テラーノベル
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正式にOriensとして活動を始めてから早2ヶ月。全員、チームを組んだのは初めてだったが、多くの人に支えてもらいながら一歩ずつ、Oriensという名前を覚えてもらえるようになっていた。
「マナだ!マナー!!!」
「おー!今日も元気やな!きぃつけて帰りや!」
特にチビッ子からは面白いお兄ちゃんたちという印象のようで、下校中に挨拶をしてぶんぶんと手を振ってくれるまでになった。
「ほんま声大きくて、こっちまで元気になってくるわ」
ニコニコと笑い、手を振り返しながらマナが言う。そうだな、と返すと遠くからリトだー!!!という声がしたので、俺も手をあげて返した。
「……ほんま、大学生のアイツらにも元気分けてやりたいわ」
ぽつりと呟いた言葉はここにはいない、今ごろ課題に苦しんでいるであろう二人に向けたものであった。
最近ウェンは課題やらなきゃ!!!とダッシュで帰宅することが多かったので、一段落つくまで見回りの回数を減らすよう予定を変更した。何かと自分で解決しがちなウェンが素直にありがとう、と言ってきたので本当に忙しいのだろう。
「テツ、今なにしてんのかな」
俺の言葉に、マナも目を伏せた。
テツも大学生だ。課題の話を聞いたこともあるし、テスト前にはうっすらと隈が見られた。しかし、俺たちはそのあたりを詳しくは知らない。
ふらりと拠点にやって来たかと思えば、すぐに見回りに行ってしまうし、遊びに誘えば授業があるという。
「……俺の、考えすぎやったらええんやけど、」
テツ、俺たちのこと避けてんのかな。
小さく落としたその言葉は、いつものマナからは考えられないほどか細い声だった。
そして、俺も常々思っていたことでもある。テツは、明らかに俺たちと居ることを避けているように見えたから。
最初はただの人見知りだと思ったけれど、未だに目は合わないし、アイツの好きなものも知らない。けど、無理に仲良くしてほしいわけでもないのだ。 心当たりはないが、何かしてしまったのかもしれない。
そうじゃなくても人には合う合わないがあるから。挨拶は返してくれるし、見回りをサボったこともない。ヒーローとしては、何も悪いことはない。
でも、と拳を握りしめる。
「……アイツさぁ、時々すげぇ寂しそうにするんだよ」
俯いていたマナが顔をあげる。
「遊び、アイツが断るときもそうだけど、一緒に見回りするときとかにさ。なんていうか、バツが悪いような寂しそうな目で背中じーって見られるの。」
もちろん、その目はすぐに離されてしまうのだが。気のせいだと片付けられないくらいのそれをぶつけられるたびに、子供みたいだなと何となく思う。
こっちにこないで、と手をハネるのに近くにいてほしい、と駄々をこねるような、
迷子の子供のような顔をするのだ。
でも迷子だと認めてしまったら涙が堪えられないから、必死に歯をくいしばってじっとこちらを見つめてる。
「……どうにかしてやりたいって思うのも、テツにとっては俺の自己満に付き合わされるようなもんやんな」
「俺は今んとこ、見回りですら一緒になったことないから」
キリンちゃんが、大丈夫?というように手を伸ばしてマナの頭を撫でた。
その行動の愛らしさに、無意識に固くなっていた肩の力を抜く。
ずいぶんとらしくない顔をする同僚の頭をそのままわしゃわしゃとかき混ぜた。
「自己満じゃねーって!俺はマナのそういうとこ、思いやりって呼んでんだけど?」
ぽかん、と目を見開く顔を間抜け面と笑う。指をずいっと近付けて、それに!と続けた。目を白黒させたままのマナの手を持ってきて自分の手とキリンちゃんの蹄と重ねる。
「なんかするのに理由が必要なら、俺らにはあるじゃん。大義名分!俺たち~?」
間抜け面だったマナもようやく気が付いたようで、パッと顔を明るくし声を揃えた。
「俺たち~オーリエーンス!!!」
重ねた手を天に上げ、チラリと顔を見る。その笑顔にああ戻ってきた、と安堵した。
「せやんな!仲間やし、ヒーローにお節介はつきものっていうもんな!」
ウェンにも話してみる、ありがとなリト!すごいヒーローやわほんま!
キラキラと蜂蜜のような輝きを持った瞳が青空を映す。再び見回りを再開した二人の歩みは今までよりもずっと確かなものになっていた。
少し前から、リトくんによく遊びに誘われるようになった。ウェンくんは何かと手料理を拠点で振る舞ってくれるし、それを皆で食べるのはもはやお決まりの流れである。
気を、使わせてしまっただろうか。
リトくんは遊びを断るたび少し悲しそうな顔をして去っていくし、流石に帰るに帰れず手料理に手をつけた僕をマナくんやウェンくんがなにか考えるように見つめていた。
彼らには悪いことをしている自覚はある。
きっと優しい彼らのことを悲しませているのだということも。
それでも、これ以外に方法はなかった。
デバイスを握るたび、白衣の人間を見るたび、未だに手が震えて呼吸がおかしくなる。キラキラとした彼らには、何も関係のないそれが荷物になると思った。僕のことでヒーロー活動が鈍るのは絶対にダメだ。
だから、ちょっと感じが悪くても距離を置かなくてはならない。僕が僕であるためにも。
「テ~ツ!」
拠点のベランダで煙草を吸っていれば、ウェンくんに肩を叩かれた。煙が彼のもとにいかないよう、半端な長さのそれを携帯灰皿へ押し付ける。
「どうしたの、ウェンくん。拠点いるのも、何か用事あったっけ?」
「用事は特にないけどね、今日本部の人から話聞いて、テツに言いたくなったから」
時間ある?もう見回りおわったっしょ?と聞かれたので素直に頷く。じゃあ、と手を引かれ気が付けば中華料理屋に来ていた。
そんな気はしたよ!逃げられなかったよ俺のあほ!!!
