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後ろの勇者たちは、シェナが弾き飛ばした。

騎士団長と挟まれないように、距離を取ってくれたのだ。

これで、しばらくは団長と一対一で話が出来る。


「ねぇ、話を聞いて! ほんとに私は、国をどうこうしてやろうなんて思ってないから!」

ゴーグルを外して捨てた団長は、未だ目を閉じた状態で私に向き直った。

「陛下や第二王子を騙せたからと、図に乗っているのだろう。だが私は違う! 今、貴様からこの王国を護れるのは、私しかいないのだ! 貴様の話など信じるものか!」


だめ、か。じゃあ、私はどうしたらいい?

私の邪魔をするからとこの人を殺したら、自分勝手な人殺しだ。

どうしよう。

取り押さえるにしても、彼の全身を覆う装備は……下手に触れるとよくない気がする。


「……私の目が落ち着くまで、攻撃をしないというのも作戦の内だろう。だがその手には乗らん!」

その言葉の次には、きっと攻撃が来る。

目の前数メートルのところから。

結界は張ってあるから、私は無傷だろうけど。

後の手が見つからない。



「ねぇ、本当に何も、この国に変なことはしないから。気になることがあるなら言って。ちゃんと答えるから――」

そう言い終える前に、団長の肩の装備から光線が一本ずつ放たれた。

狙いは手動なのか、目がまだ回復していないからか、私の足元に撃たれた。

――外した。


けれどその光線はまだ放出されていて、そのまま上へと軌道を変えて私の両腕を薙いだ。

それはほんの一瞬のことで、まばたきの間もなかった。

――あっっっぶなぃ。


結界がなければ、本当に私の腕は、肩口から光線で焼き切られていた。

私の体の、ほんの数十センチ手前で、焼かれた赤いラインが二本、縦に伸びている。

結界は今のでもまだ、破壊されてはいない。


――強度はまずまず。

だけど……あんな恐ろしいものを全身に仕込んでいるとなると、殺さずに制圧出来る気がしない。



「ちっ……。これが通じないとは、やはり化け物ではないか! 必ずここで、私が仕留めてみせる!」

彼からすれば、私こそが国を謀る悪で、倒すべき存在に他ならないのだろう。

――じゃあもう、聖女をやめて魔族領に帰る?

聖女の書記は割と少なくて、もう全部を読み終えた。

治癒魔法に関しても、聖女特有の魔法についても、一応は全部頭に入れた。


――ならもう、戦う意味も別にないし、戦うの自体好きじゃないし……いいか。

そんなことを考えている間にも、彼は私と距離を取り、両腕をこちらに突き出して何かを発射した。

それだけではなくて、たぶん背中に背負っていたものからも、ミサイルのようなものを。

両腕からのものは真っ直ぐに、そして背中からのものは上に打ち上げられた。


先ずは直進してきたものは、私の目の前で豪快に炸裂し、結界に阻まれてはいるものの、周りの地面は抉られた。

おそらくは金属片交じりの爆弾、ロケット弾だろう。映画で見た。


そしてすぐさま、上空からもミサイルが何個も飛来して頭上で爆発。

さすがに結界が壊れてしまうのではと思ったけれど、周りの地面が黒焦げになっただけで私は無事に済んだ。



「……通じない。私にはそんなもの、通じないわ。それでも、私は王国に手を出したりしてない。だから止めてよ。私が本気を出せば、国ごと焼き尽くせるのよ?」

竜王さんから教わったブレスなら、まあ、何度も頑張ればたぶん出来る。

爆発で起きた土煙が、お互いに視界を閉ざしているのでもう一度、説得を試みてみたけれど。


「ほざけ」

体のすぐ側で、その声は聞こえた。

「しまった!」

あの装備で、ずっと遠距離から撃ってくるものとばかり思い込んでいた。

結界は壊れていないけど、ここまで接近させるつもりもなかったのに。



「くそっ。この振動剣でも通らないのか」

この後に自爆でもされたら、私は無傷であっても寝覚めが悪い。


「諦めてよ。この聖女の結界を破れないなら、もうあなたに勝ち目はないでしょ?」

「何? 結界だと? あんな燃費の悪いものを使っていたのか。ならばそろそろ、魔力切れだろう」


「なぜあなたがそんなことを知ってるのよ」

「科学者どもがしきりに研究しているからな。どうしても短時間しか維持出来ない欠陥品だ!」

――そうなのかな?

