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ヒラヒラと衣が飛んでゆく様はまるでこれから起きる男達により運命が決まっていくリーシの人生を表すかのように儚く舞っていった、
(顔を..見られてしまった!)己の恐ろしいほどの美しさをこの頃にはリーシも自覚していた、
リーシは衣を拾う事なく子供達を連れて急いで村のある方へと走り去った
なにもかもが一瞬の出来事だった
ザッハは魂を抜かれたように呆然とし、後に続く側近達もただただ天女を見たかのように呆気にとられていた、
「あの者の後を追うぞ」
ザッハはリーシが走っていった方へと馬を走らせた
こうしてリーシはレンニー国最強武将であるザッハに身染められた形で農民から大将軍の妻へとなり婚礼の儀にて大勢の人間にその美貌を知られてしまい、瞬く間にレンニーの宝石、カンレイの宝石と呼ばれる事となる、
ザッハとの結婚生活は短いものであった、ザッハが不覚にも敵国の罠にはまり命を落としたからだ、
大将軍であったザッハの葬儀にはカンレイ全土の国々の要人が参列した、
参列者が脇を固める中馬車が到着し、中からよろめきながらリーシが降りた
葬儀にも関わらず参列者から悲鳴のような声が上がる
「あれがレンニーの宝石か!なんという美しさ!」
男達は皆、誰しもがこの宝石を自分のものにしたいと欲望を抱いた
そしてその参列者の中にいた一人がカンジュ国のケイシ大将軍だ、
(なんだこの響めきは..ザッハの妻リーシか..)
少し茶味がかった黒髪を一つに束ね、凛々しく綺麗な顔をしたケイシはこれまで女にさほど興味はなかった、無論美青年にも興味などなかった戦に明け暮れカンジュ国を強国にのし上げる事こそが生き甲斐だった
(カンレイ全土の宝石か..)
フッと可笑しく微笑みながら響めきの起こる方を見た
(!)
ケイシは全身に稲妻が走ったかのような衝撃を受けた、侍女に支えられながらか弱く歩くリーシの姿を見た瞬間、ケイシは命懸けの愛に落ちた
(俺は必ずこの者を妻とする)