「せーのがさんし!KP~!!!」
いってきまーすとハイボールを喉に流し込む彼にいってらっしゃい、と返しながら餃子をつつく。久しぶりの外食は油が身体中を巡る感覚がして、幸福度が高かった。
「それで、話って?」
「そうそう、それがさあ近々西のヒーローとの顔合わせがあるらしいんだよね」
「えっ、西?」
「わかる、僕もビックリした~東と西めっちゃ仲悪いのにね」
詳しく聞くと、西のヒーローにもOriensと同じく四人で活動しているDyticaというチームがあるらしい。チーム結成も同じ時期で、所謂同期というものらしい。
同期チームが東と西の橋渡し的な立ち位置になるのが目的だってさ、と話すウェンくんに炒飯を食べながら相槌を返した。
そこからは段々と世間話に移り、最近したゲームとか、キツかった任務の話になっていった。僕の話をウェンくんはニコニコとしながら聞いてくれて、酒のせいかいつもよりも口がまわった。
「じゃあねー!テツ、また飲み行こ」
「うん、またね。今日はありがとう、楽しかった 」
別れ際、上機嫌なウェンくんにそう返すと目を見開いて固まった。変なこと言ったかな、と目を泳がしていると元気よくうん!と言われる。何でだかさっきよりもご機嫌なウェンくんの笑顔が眩しくて、やっぱり違う世界の人だな~と思いながら帰路についた。
そして、ウェンくんの言った通り、その一週間後にDyticaとの顔合わせの日がやって来た。
「先に資料みたけど皆イケメンすぎて困るわ~ほんま!!!」
「マナはライさんとはもう会ったことあるんだっけ?」
「そう!たまたまライが東に来てたときにな~」
伊波ライという黒髪にライトグリーンのメッシュが映える美少年、西では珍しいメカニックという職業についていると、資料に書いてあった。マナくんが言うには東にはよく機械の部品を買いに来ているらしい。
叢雲カゲツ、小柳ロウ、星導ショウという名前らしい彼らも一目みた最初の感想は皆すごい顔がいい…であった。
ヒーロー協会は面食いなのかもしれない。
楽しそうに話すマナくんの話に耳を傾けながら、ゆらゆらと揺れだした僕を見てウェンくんが肩を叩く。
「テツ、さてはニコチン切れたな」
ニヤリと笑って指を指され、Dytica来る前に吸ってきたら?と言われたのでお言葉に甘えて席をたった。
カチカチと100均のライターで煙草に火をつける。ガスが少なくなってきたのか動きが悪くて、ニ本目は吸えそうになかった。
肺いっぱいに煙を吸い込む。
染み込ませるように深く息を吐けばゆらりと紫煙が風に揺れる。しかし、それは空気に混じることはなく、不気味に動き固まった。なーん、と紫色の猫が鳴いた。
ぼんやりとソイツを見つめていたが、ここが東本部の喫煙所であることを思いだし、まずい!!!と急いで踏みつけた。
俺の命でもある猫は、ゴーグルの表示を悲しげに/ \と変えたあと、素直に煙となって消えた。ただの残機といえど、焦って動物の形をしたものを踏みつけたことに罪悪感を覚える。
「……ごめんね」
理解されるはずのない言葉を呟き、顔をあげる。
そのときだった。
ヒュッと何かが風を切る音がして、次に瞬きをしたときには頬に赤い線が走っていた。たらり、と遅れて血液が肌を伝う。
目を横にやれば、喫煙所の壁に真っ黒な何かが刺さっていた。
「お前、なにもんや」
それがクナイだと認識できたのは、どこからともなく降ってきた白い髪の少年が忍者のような格好をしていたことと、その少年_叢雲カゲツが眼前に件のクナイを突きつけてきたことによるものだった。
佐伯イッテツ
Oriensの皆がぐいぐい来るので申し訳なく思っている。数ヶ月過ごして、ヒーローが嫌いだから近付かないのではなく、彼らに負担をかけさせたくないから、という方向に思考が変わった。
宇佐美リト
佐伯のことを気にしている。ぶつけられる視線とその意味を理解するためによく遊びに誘うようになった。今のところは全敗。
最近の趣味はゲーセン・カフェ探し。
ウェンからテツと一緒に飲んだ!というメッセージを受け取り、ギャルつえーなと笑った。佐伯が押しに弱いことを知った。
緋八マナ
佐伯のことを気にして、チームが初めてのこともあり、少し弱っていた。リトから言われた言葉にストッパーが外れ、よく佐伯に餌付けするようになった。ペラペラな佐伯のことが心配な面もある。
ウェンからのメッセージには、同期可愛い!!!!という気持ちと俺も行きたかった!!!!!という気持ちが爆発した。
ライとは仲良し!
赤城ウェン
佐伯を気にしていたから、自分なりの方法でぶつかり、砕けることなく乾杯した。
佐伯のニコチン切れに気が付くことができる人間。
メッセージアプリのOriens発足前に作られていた[マナリトウェン(3)]というグループに爆弾を投下した。
テツと一緒に飲んだ!という文と共に、顔が赤くなっているテツと、ピースするウェンが映る写真を送った。阿鼻叫喚の返信には[うける]と返した。
叢雲カゲツ
佐伯の眼球の二ミリ先にクナイを突きつけている。
コメント
4件
🤝さんの要素を存分に使ったお話と、彼らしい心情の解像度が高くて全作品にすごく惹かれました>< ほんとに妄想の入口になります。つきみさんの創作力を勝手ながら楽しみさせて頂きます!𑁊^. .^𑁊♩