テラーノベル
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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第127話:台風のお見舞いは純金とSP軍団。極まる資本の暴力と造園ロジスティクス
超大型台風が過ぎ去ってから数日。
限界集落の復興作業(オペレーション・クリーンアップ)は、俺の完璧なロジスティクスと、レギュラーメンバーに加わった『高性能農業用重機(体長3メートルの巨大ヒグマ)』の圧倒的なパワーによって、驚異的なスピードで完了しつつあった。
「よし、倒木の撤去は八割方終わったな。次は吹き飛ばされた庭の土の整備と、防風林の再構築だ」
俺が首に巻いたOD色のタオルで汗を拭い、今後の兵站計画を練っていた、その時だった。
ブロロロロロッ……!!
のどかな鳥のさえずりが響く限界集落の山道に、およそこの場所には似つかわしくない重厚なエンジン音が響き渡った。
「えっ……? お兄さん、なんかすごい車が来ましたよ!?」
小春ちゃんが指差した先には、黒塗りの最高級装甲SUV(ベンツGクラス)が三台、砂埃を上げて我が家の庭先へと滑り込んでくるのが見えた。
車列がピタリと停止すると、中から黒いスーツにサングラス、耳には通信用のイヤホンを装着した、筋骨隆々の外国人男性たちが十数名、一斉に降り立ってきた。
完全に『その筋のプロ(SP)』の動きである。
「な、なんですか!? マフィア!? それとも外国の軍隊!?」
小春ちゃんがパニックになり、庭の隅で丸太を運んでいたヒグマが「グルォォッ!」と警戒の唸り声を上げた。
SPたちは巨大ヒグマの姿を見るや否や、サッと懐に手を入れる。
一触即発の事態――かと思われた、その瞬間。
『ミャウ(騒がしいわね。うちの庭で争い事は許さないわよ)』
縁側の特等席で香箱座りをしていた純白の神獣シロが、神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を細め、涼しい声で一鳴きした。
ピタッ。
その圧倒的な神獣のオーラと絶対的階級の前に、巨大ヒグマは「クゥ〜ン……」と瞬時に大人しくなり、SPたちもまた、全員がハッと息を呑んで直立不動の姿勢をとった。
「OH……。アレガ伝説ニ聞ク、絶対的支配者(シロサマ)……!!」
SPのリーダー格の男が、サングラスを外し、シロに向かって深々と、そして恭しく最敬礼を行った。
ジンバルに固定されたiPhone miniの画面では、一千万人のリスナーがこの異常事態にすでに大パニックを起こしていた。
『黒服のSP軍団キターーー!!ww』
『シロ様、ついに国際的な武装組織すらも平伏させるww』
『マフィアもヒグマも一瞬で制圧する白猫(最強)』
リーダーの男は俺の前に進み出ると、ジュラルミン製のアタッシュケースをうやうやしく差し出した。
「マスター・アキヤ。我々はドバイの石油王様、並びにスイスの銀行家様より派遣された『王室専属造園部隊』です」
「……は?」
「台風の被害に遭われたマスターへの『お見舞い』として、銀行家様よりこちらを。そして石油王様より、我々『世界最高峰の造園業者(SP軍団)』を派遣するよう仰せつかりました」
パカッ、と男がジュラルミンケースを開いた瞬間。
真夏の強烈な陽光を反射して、古民家の庭全体が目が眩むような『黄金の光』に包まれた。
「うわっ!? ま、眩しい! お兄さん、これ……っ!」
小春ちゃんが目を細めて叫ぶ。
ケースの中に鎮座していたのは、見慣れた農具。
ただし、その持ち手から先端の刃に至るまで、すべてが『純度99.9%の24金(純金)』で打たれた、特注のクワとスコップだった。
「……純金製の、クワとスコップだと?」
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Akiya! A true sanctuary deserves the highest quality tools! Rebuild the soil with that pure gold!“(アキヤ! 真の聖域には最高品質の道具がふさわしい! その純金で土壌を再建してくれ!)』
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”And I sent my elite landscaping unit! Leave the manual labor to them! Relax and watch!“(そして私のエリート造園部隊を送ったぞ! 肉体労働は彼らに任せろ! 君はゆっくり見ていてくれ!)』
世界中のリスナーが、画面を埋め尽くす極彩色のスーパーチャットと、圧倒的な『資本の暴力』に完全に腹を抱えていた。
『台風のお見舞い(純金製のクワとスコップ)』
『造園業者(完全武装のSP軍団)』
『スケールがバグりすぎてて脳が追いつかないwwww』
だが、俺は純金のクワを手に取ると、深いため息を吐いた。
「……全く。あの銀行家は兵站(ロジスティクス)の基礎を分かっていない。純金はモース硬度が低く、非常に柔らかい金属だ。こんなもので石の混じった土を掘れば、一発で刃こぼれしてひん曲がる。農具としての実用性は皆無だ」
