海溝のその先へ

「実は私がゆきかわなの。投稿の写真はメイクをした上で更にそこから加工をして、チェキも顔を半分隠したり体型も角度を変えてよく見せたりしてた」

その一言でみおなちゃんは固まった               次第に目には涙が溜まりこの間SNSで紹介した動物型のポーチを握りしめてその場に座り込んだ

「とても嬉しい。」

「え？」

「私本当にファンなの！！」

みおなちゃんから帰ってきた言葉はあまりにも私の想像していたものとは違った

「私はゆきかわちゃんの存在がすきなの。確かに容姿も大好き、でもそれ以上にファンに対する対応とか紳士すぎて私そこに救われたの。」

ゆきかわとしている時は容姿しか褒められない。リアルでは褒めようのない容姿だから性格を褒められる。ゆきかわとして性格を褒められるのは初めての事だった

これからも仲良くして欲しい。と一言放って今日は解散した

みおなちゃんの一言に私はとても救われた。

こんな私でも受け入れてくれる人が居たという安心のおかげで今日の夜はよく眠れそう

騒がしい夜だった。スマホの通知が鳴り止まない。それでも眠りは深くなる一方だった

朝起きたら通知はすべてゆきかわ宛だった

昨日のみおなちゃんとの会話と私の顔が流出した

ただ、ゆきかわは声出しをしたことがなかったためほとんどの人が信じていなかった

アンチというより迷惑行為をしているという知らせだった

元の動画は既に削除されていたがそのアカウントは色んな人に特定され学校や本名が晒されていた

「〇〇〇中学校・D組・関口みおなだよ〜。ぜひ学校に連絡を〜」そのコメントに付けられたいいねは5684

私はすぐみおなちゃんに連絡した                 返信が無いままブロックされていることに気づく

「いつもゆきかわを応援してくれているファンの皆様へ」

私はその後SNSを通してファンのみんなにあの動画と顔は私では無いことと人の個人情報を軽々しく流出させてはいけないということを伝えた

ちょうど対応をひと段落させた時さわから1本の電話があった

みおなちゃんが亡くなったことを伝えられた

さわは昨日の深夜から私の事、ネットに載せてしまったことについてみおなちゃんに相談を受けていたらしい

さわは私の活動を知っている。みおなちゃんがした事についてさわは怒ったらしい     ネットの怖さを知らなすぎと、                    責任を感じたみおなちゃんは自ら命を絶ったらしい

今日、学校でその事を伝えられた

緊急全校集会が開かれ仲の良かった私やさわが先生から事情聴取された

本当のことは話せなかった

結局ネットでの事件ということで警察が動き始めた

みおなちゃんのお母さんは私とさわに仲良くしてくれてありがとうと何も知らない哀れな姿を私たちに見せてきた

知るわけないよね私のせいでこうなってるなんて

結局私の事を認めてくれる人なんていないんだ

今日の帰り部活が潰れたさわと一緒に帰った

昨日この道をみおなちゃんと歩いた

「みわは何も悪くない。ただ、みわが相手にしてるのは世界なんだよ。ネットってそういうもん。だから活動していることは信用できる人にしか話しちゃダメ」

耳が痛い話だった

ただただ透き通った春の空を眺めながら帰った

桜はもうすべて散った