話は続いておりません。別の話として見てください。
出てくる人↓
青井らだお
成瀬
ネル
猫マンゴー
※死ネタ
俺には感情がない。
別に全部の感情がない訳では無い。
ただ俺は悲しいという気持ちがなかった。
親戚が死んだ時も泣けなかった。
親が死んだ時も泣けなかった。
ただ俺は親の死んだ顔を見てるだけで涙が出てこなかった。
あ、こんなに簡単に死ぬんだってそう思った。
皆泣いてた。
泣かない俺を見て皆気味悪がってた。
周りの人から薄情者と呼ばれてきた。
警察になった俺も泣けなかった。
犯罪が多いこの街の警察はどんどん死んでいく。
仲間が死んでいっても俺は泣けなかった。
誰かが死ぬのなんて当たり前で運が良ければ重症、もっと運が良ければ軽傷、無傷で済む程度だった。
上手い人だけ残る。
そんな世界だった。
だから俺は必死こいて色んなことやった。
真面目に仕事していたら何とかここまで来ることができていた。
泣けないだけで感情はある。
これ以上人を死なせたくないという気持ちを抱えながら仕事をした。
成瀬「らだお〜!」
らだお「なにー」
そんな中出会ったのは成瀬だった。
どうせすぐに死んでしまうだろうと思ったが実力があり生き残っていた。
成瀬「今日あんま犯罪おこんないらしいから休憩してていいって〜」
らだお「了解〜!」
猫マンゴー「成瀬〜らだお〜ご飯食べいこ〜!」
今来たのが次にであったマンゴー。
マンゴーは本当になんでも上手くて実力がある。
いつもこんな感じで会話をしている。
成瀬「うん!いいよー」
らだお「俺もいいよ」
返事を返し俺たちはご飯を食べに行く。
こんな感じで時間が過ぎていく。
働いて会話をしてご飯を食べて、そんな日々が続く。
ある日成瀬に聞かれた。
成瀬「らだおってさ泣いたことあんの?」
らだお「ッ!!」
あまり人に聞かれたことがなかったから俺は少しびっくりした。
俺の反応を見て成瀬は焦ったのか
成瀬「いや別に何か言えない事情があるなら言わなくていいし単純に気になったから」
らだお「…俺、泣けないんだよね」
別に言えないことでもないし俺は素直に成瀬に伝えた。
成瀬「泣けない?」
らだお「うん、ここに来てだいたいの人が死んでくでしょ?俺、死んでくの見ても泣けなかったんだよね、」
成瀬「そっか、」
成瀬「それって、」
成瀬は俺の返答を聞いて少し戸惑っていた。
成瀬「いや、なんでもない」
何故か成瀬は言葉を止めた。
まぁそこまで気にならないから理由なんて聞かない。
次に成瀬は聞いた。
成瀬「じゃあ嬉し泣きとかも無いって事?」
そんなこと考えたこと無かったけど確かなかった気がすると思い俺は答える。
らだお「そういえば、そうかも」
成瀬「じゃあ俺が嬉し泣きでらだおのこと泣かせて見せる!笑」
元気づけるためか成瀬は笑顔でそういった。
俺はその言葉を聞き少し嬉しかった。
気味悪がらないで聞いてくれたのが嬉しかった。
らだお「絶対無理だよ笑」
俺は笑顔で冗談っぽく言う。
成瀬「俺が1番最初に泣かせてみせる!笑」
らだお「がんばれぇ笑」
そんな話をした。
成瀬は色んなことを俺にした。
俺が嬉し泣きできるようなびっくりさせて泣けるようなものを俺にしてきた。
それでも俺は泣けなかった。
でも俺はいいと思った。
成瀬の笑顔を見れれば泣けなくてもいいんじゃないかって思った。
数ヶ月経った頃だった。
成瀬「大型きたって〜」
らだお「りょーかい〜」
俺たちはいつものように犯罪が起こった場所へ行く。
下手なやつほど死んでいく。
上手いやつほどここにのこる。
長年やってると顔見知りしか居ない。
大型が来た場合大体先輩方が先に入り様子を確認、その後に俺たち後輩が犯罪者を殺したり、捕まえたりする。
いつもマンゴーが大体やってくれる。
今日は前線にマンゴーと成瀬と俺が入ることになった。
長年やると当然のように実力が上がる。
バンッバンッバンッ
抗戦が始まった。
当然犯罪者も銃を持っているので撃ち合いになる。
殺すか殺されるかの二択しかない。
俺たちは今まで培ってきた実力を元に銃を撃つ。
バンッバンッバンッ
バンッバンッ
マンゴー「3人やった」
らだお「2人やった、あと何人?」
成瀬「あと3人」
そんな報告を受けながら俺たちは仕事をする。
最後の3人も難なくやり俺たちは帰ることにした。
成瀬と俺は血痕と武器の回収。
マンゴーはネル先とナツメさんと先に帰って行った。
他の人も皆「疲れたぁ〜」とか言いながら帰っていく。
成瀬は血痕を、俺は武器を採取した。
その時は突然訪れた。
バンッ
成瀬「ッ、」
らだお「成瀬ッ!!」
成瀬「フッ、グッ…グハッ、ゴホッゴホッ」
らだお「ッ」
成瀬が銃で撃たれた。
突然の事で俺はパニックになる。
でもすぐに身を隠し敵の位置を確認する。
まだ残っていたのか、人数確認をしっかりするのを忘れていた。