「お兄さん! ウン千万円はする純金の塊に向かって『実用性がない』ってガチのダメ出しする人初めて見ましたよ!!」
俺の需品科としての冷徹な評価に小春ちゃんがツッコミを入れる中、SP軍団……もとい、王室専属造園部隊は、黒スーツの上から『純白のフリル付きエプロン』を装着し始めた。
「マスター、ご安心を。土壌の整備は我々が行います。フォーメーションA、散開!!」
「「「イエッサー!!」」」
SPたちは軍隊さながらの統率された動きで庭に散らばると、純金のクワとスコップを使い(曲がらないように絶妙な力加減で)、恐るべきスピードで庭の整地を始めた。
ヒグマも彼らに混じり、一緒になって大きな岩をどかしている。
屈強なSPたちと巨大ヒグマが、仲良く庭いじりをするカオスな空間。
俺はそれを見届けると、ふぅと息を吐き、定位置であるローデスクの前に座っていつものタッパーを開けた。
「よし、造園部隊の稼働を確認。これより、指揮官のエネルギー補給を開始する」
俺は、完璧な水加減で炊き上げられた『玄米』と、自家製の『大豆ミートとひじきの煮物』を、一切の感情を排した顔で口に運び始めた。
大豆の植物性タンパク質とひじきのミネラルが、疲れた体に染み渡っていく。
「お兄さん……。庭でSP軍団とヒグマが純金使って土耕してるんですよ? なんでそんな修行僧みたいな顔で、ストイックにひじき食べられるんですか……?」
小春ちゃんが引きつった笑顔で尋ねるが、俺は咀嚼を止めない。
「当然だ。外部リソース(SP)の介入があろうとも、己のルーティンを崩さないことこそが、指揮官としての絶対条件だ。それに、大豆由来の代替肉は、純金の輝きを前にしてもその栄養価を失うことはない」
俺は熱いほうじ茶で喉を潤すと、カメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。我が家の庭に外国のSP軍団が現れ、純金の農具で作業をしていると思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『この状況でまだ言い訳する気かこの男は!!!』
『主の限界言い訳タイム・純金とSP編ww』
『さあ、この資本の暴力をどう論破するんだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「あれは純金ではありません。地元のホームセンターが秋の新商品として開発した『真鍮(しんちゅう)コーティングのお試し用スコップ』です。そして庭を耕している屈強な男たちは、農業体験にやってきた『近所のフィットネスジムの熱血インストラクターたち』です。ええ、ただの『地元企業による新商品のモニタリング調査』と『筋トレを兼ねたボランティア活動』が重なっただけですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、ジュラルミンケースに入っていた『純度99.9%の鑑定書(丸めた状態)』で、俺の頭にパーフェクトなハリセン・スマッシュを見舞った。
「真鍮のスコップをわざわざジュラルミンケースに入れて持ってくるホームセンターがどこにあるんですか!! フィットネスのインストラクターが耳に通信用イヤホンつけて『イエッサー!』って叫びながら庭耕すわけないでしょうが!! どう見てもVIPの財力と権力の暴走でしょうが!! 素直に『規格外のお見舞いありがとう』って言いなさいよ!!」
『小春ちゃんの純金鑑定書スマッシュ炸裂ww』
『真鍮コーティング(スイス銀行お墨付きの純金)』
『熱血インストラクター(王室専属のSP軍団)』
『適応力バグおじさん、ついにVIPのSPまで地元のジムトレーナーだと言い張るww』
『言い訳が苦しすぎて今日も最高に笑えるww』
俺の理不尽極まりないローカル企業的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレの鑑定書ツッコミに、一千万人の視聴者たちは腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ふふっ、見事な働きぶりね)』
シロが縁側から満足げに鳴くと、SPたちとヒグマはさらに気合を入れ、庭の復興作業を爆速で進めていく。
「……まぁ、理由はどうあれ。兵站が確保され、庭が綺麗になるなら悪くない」
俺は苦笑いしながら、十勝の青空の下で繰り広げられるカオスな造園風景を見つめた。
台風の試練を乗り越えた限界集落は、VIPたちの規格外の支援と、モフモフたちとのバグった絆によって、さらに強固で、世界一騒がしい『聖域』へと進化していくのだった。
コメント
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第127話読みました〜!台風明けの復興に純金のクワとSP軍団が来るの、スケールがバグりすぎててめっちゃ笑いました😂 しかも主人公が「純金は実用性がない」ってガチの需品科視点でダメ出ししてるのが最高…。小春ちゃんの鑑定書スマッシュツッコミもキレキレで、シロ様が一鳴きでヒグマもSPも制圧するカリスマも好きです。重くないけどキャラの個性がしっかり光ってて、テラーノベルらしいハイテンションな一話でした!