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優しい風が俺の隣を吹き抜ける。風に巻き上げられた桜の花びらが制服についた。それを丁寧に剥がすと、急に後ろで声がした。どうやらスーツを着た老人のようだ。
「こんにちは、佐倉蒼くん。」
「…あなたは誰?」
「名乗るほどのものでもありません。少し確認したいのですが、あなたは星城高校2年A組所属佐倉 蒼くんですね?」
「そうだけど。」
そういうと、俺の後ろに立っていた老人は俺の腕を掴んで、来て欲しいところがあると言いながら俺を引っ張った。しばらく引っ張られていると、不思議な鍵を渡された。老人が言うには、その鍵でこの目の前にある扉を開けて欲しいと言うことだった。どうやらこの先にある場所に行って欲しいらしい。俺は老人に言われるがままに鍵を使って扉を開けた。
「わっ…?!」
扉を開けると、全く違う場所に着いた。この扉があったのは随分古びた廃墟だと思っていたが、ここはまるで学校の教室のような場所だった。そこには、俺と同じように何人かの生徒だと思われる人たちがいた。男子生徒も女子生徒もいる。どうしてここに連れてこられたのかこの人たちは知っているのだろうか。聞いてみようと思って近づくと、さっき俺と一緒に来た人が手を叩いた。
「はいはい、皆様。自分の名前が書かれた席に座ってください。ここに集まってもらった理由をご説明しますから。」
ふと机を見ると、名前が書かれた紙が置かれていることに気がついた。大人しく自分の名前がある席に座った。するとさっきの老人…先生でいいか。先生は皆が席についたのを確認すると、自己紹介を促した。何だこの入学式を終えた後みたいな雰囲気は。
「…暁 灯と言います。高校1年生です。よろしくお願いします…」
肩に掛かるくらいの髪を緩く巻いた髪に、紺色ベースに白ラインが入ったセーラー服を着ている。少し長めのスカートに、膝が少し見えるくらいの丈の靴下に、ブラウンのローファーという典型的な女子高校生だ。次の生徒の紹介が始まるのかと思ったが、しばらくしても始まらない。席の方に振り返ると、何やらスケッチブックにペンを走らせている。
『私は朝霧 詩乃と言います。過去に事故に遭って声が出ません。高校1年生です。よろしくお願いします。』
ボブくらいの髪をハーフアップにしている女子は詩乃というようだ。声が出なくなっただなんて可哀想だと少し同情する。ネクタイをつけたブレザーを着ていて、中には薄いカーディガンを着ている。これもまた女子高生にありがちな服装をしている。
「俺は天野 陽翔だ!高校2年生だ!仲良くしような!」
こいつは黒髪短髪に、超元気な性格をしている。少し制服であろうブレザーを着崩していて、少しやんちゃな男子高校生だ。ズボンも丈があっていないし、三つ目のボタンが取れている。もう少しどうにかして欲しいものだ。
「…次は俺か。佐倉 蒼だ。高校2年生です。よろしくお願いします。」
「白峰 透。高校2年。よろしく。」
俺の次に自己紹介したのは、クールな男だった。イヤホンを耳に嵌めたままなんて癪なやつだと思ったが、身なりをしっかりしているところは好感が持てるやつだった。サイズがぴったりとしたズボンやブレザーを着ていて、髪型も申し分ない。
「あたしは白雪 ひなた。高校3年生。よろしく。」
長い金髪をサイドで高い位置で結んでいる。いかにもギャルな生徒だ。制服は着崩しまくっているし、靴下は一昔前のようにやけに下の方で弛んでいる。それにとんでもなく若者口調だ。この人亜先輩だなんて信じられないな…。
「僕は藤堂藤堂 悠真です。高校1年生です!よろしくお願いしまーす!」
白髪の短髪で、ブレザーをしっかりと着た好青年だった。高校1年生にしては小柄な方だと思うが、さっきの陽翔と比べて普通ぐらいの元気さだと思う。さっきの透よりは絡みやすそうなやつだ。
「私は七瀬 凛花と申します。高校2年生です。皆様、どうぞよろしくお願い致します。」
凛花は腰まである長い髪を下ろしていて、先の方は銀色のグラデーションになっている。それにこの辺では有名なお嬢様学校の制服を着ていて、どこかの令嬢のようだ。しかもこの学校はお嬢様学校にしては珍しく、スカートではなくスラックスなのだ。そのせいか、こんなにお嬢様口調で話されても幾分かカッコよく見える。
「……灰原 零だ。高校2年生。馴れ合うつもりはない。」
銀髪の少しだけ伸ばした髪に、凛花と似たような雰囲気で青いグラデーションが入っている。しかしこいつは最後の言葉を言わなければ好感が持てたのに、この異様な雰囲気の中でも馴れ合うつもりはないとは、よく言えたものだ。
「では最後に私の紹介をしないとですね。私はここ、『星宮学園』の理事長であり、これから皆様の担任になります、九条 蒼太です。今日からよろしくお願いしますね。」
にこやかに言って、九条先生は腰を折った。そして、俺たちをここに連れてきた経緯を教えてくれた。
「…実は、皆様にここに来てもらった理由はですね、ここで新たな光を掴んでもらうためなのです。」
俺は、唖然とした。どうして、この人は俺のことを見透かしたような発言をするのだろう。その質問を察したかのように、先生は言った。
「…ここにいる者たちは皆、『何かを失った』者たちなのです。」
Next class…