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私は、子供の頃から本が好きだった。 お母さんに読んでもらった絵本から始まり、児童書、児童文庫、文庫本と変わっていき、今ではジャンルを問わず様々な物語と出会いたいと思っている。
だって本を読んでいる時は、私を好きな世界に連れて行ってくれるから。学校で嫌なことや辛いことがあっても、一時だけでも忘れさせてくれるから。
物語の中では、その世界では、私は変わった子ではなく、普通の子としていられるから。
だから、私は。
傘に当たるポツポツという音は、私の心を穏やかにいてくれるヒーリングミュージックみたいなものだ。
期末テストが終わった七月上旬の土曜日。本来ならみんなで集まってSNS映えスポット巡りをするはずだったけど雨で中止となり、だからこそ私の足取りは自然と速くなっていた。
自宅から徒歩十分で来れる商店街はいわゆる下町というやつなのか近隣住民に好かれ、八百屋さん、魚屋さん、雑貨屋さん、など現在も細々と経営していると店のおばさんたちが話していた。
若い人向けの場所ではないからねと言っているけど、私は変わらずここに来て、学校に必要な雑貨を買っていて、そして。
見慣れた、こじんまりとした建物。
商店街の奥地に立地されている白い建物は少し古くなってしまったけど変わらずここに存在してくれて、差してきた傘を畳み、金属の傘立てに差すと準備オッケー。
逸る気持ちを抑えつつ自動ドアの前に立つと、ウィィィンと開き、私の気分は最高潮まで高鳴った。
「いらっしゃいませ。……あ、文ちゃん」
「おはようございます」
私に気付き笑いかけてくれる店長さんに、軽く頭を下げる。
子供の頃からお母さんに連れられてお店に来ていた私は、もうすっかり常連で、店長さんに「もう読んだの?」と驚かれるぐらいだった。
息を思いっきり吸うと紙とインクの匂いがして、ああ来たなって感じがする。
本が大好きな私は、その聖地と呼ばれる本屋さんは大好きだ。
棚にビッチリと並ぶ本、平積みされた新刊情報。
その光景はどんな美しい絶景よりも映えていて、私の心を掴んで離さない。
世間の流れとしては、ネット注文とか、電子書籍とか、読み放題サービスを利用しているとか聞くけど、私は変わらず本を買う。
このインクの香り、紙の手触り、偶然の出会い。
それは運命と感じていて、今日も出会いを求めて本屋さんに来ている。
……ただ、そんなこと口にしたら周りはドン引きだと分かっている。
だから一人で、そう思っているだけ。
だけど心で、いつも運命の出会いに感謝してる。
さあ、今日はどんな出会いがあるのだろう?
そう思い一番に行くのは新刊コーナー。この世に生まれたばかりの本たちをウットリと眺め、帯の煽り文に興味を持った本を片っ端から手に取り、あらすじと冒頭を読んでいく。
これ欲しい、あれも読みたい。
そう思うけど、当然ながら時間もお金も有限であり、月に買えるのは文庫本二冊、単行本一冊ぐらい。
中学生の頃はもっと買えていたのにな。
モヤモヤと沸き立つものを首を振って抑え、次に行くのは手書きで『今週のおすすめ』と記載されている掲示板。
これは店長さんの奥さんが本を読み、良かったものを紹介する紹介の場所であり、ここからの出会いも今までに多く、自分では手に取らないであろうジャンルとの出会いもあり、だから本を読むのはやめられないと思わされるほどだ。
どれどれと眺めていると、一つの紹介文で目が止まった。
『小説執筆に青春をかける、女子高校生二人の物語。時にぶつかり、時に語り合い、二人は夢の青春文学賞を受賞出来るのか?』
「執筆……」
私は自分と同世代が主人公の話があまり好きじゃないし、正直青春文学のジャンルは避けている節があった。
だけど、なんでだろう?
私は異様なほど、この物語に惹きつけられていた。
この物語が読みたい。
その一心で足が動いていて、書いてあった棚番号を探すけどなかなか見つからず、売れきれてしまったのかと肩を落とす。
すると気付く。見下ろした先に、その題名と表紙。
二人の女子高生が机に向かって小説を書いていて、その周りには原稿用紙が散乱さていて、一つの物語が出来上がるのにはこれほどの文章を書かなければならないのだと思わせてくれるような表紙絵だった。
『書く理由? そんなものはない。気付けば勝手に書いているんだから』
「……勝手に?」
キャッチコピーに問いかけてしまった私の手は脊髄反射のようにその単行本に伸びていく。
するともう一つの手が、私の手と重なっていた。
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