成瀬の方を見る。
腹の部分から血がどろどろと出ていた。
らだお(早く、早くしないと、成瀬がッ)
俺はすぐに敵を見つけ銃を撃つ。
バンッ
いいところにあたり敵は死んだ。
俺は相手を倒し成瀬のところへ走って向かう。
そしてすぐに応援と救急隊を呼んだ。
らだお「成瀬ッ!!」
成瀬「らだ、お、ッ」
成瀬の腹から血が溢れ出していた。
俺は急いで手で抑える。
それでも血は止まらない。
俺の手がどんどん赤く染まっていく。
らだお「成瀬、血が、ッ」
成瀬「こりゃぁ、ッゴホッダメかもなぁッ、笑」
成瀬が少し喋ると口から血がでてきた。
らだお「ぁあ、だ、だめ、死んじゃ、だめッ」
成瀬「ら、だお、よく、聞け、フゥーッ、ッ」
らだお「だめ、喋っち、だめ、血が、止まんなッ」
俺は焦る。
多分これはやばい。
喋ると血がまた出てくる。
死んじゃう。
まだ救急隊は来ないのか。
成瀬が死んじゃう。
俺はそのことだけで頭がいっぱいだった。
成瀬「らだお、ハァーッハァーッ、今後、お前ッ、が、ゴホッ、泣けなくても、ッ大丈夫、フゥーッ、皆、ら、だおのことッ好きだから、ハァーッ、」
らだお「もう、喋っちゃ、だめ、死んじゃ、ッ」
成瀬「俺は、ッ、お前のそばに、…」
突然成瀬の意識が途絶えた。
らだお「成瀬ッ!!、やだ、やだ、成瀬ッ起きて!!、ねぇ!!、ッ…」
そんなこと言っても成瀬は起きない。
俺はただ成瀬の体を揺らす。
成瀬の声が、成瀬の笑顔がもう見られない。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
らだお「ぁあ、あ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ、」
俺はただ叫んだ。
こんな時でも俺は泣けなかった。
叫ぶ声と俺の汗、手についた成瀬の血、
喉が痛かった。
どうしても泣けなかった。
涙の代わりか冷や汗が出てきた。
ただ、叫ぶことしか出来なかった。
そっからはあまり覚えてない。
成瀬が死んだ後、救急隊と警察がきた。
成瀬を抱きしめ叫ぶ俺をネル先や、ナツメさんが剥がそうとしていたらしい。
ネル先とナツメさんは泣いていた。
救急隊は成瀬に応急処置をし、心臓マッサージをしていた。
死んでるのに、間に合わないのに、生き返らないのに、心臓マッサージをしていた。
皆泣いてた。
成瀬は運ばれた。
これは後から聞いた話だった。
後日、成瀬の葬式が行われた。
死んだという感覚がまだないまま行われる葬式は変な感覚だった。
静かな葬式。
鼻をすする音だけが響いていた。
その音だけでみんな泣いているのだと気がついた。
泣いてないのは俺だけだった。
泣けない俺は下を向くことしか出来なかった。
火葬が終わったあと準備していた墓にいれる。
成瀬の墓に礼をする。
その後は皆静かに帰って行った。
俺は1人残った。
ぼーっとすることしかできなかった。
そしたら後ろから声をかけられた。
ネル「らだおくん、これ」
急にネル先が俺に言った。
らだお「…はい?」
俺の前にはひとつの紙があった。
ネル「成瀬君が残してたみたい。らだおくんにだって、私にもあったよ、お世話になった人達に書いてたみたい、」
らだお「ありがとう、ございます」
ネル「じゃあ私はこれで失礼するよ」
らだお「はい、」
ネル先は俺に遺書らしき物を渡すとすぐに去っていった。
ネル先の目は赤くなっていた。
多分泣いていたのだろう。
俺は成瀬からの手紙を読むことにした。
拝啓 青井 らだおへ
いつ死ぬか分からんから一応書いとく。
こんなの書くの俺らしくないけどな。
らだおは泣けないって言ってたよな、でもそれは違うよ。
本当はしっかりしなきゃっていうらだおの責任感の重さと友情や愛情、その感情が分からないだけなんじゃないかなってずっと考えてた。
らだおは優しいから、しっかりしてるから、皆にそう思われてるから、泣けなかったのかなって。
泣いていいんだよ。
泣くことは悪いことじゃない。
もっと人を頼れ、お前は皆から好かれてるよ。
大丈夫、仲間だから、そいつらから愛情を貰え、友情を築け、俺が居なくなっても大丈夫なように、
俺はらだおのこと好きだったよ。
他の奴らから、らだおが愛情を貰ってるのは嫌だけどそれでも俺は嬉しい。
沢山泣いていいよ。
皆離れてかないから。
呆れないから。
うざいなんて思わないから。
今後お前が嬉し泣きやただ泣いてるとこ俺は見れないかもしれない。
他の奴らが俺より先にお前を泣かしてるかもしれない。
悔しい。
俺がお前を泣かせたかったわ。
お前が嬉しくて泣いてるとこ見たかった。
泣いて泣いて感情を表に出せ。
自分を苦しめなくていい、大丈夫だから。
書くことはこんぐらいかな、
らだお、俺が死んだとしてもお前は死ぬな。
俺の後をついていこうとするなよ。
生きろ。
生きて、楽しめ!!
