「ネギ、ばぁさん避けただろ」
「はい」
「お前もそろそろこの世界になれろ」
「え?」
僕と姉御の買い物に付き合い、ショッピングモールに来ていた。僕が避けたお婆さんは人ではなく霊体だった。僕は正直霊体だと分からず避けてしまった。
「お前は今、高校生だがいずれ免許をとり車に乗るようになったら、今のように避けたり、ブレーキをかけるだろう、そうなると避けた先に人がいたり、ブレーキをかけて後続車にぶつけられたり、生きている者を傷つけることになる。」
たしかに姉御が言う通り、不便な体質なのかもしれない。姉御は試着室にはいり、物色しながら僕に警告する。
「姉御はどうやって見分けしてんですか?」
姉御はカーテンの隙間から頭を出しこう言った。
「今の視界に人は何人いる?」
平日の午前中のショッピングモールは閑散としてるのですぐに数えられた。
「4人ですね、店員さんと、女性のお客さんが2人、あと男性が1人です。」
「私には3人しか見えないぞ、男性なんていない。」
「えっ?」
「ここは、ウィメンズのショップだぞ、男性が1人ポツンとしてるのがおかしいと思え、それと季節に合わないあの服装だ。」
「あの人ですよね」僕は入り口付近にいる男性を指差した。
「そうあれだ、指は指すな」
今は姉御にも見えているようだ。
どうやら姉御は見えるモードと見えないモードの切り替えができるようだ。
「どうやってやるんですか?」
「口で説明するのは難しいが、チンパンジーの視覚みたいなものだ」
もっと分からなくなった、チンパンジーとはなんだ。姉御は試着室からでてきてこう説明した。
「チンパンジーが枝から枝に飛び移る時になんでスムーズに伝って行けると思う?」
「わからないです、運動神経ですか?」
「違う、地面と水平の枝しか見えなくなり、飛び移り掴むのに最適な枝のみ見えるようなる。」
「人も、そんな野生の感があり、見えなくていいものは脳がシャットアウトするんだ。」
姉御がいうには、眼球も脳の一部の為、余計な者は瞬時にシャットアウトするらしい。
よく気のせいだったり、人がいたようなとかは脳のシャットアウトが殆どのようだ。
「まずは周囲の人を意識して歩け、そして怪しいと思った時に目を閉じ見えないよう意識するんだ、目を開けるときっとその存在は消えている。これを繰り返せば感覚が掴める」
姉御と出逢ってから霊体というものの恐怖心が薄れてしまっていて見えることを受け入れすぎているのかもしれない。
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