「消太さん。私たちのこと噂になりはじめました…。」
「みたいだな。いつかはそうなると思っていたが。」
世界中のガラス細工が展示されている美術館でデート中のこと、彼女は重い口を開く。
「この前偶然聞いてしまったんです。芦戸さんや八百万さん達が、普通科の女子達と言い争ってる声。」
「俺も、上鳴·切島·瀬呂が普通科の奴らと揉めているところを止めた所だ。」
「あと、他の先生方の視線が無駄に刺さります。」
「そうだな。すれ違う度に陰口を言われてる気がしてならない。」
彼女は落ち込んだ様子でため息をつき、17世紀に作られたワイングラスとデカンタを眺める。
「こんなデカンタ欲しい…。」
「デパートで見てみるか??なんならワインも買って帰るのもいいぞ。」
「デパートもいいですけど、ここは雑貨屋さんで見ましょう。ワインはデパートで。なんてどうでしょう??」
「そういうのも良いな。そうしようか。」「はい。」
雑貨屋数件を回り、2人気に入ったものを買う。そしてデパートでワインとおつまみと夕食のおかずを買って、彼女の家に。
「誰も後つけてないですよね。」
「そんな気配はなかったな。早く入ろう。」
ワインボトル2本空くころには。
「さすが八百万さんですよね。相手の子の親の会社がインサイダー取引してるって言ってて…。あ、グラス空っぽ。」
「それくらいにしとけ。」
グラスを取りあげると、不満そうに机に突っ伏した。
「上鳴君達はどうだったんですか??」
「ん??あぁ。普通科の生徒が手を出しそうだった。」
自分もさすがに飲みすぎたと痛感する。
「消太さんのクラスの子達は、ほんとにいい子ばっかりですね。絶対、誰もが羨むヒーローになること間違い無しです。」
「そうだな。」
「あ、私も片付けるの手伝います。」
片付けに立った自分を追いかけたと思えば、抱きついてきた。
「手伝うんじゃなかったのか。」
「はぁ。消太さんの匂い好きです。」
「…(だめだこりゃ。)」
「教師どうしだから言われるんでしょうけど。だから何ですか。生徒達はともかく、先生達にはとやかく言われる筋合いありません。」
「そうだな。」
子どものように怒る彼女のほうに向き直り、改めて抱きしめる。
「俺たちは俺たちの思いを貫くだけだ。誰に何言われようが、俺は美樹のことを諦めたりしない。」
「私も、です。消太さんと別れたくない…。」
片付けをそっちのけにして、お決まりの流れに。
「(親からの苦情も時間の問題だな…。)」
眠ってしまった彼女の頬を撫で、考えに耽る。幸い外出届けを出しているので急いで戻る必要もない。
「(こんな静かな夜はいつぶりか。)」
彼女の匂いに包まれながら、眠りについた。
コメント
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面白いです‼️続きが気になります🙏🏻💭頑張ってください🔥