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悪魔はただじっとポルポルを見つめる。
ポルポル「ギィ〜?」
よそうだにしない出来事に全員が金縛りにでもあったように固まる。1番最初に動いたのはジークだった。
ジーク「…ぅぉおおおおおお!!ばかやろおおおぉぉぉ!」
そう叫びながら、ポルポルを抱え勢いで少しスライディングしていく。
ポルポル「ギッ。」
ジーク「ギッ。じゃねぇ馬鹿!!八つ裂きにされるとこだったんだぞ!?お前のせいで、俺もコイツのテリトリー内だ!どうするんだこれ!2人しておじゃんまっしぐらだ!!」
ジークはそう泣きながら、悪魔を指さしポルポルに訴える。
人型の悪魔「ァ゛……ヴ……」
ジーク「こっち来るんじゃねぇ!!」
あまりの気迫に悪魔は少し動揺する。
人型の悪魔「ギュ…ヴ…」
シリル「…あれだけ近くに居ながら襲ってこない…?」
シリルは武器を急にしまう。
ジーク「何考えてんだ!?今頼れるのはお前だけなんだぞ!?…もういい…!」
ジークはそう言って弓を構える。
シリル「待って!」
ジーク「こっちは死の瀬戸際なんだぞ!?」
シリル(これは…もう話を聞いてくれそうにないな…)
シリルは悪魔のテリトリー内に、悪魔の近くに、そして横にとどんどん近づいていく。そうして悪魔に手を触れる。
悪魔「…ギューイ……」
悪魔はただ静かに鳴き声をあげる。
ジーク「…お前…本当にイカれたのか…?毒でもあったら…」
シリルの行動に思わずジークはドン引きする。
シリル「…やっぱりそうだ。敵意がない。毒はないよ。」
ジーク「は、はぁ?」
ポルポル「ギィー。」
ジークの腕に抱かれていたポルポルは悪魔を見上げ鳴き声をあげる。悪魔はそれに反応したのか鋭い腕をポルポルに伸ばす。
ジーク「…。」
ジークはポルポルを悪魔を触れさせまいと自分の方に抱え込む。
シリル「君、名前は言える?」
悪魔は答えない。
シリル「極度の知能低下…でも友好的…」
(とすると…手遅れでは無い可能性がある…)
イリア達がひょこっと顔を出す。
イリア「出ても大丈夫?」
シリル「うん大丈夫。この人は友好的だよ。」
イリア「…それは本当?」
シリル「うん。」
アリィは警戒して近づいて来ないが、イリアは悪魔の元まで歩み寄る。
悪魔「ギュ…」
イリア「…ほんとね。ねぇこれって…」
シリル「イリアの予想通りだよ。…でも通信機が使えないんじゃ…」
シリルはそういうと拳を握る。
イリア「シリル…」
シリル「…見逃すくらいしか出来ないね。ジーク、嫌かもしれないけど今回は…」
ジーク「殺すなって言いたいのか?…本当に敵意がないのかは疑問だが…まぁ襲ってこないなら…」
シリル「ごめんね、わがままを聞いてもらっちゃって。…ごめんね、今は無理なんだ。…行って。人が居ないところに。」
ジーク「…イリア、お前はアリィの近くに居ろ。シリルも油断するなよ。だってソイツは…」
ジークの話を遮るかのように発砲音が鳴る。しかしその弾が悪魔を貫くことはなかった。何故ならそれは悪魔が鋭い腕で弾いたからだ。到着点を失った弾は砂だけの地面に落ちる。その弾をみて1人の男性は舌打ちをする。
男性「チッ…弾かれたか…」
悪魔は揺らりと男性の方を向く。
悪魔「カチカチカチカチカチカチカチカチカチ。」
悪魔は歯を鳴らし威嚇する。しかし男性は銃を下ろさない。
男性「こいつは俺が引き付けとくから、お前達は逃げな。」
男性はそうイリア達に告げる。
シリル「…ハンター…。」
恐らくハンターの男性はイリア達が襲われかけてると勘違いしたのだろう。
シリル「待って…!この悪魔は…」
悪魔がシリルの話を待たず、鋭い鎌のような腕を持ち上げ振りかぶる。イリアに向けて。
イリア「…え…?」
悪魔が振りかぶる直前、遠くから警戒していたアリィは叫ぶ。
アリィ「…イリア!」
考える余地はない。目の前にはハンターが居る。だがそれがどうしたというのだ。
アリィ(私が魔法を使わなければ、イリアは確実に死ぬ。今、間に合うのは私だけだ。…イリアをここで殺す訳にはいかない。だって役に立つから。)
アリィは迷うことなく、魔法を使う。そして、早く速く足を動かす。それは捉えるのが難しい速さで。しかし、悪魔の身体能力は魔法で強化したアリィにも勝っていた。アリィはイリアと悪魔の間に入るようにして、イリアを腕に抱きこみ走る。悪魔はそれを許すことなく、鎌を振りかぶった。アリィの背中に。
アリィ「…ぅぐうっ……!!」
深手を負ったアリィはやがて倒れ込む。少しの距離をあけながら。それでも即死でなかったのは魔法の賜物だろう。ハンターは一瞬明らかな動揺を見せたが、すぐに冷静さを取り戻す。
イリア「アリィ…!!」
(どうしよう…私の…私のせいで…そうだ…早く…止血しなきゃ…じゃないとまた…また?また私のせいで誰かを死なせるの?)
混乱して固まったイリアに対し、アリィは痛みに悶えながらも訴える。
アリィ「…しっかりして…!今、応急処置ができるのは…イリアだけなんだから…!イリアが固まってどうするの…!」
アリィのその喝にも近い訴えにイリアはハッとして止血を始める。
イリア「そ、そうよね…!」
アリィ(血が止まらない…眠い…でもここで死ぬ訳にはいかない…!)
イリアはアリィの様子に気づいたのか、ひたすら他愛もない話をアリィにしながら止血する。
シリル「…ごめん、僕のせいだ。」
ジーク「反省も後悔も後でいい。…っどけ!」
ジークはそう言うと悪魔を蹴り飛ばす。
悪魔「カチカチカチカチカチカチカチカチカチ。」
ジーク「ここから離れるぞ。銃の斜線上に入ってるからハンターが自由に撃てない。あの悪魔は擬態型だ。人によく似てるが、歯の形が肉食のそれだ。お前の質問にあの悪魔の代わりに応えてやる。アレはとっくにヒトを食ってる。」
シリル「…そっか。手遅れだったか…くそ…。」
ジーク「ポルポル、お前はイリア達のところに居ろ。シリル、イリアを守りたきゃ戦え。近付かせるなよ。」
シリル「分かった。」
ジークは矢を取り替え、弓を構え放つ。矢は悪魔の足の先に当たる。
悪魔「ギュ……ァ…」
シリル「腕で弾かれるんじゃ体の端を攻撃するしかないよね…。」
ジーク「いいや。そんな心配しなくていい。アレは麻酔毒が塗ってあるからな。」
悪魔「ァ゛…ァ゛ァ゛…!」
ジーク「殺ってくれ。刺さった矢には触れるなよ。アレが効かないのは俺達セヌス人だけだ。」
シリル「了解。」
シリルはたった一言そう告げると、ポケットから銃を出す。
シリル(ハンターが銃を使うなら、邪魔しないようこちらも遠距離武器のがいいはず…。遠距離苦手なんだけど…やるしかない。)
ジーク「お前そのポケット、銃も出せたのか…」