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ありがとうございます! これからが楽しみな予感しかないです!
BUDDiiSの控室は、いつもなら笑い声が絶えない。
撮影の合間には、誰かがふざけて変なポーズを取り、すかさずツッコミが飛び交う。
くだらない話でも、自然と空気がほぐれていく――そんな場所だ。
けれど、その日だけは違っていた。
エアコンの低い唸りが天井から降りてくる。
照明に照らされた床はツヤを保ったままだが、そこに反射する明るさとは裏腹に、空気は重く、張り詰めていた。
ソファの端。
SHOOTはひとり、深く身を沈めるように座っていた。
白いTシャツの裾は膝の上でくしゃくしゃに折れ、ダボついた袖からは骨ばかりの腕が覗いていた。
血管が浮き出たその手は、まるで冷たく濡れているかのように見える。
それでも、彼は笑っていた。
誰かが冗談を飛ばせば、ほんの少しだけ口元を持ち上げる。
目が合えば、うなずく。
けれどそこに「声」はなかった。
無理にでも“いつもの自分”を演じていることに、周囲はまだ完全には気づいていなかった。
“なんとなく”、変かもしれない――その程度の違和感。
ただひとり。FUMINORIだけは、黙ってその異変を見つめていた。
控室の対角線。
ソファにもたれた彼は、じっとSHOOTを観察していた。
笑顔の形だけを保ったその顔に、感情の色がないこと。
瞳の奥に光がないこと。
最近のSHOOTは、どこか“生きていない”。
「SHOOT、お昼どうする? 一緒に出る?」
努めて明るい声を投げかけた。
トーンは軽く、冗談っぽさを混ぜる。
だが、その瞳はまっすぐに彼を見つめていた。
「……俺、ちょっと用事あるからいいや。」
ペットボトルのキャップを回しながら、SHOOTは顔を上げずに答えた。
その声には「拒否」ではなく、「逃避」がにじんでいた。
「最近、ずっとそう言ってない?」
問い返すと、SHOOTの指先がピクリと震えた。
それだけで、沈黙が場を支配する。
ほんの数秒が、やけに長く感じられた。
「たまたまだって。タイミング悪いだけ。」
笑顔が口元に浮かぶ。
だがその笑顔は、人形のように筋肉だけで作られたものだった。
楽屋の隅では、MORRIEがスマホをいじっているふりをしていた。
だが、その指は止まり、目は画面に向けたまま、耳だけが兄としての直感を働かせていた。
鏡越しに見た、弟の背中。
以前は力強かったその身体が、今は影のように小さく、かすれて見える。
ダンスのキレもない。視線が定まらず、どこか遠くを見つめているようだった。
心の奥に、ずっと溜まっていた不安が確信へと変わっていく。
SHOOTは限界だ。