『妹の日記』
俺の妹は、何故かいつも寝る前に日記をつける。
勿論悪いことではないし、むしろいいことだとも思っている。
でも、何故か俺に”だけ”日記を見せたがらないのだ。
聞いてみても、『え〜、だってあたし字汚いし…』とか『文章おかしいからおにーちゃんには見せれないよ〜…w』とか言って必ずはぐらかされる。
でも、そんな事を言われる度、俺は日記の中身が気になって仕方なくなる。そんなある日。
[紅林ちゃ〜ん、ちょっと来て〜]
『はーい!』
がた、と席を立つ音。同時に先程まで日記を書いていたであろう日記帳が落ちてくる。きっと振り向いたときに手が当たったりでもしたのだろう。
……あ。今なら…見れるかも。
勝手に人の日記を見るのは良くないのは勿論知っている。だけど、どうしても気になって仕方ないのだ。
…もう迷っても仕方ないので見てしまおう。おい、と心の中で自分にツッコミを入れつつパラパラとページをめくっていく。
『4月6日 今日はアカネちゃんと雨宮さんが謎すぎる話題で喧嘩してた。お腹が痛くなるくらい笑ったし、珍しく紙を貼っててもわかるくらいお兄ちゃんも笑っててちょっと嬉しかった。』
…めちゃめちゃ字、キレイじゃん…どこが見せれない字だよ、と思いながらまたページをめくっていく。
『1月6日 今日はとても寒かった。』
急に一文で終わる日記。え、何?何があった?と思いながらもう一度読み返す。どうやら1年前の1月6日の日記のようだ。基本的に今まで書いてきたの全部が入っているすごく大きい物なのでとてもわかりづらい。
そしてまたページをめくる。今度開いたのは約2年前の1月22日だった。
『1月22日 兄さんが行方不明になった。今日は気温が低くてすごく寒い。無事だといいな。』
………あれ。急に日記の口調が変わった。新しいものから見ると、いつも妹が話すときとそう大差ないのだが、何故か淡々とした文になっている。それに、字の感じもだ。いつも丸めだが整っている字を書くのに、この辺は書き殴ったような雑な印象を受ける字である。
いつもとの違いを感じながらもう一つページをめくる。
『1月23日 今日も兄さんは見つからなかった。一体どこに行ったのだろう。今日もとても寒いので、兄さんが心配でならない。』
…………………………………………
『1月24日 今日も、兄さんは見つからなかった。かわりに、1つのしらせがはいってきた。にいさんが、しんだ』
…書きかけのままだ。紙には、涙が落ちたのであろう、丸いシミがいくつができている。
何故か俺の手はさっきまでめくっていっていた方と反対にページをめくり始めている。
『6月13日 今日は雨が酷かった。トラックに轢かれそうになったけど、兄さんに会えてよかった。』
ああ、そうか、あのとき、俺は……僕は、妹は…
『…おにーちゃん?』
後ろからかわいらしい妹の声。
『ねえ、あたしの日記……え、な、なんで泣いて…』
気が付くと、俺は泣いていた。自分でも気付かなかった。
[あ~あ、気付いちゃったか、知らない方が良かったかもしれないのに。]
遠くからよく知った声が聞こえた。
コメント
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好きすぎるんだよ!!!!(クソデカ感情)
まままままままままってノイル君…!?嘘やろ?まじ????? あと小説書くの上手すぎ