かれこれ、戦闘が始まって数分が経っているけど、私はまだまだ張り続けていられる。


「たぶんそれ、魔力が少ないからでしょうね。それよりもその剣、納めてよ。戦いなんてやめましょ?」

「五月蠅い! クソっ、勇者ども! 何を遊んでいる! こっちを手伝え!」

「ちょっとぉ、耳元で叫ばないでよ!」

シェナのお陰で忘れていたけど、あの裏切りものたちにも聞きたいことがある。



「さっさとこの聖女もどきを殺せ! 何をそんなガキに手こずっている!」

「せ、聖女じゃないってば! ヨモツヒルイ! それに、あの子はガキなんかじゃないし、私より強いんだからね!」

せっかくカッコイイ名前考えたのに、誰も呼んでくれないし!


「ああ? さっき自分でも聖女の結界と、そう言っただろう」

「あっ――!」

くそぅ。聖女だと何度も言われたせいで、ついうっかり……。

戦いながら、頭を使うことはしたくないわね。



「どうでもいい。ところでだ、貴様に良いことを教えてやろう。あのバカ勇者どもはな、私が洗脳を施している。可哀想に、もう貴様を裏切れないと言って抵抗していたが? あの通り今は、私の駒になった。貴様がお人好しを通すなら、あいつらは殺せまい?」

せっかく、国のために誤解とはいえ戦っているから、見直していたのに。

その綺麗な顔をそんなに歪んだ笑みにさせるのは、一体何が原因なのか。


「手段を選ばないなんて、騎士としてどうなの? なぜそんなに私が憎いのよ!」

と、こいつは私が抵抗しないのをいいことに、ずっと振動剣を結界に当て続けている。

気のせいかもしれないけど、少しだけ切れ込みが入っているような、ないような。


「コケにしたからだ。魔族の分際で、この私を! この国を!」

今、この私を、って言った。



「ふ~ん? チラチラと、無様なプライドのせいだっていうのが漏れ出てるわよ?」

私がそう言った瞬間、プライド団長がグシャっと上から潰された。

地面に頭から押さえつけられて、白目をむいている。


「シェ――……ナナ!」

コードネームは、咄嗟の時に忘れがちになる。



「ヒルイ様。クソブタ一号は破棄しますか」

「ちょ、ちょぉっと待って。あとそいつ、いろんな兵器で全身包んでるから、あんまり触っちゃだめよ?」

「意識を繋いで頂いているお陰で、戦法は読めました。私なら大丈夫です」

――あぁ、なんて頼りになるんだろう。


「うん、それじゃあ、少しお願いね。あのバカ勇者たちの洗脳、解いてくる」

取り押さえたまま動かずに居てくれるなら、シェナにも結界を張っておける。



これの本当の欠点は、動く対象に張り続けていられないことだ。

結界の対象は人でも物でもかけられるけど、かけた位置から動いてしまうと、有効範囲から出てしまう。


歩く程度であれば、一緒に移動出来るのだけど。

シェナほど素早く動くと、どうしても外れてしまって意味がない。

完全に、籠城向けの魔法。



――さて。

勇者は向かってきてくれるだろうけど、遠距離職の黒い人が、籠城していては解いてあげられないのよね。

接触しないと、脳に施されたものを解除できないから。

……面倒よね。何かで気絶させられればいいんだけど。

聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~

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