向井康二は自他共に認める泣き虫だ。念願のデビューを告げられた日も、高まる感情を抑えきれずに、みんなに涙する姿を見せてしまった。
それに比べて目黒はあまり泣かない。
子供の頃からお兄ちゃんらしく、と弟を守ることを躾けられて来たから。
いつもニ歳年下の弟にとって、かっこいい兄貴であることを心掛けて来た。
そんな二人が、同じ人に恋をしていることに気づいたのは、つい最近。
🧡あかん、俺。しょっぴーのこと本気で好きかもしれん
向井にそう打ち明けられた時、いつもなら人に譲る目黒が言った。
🖤俺も好き
🧡え?めめもなん?
向井は一瞬怯んだ顔をしたが、すぐに持ち直した。
🧡負けへんで
🖤望むところだ
奇しくももうすぐバレンタイン。
二人はその日に渡辺に告白すると決めた。
告白の結果は目黒の惨敗。
渡辺は向井の告白を受け入れた。
選ばれた向井が泣いていた。
泣きたいのは目黒の方なのに。
🧡めめ、堪忍な
🖤いいよ、しょっぴーを頼んだ
🧡ほんまにごめん……
🖤気にすんなって
🧡めめ……
🖤いい加減怒るぞ
向井は叱られた仔犬のように、肩を落として去って行く。
外には、迎えに来た渡辺の姿が見えた。
🖤康二、しょっぴーおめでとう
目黒は二人とは逆方向へと歩いて行く。
🧡しょっぴー
💙帰ろう
🧡……
💙お前を選んだ俺が間違ってるか?
🧡そうやないけど…信じられへん
💙なら、やめるか?
🧡いやや。やめたない!
💙じゃあもう泣くな
🧡……
渡辺は歩く速度を上げて、向井を置いていこうとした。
かろうじて渡辺の袖を掴んで、どうしても涙が止まらない向井はついて行く。
🧡…しょっぴー、俺を幸せにしてや
渡辺は可笑しくなって、笑った。
二人なりに幸せな道をこれからは模索していく。その先に向井があまり泣かない未来がやって来るだろうか。
いや、おそらく向井の優しく繊細な心は、新たな感動に出会うたびに、またその目を濡らすだろう。
おわり。
コメント
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愛されしょぴ💙
切ないけどオシャレでなんとも言えない素敵な感じ✨