テラーノベル
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大勢のフェイラーを前に固まる6人。
敵も動かない。
遠くの喧噪がうるさいほどに聞こえるその間合いを最初に詰めたのは、慎太郎だった。
いつもなら最初は大我が敵を洗脳し、いくらか戦闘能力を落としていくのだが今度はそれも歯が立ちそうになかった。
「行く…行くしかない!」
剣を振りかざし、慎太郎は直進する。それに呼応するようにフェイラーも向かってくる。
一番前の敵に切りかかると、新鮮な毒の効果もあってかいとも簡単に倒せた。
ほかのみんなも動き出す。
ジェシーの真っ赤な炎が、前列の敵を焼いた。しかし火力が強すぎたのか、そばに転がっていた段ボール箱も燃えてしまう。
「うわあ! ちょっとごめんサファイア」
「しょうがねえな」
それを氷で鎮めた樹は、その手を敵にかざす。水色の閃光が走り、敵は音もなく倒れた。
北斗は鋭い眼差しを向け、1人を確実に消し去った。そして銃口を向け、ほかのフェイラーを撃っていった。
高地の雷の火花が散り、数人まとめて感電させた。
と、銃を構えていた北斗が、突然膝を折って崩れ落ちた。魔力を使いすぎたのだ。
それに気づいたジェシーが駆け寄り、肩を抱く。
「おいジェット! しっかりしろ」
そのまま車に連れていき、座らせる。
「……俺は大丈夫、行ってきて」
ジェシーは再び走り出す。
そして大我も持っていた銃で応戦するが、どうにも当たらない。
「ナイト、逃げろっ!」
まさにフェイラーが襲い掛かろうとしたところに、高地が間に入る。眩い雷光が視界を覆う。
「北斗を頼んだ!」
大我は5人を振り返りながらも、車のもとへ走った。
フェイラーを倒し戻ってきた4人は、疲弊している様子だった。
それを大我は罰が悪そうに迎える。
「ごめん……俺、何にもできなかった」
「しょうがないよ、あれは想定外だったから」
慎太郎がなだめる。それでも表情は沈んでいる。
「ジェットは? 大丈夫?」
ジェシーが後部座席の北斗を見やる。様子はもう普段通りだ。
「うん。ナイトが癒してくれたから」
そっか、と安堵する。
すると樹が、押さえるように隠している高地の右手に気が付いた。
「なあトパーズ、手どうした?」
「え? ああ…」
お茶を濁そうとしたが、大我に先を越される。
「ちょっと見せて」
右手をとって服の袖をまくると、手首に傷があった。
「えっ」
「大丈夫? 痛そう」
とみんなは心配する。
「さっき噛まれた。…そんな深くないから」
と言うが、大我はその手を包み込み、目を閉じた。
次に目を開けたとき、その傷は跡形もなく消えていた。
「えっ……お前こんなこともできるの?」
大我は笑いかけた。「実はね」
「すげーな! 最強じゃん」
慎太郎が笑った。
「な、だから闘いには出なくても別にいいんだよ」
ジェシーのその言葉に、表情を緩ませてうなずいた。
続く
コメント
1件
異能力系の話はまじで最高です🥺