じゃあな!
俺はお前のそばにずっと居るから。
成瀬 力二
ポタ、ポタ
らだお「あ、れ?、なんだ、これ」
成瀬からの手紙を読み終えると同時に俺の目から大粒の水滴が地面に落ちていく。
らだお「泣いてるのか、俺、」
ポロポロと落ちる水滴に俺は困惑する。
でもこれが泣いてるってことなのかとすぐに理解する。
らだお「ぅ゙ッ、ゥ、ぁあ゙ッ、ぁあああッ、」
俺は言葉にできない気持ちを泣きながら叫ぶことで言葉にした。
言葉にしたと言っていいのか分からないけど、でも俺の叫びはきっと今までの気持ち、全部がこもってる。
俺は成瀬の墓の前で言う。
らだお「成瀬、俺、ッお前のこと好きだったッ」
らだお「いつも優しくて、泣けない俺を気味悪がらないで、っそばにいてくれたお前が俺は好きだったッ」
らだお「俺は、ッお前からたくさんの愛情を貰ってたよッじゃなきゃ泣けないからッ」
らだお「ありがとッ成瀬、ありが、とッ…」
俺は泣きながらそういう。
ただ1人、悲痛の叫びが響いた。
喉が痛いのも忘れていた。
俺は泣いた。
目の前は濁ってぼやけて何も見えなかった。
葬式をする日には明るすぎる空と少し冷たい風。
温かくない墓。
触ると俺の体温だけが手に残った。
らだおくんの泣き声がきこえる。
ネル「嬉し泣きで泣かせろよ、ばかッ、」
まだ帰っていなかった私はらだおくんにバレないように隠れていた。
らだおくんの精一杯の想いが私にだけ届く。
もう居ない彼への想いが私にだけ届く。
嬉し泣きで泣かせたいと言っていた彼はきっと悔しがっているだろう。
こんなんで泣くな、なんて思ってるだろう。
でもね、多分私も泣いちゃうわ。
成瀬くんがいなくなるの悲しいもん。
成瀬くんがらだおくんのこと好きだったの私知ってたよ。
らだおくんが成瀬くんのこと好きだったって知ってたよ。
でも伝えなかった。
2人には2人の口から言って欲しかったから。
私も悔しいよ。
悔しい。
らだおくんの気持ちちゃんと届いてるかな。
ちゃんと見とけよ。
らだおくんのこと好きならちゃんと見守ってね。
私はらだおくんにバレないように1人帰る。
気持ちの整理がつかない。
それでも前を向かないといけない。
きっと時間が解決してくれるから。
あれから数年、俺は命日の時は毎回成瀬の墓に来ている。
みんな大分本調子に戻り仕事をしている。
俺は墓に水をやる。
らだお「成瀬、お前は知らないと思うけど命日の日は本署のみんなでパーティーしてやってんだよ?、成瀬が1人で寂しくないようにって、
それに犯罪も少なくなったんだ。今は警察になっても死ぬ人なんていなくなってきた。」
らだお「俺も嬉し泣きで泣けるようになったよ。感情がわかるようになった、」
だんだん気持ちが込み上げてきて涙が出る。
もういないとここに来ると実感する。
いつかぱっと現れて「おはよっ」って言ってくるんじゃないかって思ってしまう。
もう会えないのに。
らだお「成瀬、そばにいろよ、ッ」
最後にそういう。
すると風がふわりと吹き髪が揺れる。
成瀬「ずっといるわ笑ばか笑」
らだお「ッ?!」
成瀬の声が聞こえた気がした。
笑ってる成瀬の声。
そういえば今日って命日だったな。
きっと神様が会わせてくれたのだと俺は思う。
らだお「笑笑」
俺は笑って返事をする。
成瀬がいないこの街を過ごしていかなきゃならない。
成瀬への想いは多分これからも変わらないだろう。
好きだという気持ちは大切に大切に心の中に取っておこう。
君がそばにいてくれるから。
end
コメント
1件