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サイド ユメ
「はぁ…………」
家に、帰りたくございませんわ。
あんなこと、レンに話さなければよかったですわ。
嫌なことしか、思い出しませんもの。
「……これで、放っておいてくださると少しは話した価値があるんですけど」
不意に、ドンっと誰かとぶつかりました。
「?!」
「あっ、ごめん!君、大丈夫?」
ぐらりと傾いた体を支えたのは、私が、よく、聞いたことのある声をしていました。
「?!ットトトトトト、トk……ウムッ!!」
「い、一応プライベートだからね。あんまり大きな声で叫ばないで貰えるかな?」
コクコクとあたくしは頷くことしかできませんでした。
だって、だってだってだって!!こんなことが現実でありえるなんて、思ってもいませんでしたもの!!
生きててよかったなんて、初めて思ったかもしれないですわ!
「えっと、いつもライブに来てくれてる子だよね?名前は?」
!しかも、あたくしのことを覚えていてくださっていますの?
「あ、あたくしは横山 夢芽(ヨコヤマ ユメ)といいますわ」
「ユメちゃん、か」
サイド トキ
やっぱり、レン君が話してた子と同じ子だった。
「いつも、悲しそうな顔で僕の歌を聴いていたから、気にしてたんだ。僕でよければ話、聞くよ?」
「っ…………!!あたくし、あたくしは……」
ユメちゃんが話してくれたことは、どれもこれもレン君から聞いた話しだった。
けれど、本人から語られる話は、体験した苦悩が滲み出ていた。
……この子は、この年で、どれだけ傷ついたのだろう。
「ユメちゃん。僕の心を読んでみて」
「?…………!!」
ユメちゃんが見ているのは、僕の細かい仕草だ。
だったら、その一つ一つの存在感を限りなく消せばいい。少なくとも、僕にはそれが出来る。
「心が、読めませんわ……!」
ユメちゃんは、声を弾ませて泣きながら笑った。
僕は、その背中をトントンと叩くのだった。
「僕はユメちゃんを化け物とは思わないから。ユメちゃん自身を見てるから」
「嬉しい、ですわ。周りにも、トキみたいな人がいたらよかったんですけど……」
「いるよ」
キッパリと僕は断言する。
「気づいていないだけで、ユメちゃんのことを見てる人はいると思う」
少なくとも、僕はそんなレン君のことを知っている。
「心の声に囚われたら駄目だ。自分を知って欲しいなら、他の人のことも見てあげて」
「難しいですわね……」
「きっと、すぐわかるよ」
僕はそう言って微笑んだ。
だから、ユメちゃんも、モンダイジ団に入ってみればいい。
伝わることのない心の奥底で、僕はそう思った。