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温泉施設といってもリゾート的なつくりで、エリアのほとんどが水着着用となっている。
ガラス張りの窓から差し込む陽光に水面がキラキラと煌めき、
その反射がサーティーンのアロハ柄を眩しく照らしていた。
私はといえば、一応ビキニの上にラッシュガードを羽織ったスタイル。
ゆらゆらと揺れる光に守られるようにして、体型はしっかりカバーされている。
……そんなね、スタイルに自信があるわけじゃないんで。
隠せるものは全力で隠させていただきますよ。
なにせ、隣に並ぶ方のスタイルが「レベチ」なもんで。
卑屈にならないよう努めながらチラリと横を向くと、バチッとサーティーンと目が合った。
「しっかり上まで締めてよォ。相棒、ちっと気にしすぎじゃねぇか?」
彼はそう言って自分の胸元をトントンと指すと、ジッパーを下げるような仕草をして不敵に笑った。
「……いやぁー、暑くなったら? 脱ぐよ、多分」
我ながら苦しい言い訳だ。
「……んだよ、その『多分』は」 案の定、面白くなさそうな声が降ってきた。
――本当に脱ぐのかぁ? そう疑うような視線が、値踏みするように頭の先から足先まで、
じりじりと時間をかけて流れていく。
「……っ」
その露骨な視線に耐えかねて、私は抱えていたシャチの浮き輪をぐっと引き寄せた。
無言のまま、それを胸元への完璧な盾として抱え直す。
ビニール越しに伝わる自分の心音を、彼に悟られないように。
50mプールにジャグジー、さらに流れるプールまで完備されていて、どこから手をつけるか迷ってしまう。
ひとまずはのんびり過ごそうと、大きなシャチの浮き輪を抱えて流れるプールへ向かうことにした。
「よォし相棒! 今日は一日、この豪華客船『サーティーン号』がお前をエスコートしてやるぜ!」
ゆらゆらと揺れる水面を前に、サーティーンが眩しいほどの笑顔で親指を立てた。
水着姿で、いつになく開放的な格好の彼は、まるで太陽みたいにキラキラしている。
「豪華客船って……ただの浮き輪のシャチでしょ?」
「ハッ、俺様と一緒なら、乗れるもんは何だって豪華客船に変わるんだよ! ほら、ボサッとしてねーで行くぞ!」
彼は私の手をガシッと掴むと、子供みたいな無邪気さでプールの青い水面へと駆け出した。
「……置いてくわけねーだろ。しっかり掴まってろよな、相棒!」
プールでいつもより少しひやりとしていたはずの手が、ほんの少し熱を浮かべて温かかった。