テラーノベル
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memi(めみ)
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BGMに俺たちの曲を流しながら、高速を走る。
助手席から見える街は、窓ガラスに薄く映る自分の横顔と重なって、どちらが本当なのかわからなくなる。
窓越しに見える街の明かりは遠く、隣を走る車のテールランプは水槽で揺らめく金魚の尾鰭のようだった。
さっきから、音楽だけが律儀にふたりの間を埋めている。
でも、それは会話の代わりにはならない。
言葉にしなかったことばかりが、車内で静かに息をしている。
ダッシュボードの小さな灯りが、こーじくんの指先をうっすらと照らしては消し、フロントガラスには前を走る車の赤い尾灯が細く伸びて、まるで何かを言いかけてやめたみたいに揺れていた。
こーじくんはハンドルを持つ手を少しだけ握り直した。
ウインカーの音が、規則正しく、けれどどこか頼りなく、暗い車内に小さく響く。
俺は、フロントガラスの向こうへ流れていくオレンジ色の照明を数えるふりをして、それから、壊れものに触れるみたいな声で言った。
「あ、東京タワー。」
そう言うと、ほんの一瞬。
瞬きするほどの時間だけ、こーじくは俺の方を見た。
「東京タワーって、この時間は消灯しちゃうんだね。」
「せやで。スカイツリーも0時になると消えんねんな。」
こーじくんの少し低い声が、薄暗い車内に光を灯す。
その優しい光が、俺の中にある小さな小さな黒い影をいっそう際立たせた。
違う。
本当に話したいことは、こんなことじゃないんだ。
俺は思い切って、聞きたいことを言っている。
「こーじくんさ、今日の打ち合わせ。全然参加してくれなかったの、あれなんで?」
運転席のこーじくんを見つめてる。長いまつ毛がとても美しいなといつも思う。
「んー?ちゃんと参加してたやろ。しょっぴー眠たそうやったけど、俺はちゃんと起きてたで?」
「違うよ、そうじゃなくて!」
こーじくんはいつも打ち合わせであまり発言をしない。
みんなの話を静かに聞いて、頷くだけ。
「こーじくんはさ、何をやりたいのか、本当にやりたいことが何か、言ってくれないじゃない。」
「そうか?」
「そうだよ!いつも、最後にすまし顔でそれでええよ、って言うだけじゃん。
俺はもっとみんなの意見を聞きたいの。もっといいライブにしたいんだよ!」
思わず語気が荒くなる。
それでもこーじくんはいつも通り、俺の話を最後まで聞こうとしてくれる。
「セットリストとかステージもさ、こーじくん、関西の時は結構プロデュースしていたじゃん。」
「せやなぁ。まぁあれはあれで、仕方ないところもあったんよ…。」
「こーじくんと龍太くんが一番上だったからでしょ?知っているよ、そんなこと。
「SnowManでもそういうの、やりたくないの?9人だからできることも、たくさんあると思うんだよね。やりたいこと、本当にないの?あるでしょ、絶対!」
んー…というと、こーじくんは黙り込んでしまった。
少し言いすぎたかな。
でも、言いたいことをそのまま言える。これは俺たちの一番強みだろ。
いつの間にか一ツ橋ジャンクションを過ぎ、その先にはレインボーブリッジが見えてきた。
「なあ、ラウ。」
「何?」
「お台場、通るだけやなくて、ちょっと寄って行かへん?」
「……いいよ」
口にした瞬間は正しい気がしたのに、言葉は空気に触れた途端、自分のものではなくなってしまって、助手席の足元に転がっているみたいで、拾いたくても拾えない。
運転席と助手席の間を、静かにこーじくんの「ファインダー」が静かに流れていた。
コメント
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寺島あおいです🌷 第2話、読ませていただきました。 夜の高速道路、車内に流れる音楽、そして言葉にされなかった気持ち——何よりも、助手席から見える景色と、こーじくんの横顔の描き方がとても繊細で、胸がぎゅっとなりました。特に「東京タワー」という何気ない一言で会話を始める、その距離感のリアルさがすごく好きです。本当に言いたいことと、口をつく言葉のずれ。それでも「お台場寄って行かへん?」と誘う優しさが印象的でした。NIKITAさん、また次のエピソードを楽しみにしています🤍