「金森さん・・何で来たんだ!?」
駿は突然入って来た梓に問いただす。
「これ以上先生に迷惑かけられません!」
梓の乱入で全てを悟った聖奈が
「はぁーん!分かった!分かった!あんたが告げ口した訳ね?相変わらず陰湿でキモいやつね!」と梓に詰め寄る。
「まだ言うのか!!」駿は立ち上がる。
「何回だって言ってやるわよ!金森は陰湿でキモくて人の気持ちを踏みにじる裏切り者よ!」
「俺と同じ様に金森さんの涙を、君たちだって見たはずだろ?それなのに・・それなのに何でイジメを辞められないんだ!?」
「こいつウザいんだよ!世界で一番私が不幸です!世界の不幸を自分が背負ってますみたいらツラしてさ!」
梓はそんな聖奈の言葉を黙って聞いている。
「だったらそこで、手を差し伸べてやるのがクラスメイトじゃないのか?」
「私がいつ手を差し伸べなかったなんて言った?差し伸べてやったよ!いつも1人でいる金森が心配で!
けどコイツはそれを拒否ったんだよ!こっちが心配して声をかけてやったってのにさ!
何も知らないくせに知った様な口きいてんじゃねーよ!!!」
聖奈は怒りにまかせて机を蹴り飛ばす。
「君にも思うところがあるのかもしれない!でもだからってイジメていいのか?それは違うだろ?君の主張は自分のイジメを正当化したいだけの言い訳じゃないか!」
駿の言葉に聖奈は下唇を噛み締めてうつむく。
すると黙っていた梓が「ごめんなさい!」頭を下げて謝る。
「な、何で金森さんが謝るんだ!?」
突然謝る梓に駿は驚きを隠せない。
それは聖奈と沙月も同様で、驚いた様に目を見開く。
「私・・怖いの。仲良くなった友達が、お父さんみたいに、突然居なくなっちゃったらって考えたら・・どうしようもなく怖いの」
梓は涙ながらに胸の内を明かす。
「それならいっその事・・人を拒絶して孤独になればいい・・そう思って秋根さんが心配して声をかけてくれたのに・・私・・私・・本当にごめんなさい!!」
「金森・・」聖奈と沙月は初めて梓の本音を知り、その場に呆然と立ち尽くす。
「何よそれ・・だったら最初っからそう言いなさいよ!私1人だけ裏切られた気分になってさ、馬鹿みたいじゃん!」
聖奈は涙を流しながら梓に詰め寄る。
「ごめんなさい・・でも勘違いしないで。秋根さんが声をかけてくれたのが、嬉しくなかった訳じゃない
嬉しかった・・こんな人と友達なれたならなって思った・・けど・・失うのが怖かったの・・
だから私・・本当にごめんなさい」
「ごめんなさい!」沙月は頭を下げる。
「はぁ?何謝ってんのよ!!意味わかんないんだけど!悪いのは金森じゃん!」
聖奈な頭を下げる沙月に涙を流しながら詰め寄る。
「正直になりなよ聖奈!アンタだって本当は金森の本音聞いて、気持ち揺らいでるんでしょ?」
沙月が聖奈に問いかける。
「はぁ?意味わかんない!私はただ!私を裏切った金森が」
涙を流しうつむく梓を見て言葉を詰まらせる聖奈。
「そっか・・裏切った裏切られたって話じゃ、最初から無かったんだ・・・」
聖奈の目から大量の涙が溢れ出る。
「ごめん!金森!私は自分勝手な被害妄想でアンタを悪者にしちゃってた・・本当にごめんなさい!」
聖奈は涙を流しながら梓に頭を下げる。
「謝らないで?私も秋根さんの優しさに気づかずに、突き放しちゃったりしてごめんなさい」
梓は聖奈の肩に手をそっと添える。
「それと・・今更こんな事言っても遅いかもしれないけど、私と・・その・・と、友達になってくれないかな?」
梓は涙を拭手を差し出す。
「ま、まぁ・・その・・友達として・・よろしく」聖奈は照れた顔で梓と握手をする。
「これもみんな、先生のおかげです、ありが・・ってあれ?」
梓が振り返ると、そこには既に駿の姿は無かった。
「てかあの先生なに?勝手に泣きべそかいて土下座したかと思ったら、気づいたら居なくなって!変なやつ」聖奈は笑みをこぼす。
「でもなんか面白い先生だったよね」
沙月が笑みをこぼす。
「まぁ、私に詰められてギャン泣きしてたけどね」
「ふふふ、確かに(笑)」梓は笑うが、それを聖奈と沙月が食い入るように見つめる。
「ど、どうかした?」梓は不思議そうに首を傾げる。
「いや、金森が笑ったと思って」聖奈が言うと沙月「うん!うん!」とうなずく。
「いいや、私だって笑うよ!ロボットみたいに言わないでよね」梓は不機嫌そうに頬を膨らませる。
「ぷっ、あはは!ロボットって!梓ってオモロ!」聖奈は腹を抱えて笑う。
「え?梓?」梓は名前呼びされた事に驚く。
「いや何驚いてんの?アンタ梓でしょ?」
沙月の言葉に梓は若干戸惑った様に「いや、そうなんだけど・・名前呼びされるの慣れてなくて」て照れた様に顔を赤く染める。
「いや、友達なんだし!名前呼びとか普通でしょ?」
「そっか・・私・・友達出来たんだ」梓は微笑む。
「よし!そうと決まればカラオケでも行くか!」
聖奈は梓と沙月を抱き寄せる。
「カ、カラオケ?急すぎない?」
「いいじゃん!カラオケ!梓は嫌い?」
「ううん、好きだよ!たまにヒトカラするし」梓は照れた様に呟く。
「へー!そうだったんだ!知らなかった!なら今度からヒトカラじゃなくてサンカラね!」
「サンカラ?そんな言葉初めて聞いたし」
「いいじゃん!サンカラ!ね?梓!」
「うん❤︎サンカラサイコー❤︎」
梓は拳を突き上げる。
「そう!そう!サンカラサイコー!」
梓、聖奈、沙月は3人仲良く教室を後にする。
そんな様子を物陰に潜んで見つめる駿。
「なんか・・俺に出来る事なんな何ひとつ無かったな・・・」駿は自分の無力さを痛感したかの様にため息をつく。
「でもこれで金森さんもイジメられる心配はないだろうな」
駿は安心した様子でその場を立ち去る。
それから梓は聖奈と沙月と、休みの日に一緒に遊びに行ったり、互いの家を行き来したりと言う仲になった。
それから梓は、気がつくと駿の姿を目で追う様になっており、 それが恋心だと気づくのにそう時間はかからなかった。
駿が重そうな荷物を持っていたら率先して手伝ったりもしたし、駿との世間話したさに職員室に入り浸ったりもした。
そんな梓に思いもよらない出来事が起きる。
それは2年に進級すると、担任が駿になったのだ。
「皆さんはじめまして!数学を担当しています皆川駿です!年齢は24歳で去年から教師を始めたばかりの新米ですが
みんなが楽しく学園生活を送れるように全力でサポートするつもりです!
そのためだったら、何だってするつもりですので、何かあったら気軽に相談してください」
梓はこの時、初恋の人が受け持つクラスの生徒になれた事を神に感謝した。
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