コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
風にたなびく艶やかな黄金の色の髪、どこまでも透き通った水色の瞳を細め、片手で持っていた煌びやかな扇子をピシャッと広げ、高笑う…。通称“悪女”として有名な、公爵令嬢であるシルビア・バーレンス。
今日もシルビアはその艶やかな髪を弄りながら、教室の窓側に座っていた。シルビアの近くに来る者はいなく、唯一近くにいる同級生2人も、彼女のご機嫌取りに必死だ。
シルビアが何かを言えば全力で反応し、おだて、褒め、異常なほどに持ち上げる。シルビアはそれすら飽きたのか、窓の外をじっと眺めていた。
「それでですね、シルビア様!あの女ったら、他のお方に色目を使っていらしてですね」
「まあ!本当に懲りないんですね、あの女!」
後ろで何やらピーチクパーチク言っているが、シルビアは一向に気に掛けないまま,窓の外をぼんやりと見ている。
流石に違和感を感じたのか、2人は顔を見合わせた。
「ど、どうしました?シルビア様…何かあったのですか?」
「き、きっとあの女のことですよ。目障りだもの」
あの女と聞き、シルビアは目を細めた。その仕草を見た2人が、怒らせてしまったと不安に顔を曇らせていく。
「……何、貴女達はそんなにも、ソファル様のことが気になっていらして?」
「え、いや…」
「そんなにも目障りならば、本人に言えばよろしいのよ。どうしてそれをなさらないの?」
「で、でも…あの」
「耳障りですわ、少しは黙ってくれないかしら」
「「は、はい!」」
小さくなる2人を見て、まるで子羊のようだとシルビアは思った。
はあっとシルビアはため息を吐く。それと同時に、ビクッと2人の方が跳ねた。
「そんなに怒ってないですわ、だからそんなに気を張らなくてもよろしいのよ」
シルビアがそう声を掛けると、また2人はビクッと肩を揺らす。そして、少し震えた声で「は、はい…」と返事をした。
シルビアはより一層深いため息を吐きそうになるのを、何とか抑えまた外を眺めた。
窓から見えるのは、どこまでも広がる青い空と、無駄に豪華に建てられた校門だ。
「…なあ、今日も機嫌悪そうだよな…」
「俺なんかさ、昨日睨まれてさ…本当怖かったよ…」
「うわ…お前大丈夫か?相手は公爵令嬢だぞ?」
「だ、だよな…俺、なんか怒らせるようなことしたり…」
クラスメイト達のコソコソ話を耳にしながら、シルビアは僅かに俯いた。
♦︎♦︎♦︎
シルビアはずっと1人であった。ずっと、ずっと。まあ、当たり前だろう。公爵令嬢という上の立場にあり、またその外見も吊り目と、相手に威圧を与えるようなもの。
そのせいで、シルビアには友達という友達が誰1人居なかった。そもそも、作れなかったのだ。親は異常に過保護で、シルビアを外に出しがらない。人と会わないようにしていたのが、孤独化を進めた要因か。
「うう…」
ばたんっとシルビアは自室のベッドに倒れ込む。落ちるシルビアの華奢な細い体を、シーツがふわっと優しく受け止めた。
そしてシルビアは枕に顔を埋め、うぅと唸る。
「うう、わたくし…私だって…」
大きく口を開けて、シルビアは叫ぶ。
「お友達が欲しいのですわっ!」
そう!シルビアはお友達が欲しいのだ!
天涯孤独なんて真っ平ごめん、だがしかしシルビア!肝心の友達はまさかの皆無!しかも周りの環境のせいで中々友達が出来ない模様!
詰み!まさしく詰みの状況なのだ!さあ、どうするシルビア!
「うう……こうなったら…自ら動けばいいんですわ!」
涙ながらにそう決意するシルビア。が、シルビアよ忘れてはならない。他人と自身に出来てしまった溝はそれはそれは深く、広いことを…。が、シルビアはそれでも諦めない。
「ええい!何度でも立ち上がってみせますわ!めげない!挫けない!負けない!これ大事!」
シルビアは硬く拳を握り、天井にビシッと突き上げた。
「待ってなさいですわ!未来のお友達様!」
結論から言おう。
そんなに動けなかった。
「だってだって!皆様すっごい私から離れていくんですもの!どうやって話しかけろと仰るんですの!?」
可哀想なシルビア。原因は一体どこに。
が、今更の話である。正直、なんとなくこの展開は予想していた。
「くっそですわ!ほんっとうにお糞ですわ!お糞投げつけられたいんですの!?」
はしたない!はしたないぞシルビア!
だが、仕方ない。誰だってそうなるだろう。
「うう、負けない…めげない!挫けない!負けない!ですわ!」
2度目の決意を胸に、シルビアは静かに目を閉じた。
♦︎♦︎♦︎
結果。誰1人友達出来ず。
「何でですのーーー!?」
吊り目お嬢様、シルビアの奮闘はまだまだ続く…。