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「……っ、さ、さっき、将輝さん、犯人は執念深くて、頭の中で、何通りものシナリオを並べて悦に浸ってるタイプ……って、言いましたよね?」
「ん?言ったけど」
ただの暗号だけならまだしも、必ず花と一緒に丁寧に箱に入れて送ってくる人物
俺が花屋を経営していること、または花が好きだと知っている人物の犯行だとしたら
思い当たるのは一人しかいない。
「楓ちゃん?顔色悪いけど、大丈夫そ?」
「え……あっ、す、すみません」
「様子おかしいけど、もしかして犯人に心当たりあった?」
図星をつかれ、肩が跳ねた。
「誰?」
短く問われ、白状するように震える唇を動かした。
「…岩渕竜二って男、かもしれません……っ」
俺が顔を上げてそう言うと、二人がシンクロして
「「は?」」と言った。
「楓ちゃんさ、今岩渕竜二って言った?」
「え……?はい、言いました、けど」
「楓くん、岩渕と知り合いなの?」
「まさか、ただ…この試験はまだ終わってない、ってので昔のこと思い出して」
「待って、それ詳しく教えてくれる?」
仁さんの言葉に俺は戸惑いつつも、過去のことを軽く話すことにした。
◆◇◆◇
数分後…
「……ってな感じで、中学生の頃にハイパーΩなのを理由に試験体として誘拐されてしまったことがあったんですよ。それに、俺が花が好きだということも知ってました。だから可能性が高いかなって……」
「いや、じゃあそのときアイツに楓ちゃん誘拐されて無理やり発情させられたってことでしょ?…胸
糞」
「楓くん、ディープなこと聞くけどさ。妊娠させられたりした…?」
「いや、されてないと思いますけど…ただ何とか逃げ切って」
ふらつく千鳥足でネオン街を抜けて、兄に電話で助けを求めてなんとか無事に帰れたので……」
「不幸中の幸いってとこか…」
「でも、俺、ただでさえフェロモン強いハイパーΩなのに、その誘発剤過剰摂取させられたせいで、さらにフェロモンが強まっちゃって」
「てかそうだ、楓ちゃんってハイパーΩなの?甘い匂いとか全っ然しないけど」
「あっ、それは…抑制剤を過剰摂取するようになってから、フェロモンブロッカー依存性になっちゃって…発情しなくなっちゃったんですよね…あはは」
「楓くん……それって…Ωとしては致命的なんじゃ…?」
「でも、いいんです、俺は後悔してないんです。フェロモンが強すぎるせいで…何度も襲われそうになってましたから……」
「こっちの方が、生きやすいんです…!例え、欠陥品のΩだとしても」
「欠陥品なんてそんな卑下しなくても」
仁さんの言葉に将輝さんは重ねるように
「そういう子、一定数いるからね。抑制剤じゃなくても、無責任なαに子供作らされて鬱やPTSDなって自殺計るΩ」
と言い出して少しの沈黙の後に、俺は絞り出すように言った。
「それはそうと、アイツ…って、二人もあの男のこと知ってるんですか…?」
「知ってるもなにも、ねえ?」
将輝さんは仁さんと顔を見合せて
仁さんは「楓くんには教えてもいいかもな」
と言って言葉の続きを待っていると
「数年前、俺がまだ組にいたころ」
「多分、楓くんが誘拐された拠点と似たようなところの地下室で「餓狼連合、通称リプロダクションスレイヴによるニャンニャン事件」ってのが起こってたんだよ。」
「ニャンニャン事件……あっ、それ昔さんに聞いたことあります…!!」
「確か…無差別に何人かのΩを拉致監禁して組織内のαと強制的に性行為させて……」
「確かDVもあったって…ニャンニャンは性行為の隠語で…そう呼ばれてるんじゃなかったでしたっけ……?」
「楓ちゃん察しいいじゃん」
「実は俺とじんの出会いはそこでねえ、俺の今の奥さんにあたる人をじんは不器用なりに助けてくれちゃってさ」
「今はいいだろその話は…まあ、その頭が岩渕竜二ってことなんだけど」
「そんとき俺が弟みたいな感じで可愛がってたαの番が岩渕に攫われたっての訴えてきて兄弟分のβと三人でカチコミ行って」
そう、淡々と話す仁さんは、今初めて会った人にすら思える。
「まあ…岩渕に関しては腕と太腿に弾丸食らわしたぐらいで結果的にサツがそいつら取り押さえて」
「ちょっとした問題が起こったからその隙に俺らは逃げたわけ」
「それからそのアジトは廃墟と化したし組員含めて岩渕も姿を消してたんだ」
兄弟分とか、カチコミとか
弾丸食らわすとか
ドラマや映画でしか聞いたことないような言葉が羅列されて、俺は聞くことしかできなった。
「そんな、過去が……っ、でも、その話で言うならまだ岩渕って男は生きているってことですよね…?」
訊くと、仁さんが答える前に将暉さんが言った
「だろうねえ、岩渕って昔から色んな意味で不死身の岩渕とも言われてたからね。」
「不死身の岩渕…?」
「まあ、傍から見ると脅威すぎて死ぬところを想像できないってのもあるけど」
「岩渕がまだカタギだったと言われてる大学生時代、慶應学院大学の学生で高身長イケメンでありながら、20代ぐらいのときに3人のΩの男を雑居ビルに連れ込んで強姦して」