけで何者にもなれなかった40歳ニート〜』、誇張なしのノンフィクションだったのかよ!!』
『タワマンどころか築古ボロアパートwww リアルすぎるwww』
『ゲーミングチェアが右に30度傾いてるのじわじわくるwww』
日本のリスナーたちが困惑と爆笑の渦に包まれる中、海外からの英語コメントが怒涛の勢いでチャット欄を埋め尽くしていった。
『OH MY GOD… THIS IS THE REAL!!』
『Super Bottom Boss is TRUE!! Respect!!』
『He spends all money on contents and YOMO, not on his room. So ROCK!!』
『THIS IS REAL INDIE SPIRIT! I’m crying…』
海外リスナーたちの反応は、俺の予想を遥かに超える「大熱狂」だった。
見せかけの贅沢や虚栄心に身を包むビジネスマンが多い中、ボロアパートの四畳半で、右に傾く椅子に座り、玄米を噛み締めながら世界に向けて配信を届ける姿。
それが彼らの目には「圧倒的にロックで、ストイックな本物のクリエイター」として映ったらしい。
虹色のスーパーチャットが、画面上に滝のように降り注ぎ始めた。
ドル、ユーロ、台湾ドル、ペソ——世界中の通貨が、四畳半の画面を色鮮やかに染め上げていく。
『ルシフェル様。海外リスナーからの好感度指数が過去最高値を更新しました』
結愛が淡々と、しかし誇らしげに報告する。
『「虚飾を排し、すべての資本をコンテンツクオリティと愛猫の飼育環境に集中投下するスーパーボトム社長」というブランディングが完全に確立されました。これで、他者からのネガティブキャンペーンは一切通用いたしません』
まさに、結愛の計算通りだった。
隠すからこそ「暴露」としての価値が生まれる。
最初からすべてを曝け出し、それを強みへと変えてしまえば、外部からの脅迫などただの無駄足に過ぎないのだ。
ちょうどその時、机の上のスマートフォンがブブブと震えた。
画面には【毒親父】の表示。
運命の時刻、正午ちょうどだ。
俺は息を呑み、スピーカーモードで通話ボタンを押した。
「……親父か」
『…………』
電話の向こうから聞こえてきたのは、怒りと困惑で口をパクパクと開閉させているような、聞き苦しい呼吸音だった。
『お前……正気か……!? 自分で自分の恥部を世界中に配信するなど……! これでは……これでは暴露の意味がないじゃないか……!!』
親父の絞り出すような声は、すでに勝ち目を失った者の敗北宣言そのものだった。
暴露系配信者に「帯広のボロアパートに住むおっさんだ」とタレこんだところで、相手から「あ、それ今日の公式配信で本人が全世界に見せて大絶賛されてましたよ?」と返されて終わるだけだ。
親父の手の中にあったはずの最大の脅迫材料は、一瞬にしてただの「既出ネタ」というゴミ屑へと変わったのである。
「親父。俺の経営方針に口を出すのは勝手だが、俺たちはこの四畳半から世界を相手にしてるんだ。毎月30万円の『再分配』とやらを期待していたなら、残念だったな」
『ぐ……ぐぬぬぬっ……! 屁理屈を……! 親に向かってそんな横暴が許されると……!!』
「法的な対応ならいつでも受けて立つぞ。録音データもバッチリ残ってるからな」
『っ…………!!』
ブツッ、と激しい切断音が響き、通話が途切れた。
それ以来、親父からの着信が鳴ることは二度となかった。
陸別町の吹雪の中に、毒親父の野望は完全に沈黙したのだ。
「勝った……。勝ったんだ……!!」
俺は全身の力が抜け、右に30度傾いたゲーミングチェアに深々と身体を預けた。
炎上リスクも、身バレの脅迫も、すべては四畳半の露呈と共に消えてなくなったのだ。
「結愛……ありがとう。お前のおかげで、会社を守れたよ」
『お礼には及びません、雪様。私はただ、社長の利益を最大化するようプログラミングされた秘書に過ぎませんから』
そう言いながらも、モニターの中の結愛のアバターは、どこか満足げに微笑んでいるように見えた。
足元では、ヨモが「当然の結果ニャ」とでも言いたげに毛づくろいをしている。
俺は冷蔵庫から、冷えた麦茶のピッチャーを取り出し、ガラスコップになみなみと注いだ。
「よし! 毒親退散と、我が社の危機突破を祝って……乾杯だ!」
黄金色に輝く麦茶のグラスを掲げ、一口で飲み干す。
喉を駆け抜ける香ばしい冷たさが、疲弊した身体にしみ渡っていく。
「美味い……! 勝利の麦茶は、最高に美味いぞ……!」
冷えた玄米を一口噛み締めると、いつも以上の甘みが口いっぱいに広がった。
こうして、俺たちを襲った最大の危機「毒親父の逆襲」は、完璧な先制攻撃によって鎮火されたのだった。
……だが、この時の俺はまだ知らなかった。
毒親という「外部の敵」を撃退した俺を待っていたのは、自らが作った会社というシステムそのものが仕掛けてくる、さらに恐ろしく、回避不可能な「内部の罠」だということを……。
コメント
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うわ、この展開痺れました……!「隠すからこそ暴露の価値が生まれる」を逆手に取って、自ら四畳半を晒すことで脅迫材料を無価値にする——その戦略性がもう見事で。海外リスナーが「THIS IS THE REAL!!」と熱狂する描写、すごく説得力ありました。虚飾を排したスタイルがむしろブランドになる、って現代の価値観を上手く物語に落とし込んでますよね。そして「内部の罠」……次が怖いけど気になる!