捨てられていた君

あのまま寝てしまったアイツをベットで寝かせたためソファで寝た。当たり前だが身体中が痛い

時計を見るともう9時を過ぎていた

スマホを見るとまろと後輩2人からLINEが入っていた

まろからは体調不良だと伝えたという旨ともし何かあったらりうらにも事情を話してあるから頼っていいとのこと

ほんまに気の利く同僚をもったものだ

後輩2人からは体調の心配と2人で看病いこうか？と書かれていた

正直うるさくなる気しかしないので気持ちだけありがたく受け取っておく

かわいい後輩には今度昼飯でも奢ったろかな

それより今はアイツだ

起き上がって背伸びをする

まずはアイツを風呂に入れよう、そしてあのやせ細った身体なんとかせなあかんな

そんなことを考えれながら寝室のドアを開ける

ベットを覗くとそこには今だにすやすやと気持ちよさそうに寝ているアイツがいた

申し訳ないが明日には仕事に戻らねばならない、そのためには今日中にコイツが暮らす基礎を整えてやらねば

どこかに家はあるんだろうがまずは精神的に落ち着かせてやるべきだ

しばらくはうちに住まわせようと決めたのは昨日、というかほぼ今日の夜中だが

なぁ、おい、起きろーーもう朝やで

んぅ〜…

昨日はあんなに警戒してたのに今となっては安心しきった様子で寝ている。こんなんでええんやろか

警戒されるんも悲しいが無防備がすぎる。絶対せんけどタチの悪いdomやったらどうなっていたことか

はぁ〜しゃあねぇなぁ

ﾊﾞｻｯ

掛け布団を一気に引き剥がす

んぁ！？

すると面白いくらい驚いて跳ね上がった

んふ笑おはよおさん、もう朝やで

一瞬ビクッと怖がったが、俺だとわかると身体の力が抜けるのがわかった

なぁ、俺悠佑っていうんやけどお前の名前は？

コテンと首を傾げる

聞き取りづらかったやろか

な、ま、え

一音一音区切って言ってやるとやっとわかったのか嬉しそうな顔をして

おえ、なぁこ！

となんともわかりづらく教えてくれた

本人も違和感を覚えたのかモゴモゴと口を気にしている

昨日のsubdropの後遺症だろうか、意識もはっきりしてるし声を出せているから一時的なもんなんやろうけど

んー、なあこ？

わからないので尋ねてみる

するとブンブンと勢いよく頭を振る

そない降って頭痛くならへんのやろうか

なあこに発音が近いものを探す

考えていると不思議そうに顔を覗き込んでくる、心配させてしまったやろか

もしかして、ないこ？

そう尋ねるとわかりやすくパァっと嬉しそうな顔をして首を縦に振る

なんやこいつポメラニアンみたいなやつやな

よろくしな、ないこ。俺は悠佑、ゆ、う、す、け、言える？

ゆ、ゆう…？？

確認のために言わせてみるとちょっと言いづらかったらしい

じゃあ、あにき、あ、に、き

あ、い、き！

自信満々に言ってきたがちょっと違う

まあ、ほぼ問題ないやろ

じゃあないこ風呂に入ろなぁ、お、ふ、ろ

同じようにわかりやすく言ってやる

するとビクッとして怖がった

そらあんなに傷があったら滲みるよな

痛くないで、身体、きれいにしよなー 終わったらご褒美やるで、ご、ほ、う、び

ご褒美という単語に惹かれたのか俺の服の裾を少し摘むないこ

ええこやね、と頭を撫でてやると嬉しそうに笑った

ここからが大変だった

夜に応急処置をした身体中から絆創膏やらなんやらをとると痛いと大泣きし、お湯をかければ滲みるのかこれまた大泣きした

身体を拭くときもできるだけ傷に当てないように気をつけた

今は服も着てソファで傷心中だ

痩せっぽっちなないこになにか食わせてやりたいが、体が受けつけない可能性もあるのでまずは食べやすいうどんから

大騒ぎできる元気があるならお粥ではなくそこそこ腹にたまるものでも大丈夫だろう

ないこ、ご飯やで〜

そう声をかけるとさっきまでウジウジしていたのが嘘のように元気になる

テーブルの上に器をのせると嬉しそうに座った

ことん、と箸を置くと両手を合わせて

いたらきます！！

と相変わらず舌っ足らずに言った

箸を渡したがフォークのほうが良かっただろうか

箸を頑張って使おうとするないこを見守る

案の定苦戦していてこのままではうどんが伸びるどころか日が暮れてしまう

キッチンに戻ってフォークを持ってくる

ほい、これ使いいくらかましやろ

あいあと！！！

元気にお礼を言ったないこはその後頑張ってフォークを使ってうどんを食べきった

こうも食いっぷりがいいと作りがいがあるというものだ。今度は何を作ってやろうか