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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第100話:決戦前夜〜四畳半の最終防衛戦〜
北海道、帯広市。
時計の針は、深夜零時を回ろうとしていた。
築三十年のボロアパート、四畳半の空間には、まだ肌寒い春の夜風が、サッシの隙間から容赦なく吹き込んでいる。
だが、今の俺の身体は、不思議と寒さを感じていなかった。
いや、アドレナリンが限界まで分泌され、全身の血液が沸騰しているのだ。
「……よし。これで、全部だ」
俺は、充血した目を擦りながら、机の上に積み上げられた『書類の山』を見下ろした。
株式会社インフィニティ・ワン、代表取締役・秋谷雪(四十歳)。
俺の目の前にあるのは、税務署からの『お尋ね(事実上のロックオン)』に対する、俺たちの全存在を懸けた【最終回答書】と、その裏付けとなる完璧な帳簿データの束だ。
感熱紙が劣化して白紙になってしまった八十万円のPCの領収書は、クレジットカードの利用明細と、通販サイトの購入履歴のスクリーンショット、さらには実際のPCのシリアルナンバーの写真を添付することで、なんとか『代替証拠』として再構築した。
『ルシフェル社長。全書類のダブルチェック、および税務上の法的根拠の照合、完了いたしました』
ディスコードの裏回線から、アシスタントの結愛(ゆあ)の、静かで、しかし確かな熱を帯びた声が響く。
『過去数日間に及ぶ徹夜の経理作業、本当にお疲れ様でした。これで、帯広税務署のいかなる指摘に対しても、論理的かつ合法的に反証する準備が整いました』
「ああ。結愛、お前がいなかったら、俺は白紙の領収書を握りしめたまま、三十万の追徴課税を受け入れて首を吊ってたよ。本当に、ありがとな」
俺が心からの感謝を伝えると、結愛は少しだけタイピングの手を止め、
『……アシスタントとしての、当然の業務です。それに、これ以上税金を取られたら、私の給料(外注費)まで減らされかねませんからね』
と、いつもの冷徹なトーンで返してきたが、その言葉には確かな信頼の響きがあった。
『ピローン♪』
モニターに、AIのジェミニ先生からのポップアップが表示される。
『ルシフェル社長。現在の提出書類の完璧さは、私の演算能力をもってしても「付け入る隙ゼロ」と評価します。勝率は99.9%です。明日の帯広税務署・法人課税部門との面談、自信を持って臨んでください』
「勝率99.9%……。ジェミニ先生がそう言うなら、心強いぜ」
俺は、大きく、深く、深呼吸をした。
明日。
明日の朝十時、俺はこの書類の束を抱えて、帯広税務署へと乗り込む。
ただの底辺フリーランスだった男が、一千万円の賞金を手に入れ、法人を設立し、社長になった。
その「異常な成長」を疑い、牙を剥いてきた国家権力(国税庁)に対して。
俺は、自分の手で稼いだ金が、一切の不正もない『正当な血と汗と涙の結晶』であることを証明しなければならないのだ。
「……にゃーん」
足元で、茶トラ猫のヨモが、俺の足首にすり寄ってきた。
「ヨモ。父ちゃん、明日は大勝負だ。お前の高級ちゅ〜る代を国から守るための、最終決戦だからな」
俺はヨモの頭を撫でながら、三万円のゲーミングチェアの背もたれに寄りかかり、配信ソフト(OBS)を起動した。
こんな夜に、黙って寝ることなんてできるわけがない。
俺には、この戦いの行方を見守ってくれている『最高の仲間たち』がいるのだから。
タイトルは、【決戦前夜。明日、帯広税務署に乗り込む】。
配信開始ボタンを、ターンッ! と力強く叩き切る。
深夜にも関わらず、通知を受け取ったリスナーたちが、凄まじい勢いでチャット欄に雪崩れ込んできた。
『うおおおおおお!!』
『和尚!! 準備はできたか!!』
『いよいよ明日か……っ!』
『国税庁 vs ボロアパートの四十歳』
『負けんな社長!!』
開始数分で、同時接続者数は十万人を突破した。
皆、俺がこの数日間、配信を休んで死に物狂いで帳簿と格闘していたことを知っている。
俺は、ウェブカメラに向かって、分厚いファイルの束をドンッと突き出した。
「おうお前ら!! 待たせたな!!」
俺の声は、かすれていたが、かつてないほどの力強さに満ちていた。
「見ろ! これが、俺と結愛とジェミニ先生で作り上げた、完璧な防衛陣形(帳簿)だ!!」
「白紙になった領収書も、カードの明細と履歴でカバーした!」
「法人成りした時の複雑な仕訳も、一円の狂いもなく合わせた!」
「俺は、明日、この武器を持って帯広税務署に突撃してくる!!」
『おおおおおっ!!』
『和尚かっけええええ!!』
『完璧な防衛陣形(ただの確定申告)』
『当たり前のことを叫んでるだけなのに熱いww』
『これが俺たちの社長だ!!』
チャット欄が、熱狂の渦に包まれる。
と、同時に。
画面の右端で、決戦前夜の景気づけと言わんばかりに、極彩色のスーパーチャットが雨あられと降り注ぎ始めた。
『スパチャ:50,000円(和尚!! 戦の支度金だ!! 持ってけ!!)』
『スパチャ:10,000円(税務署の奴らに、底辺の意地を見せてやれ!!)』
『スパチャ:50,000円(負けたら追徴課税で破産だぞ!! 勝って帰ってこい!!)』
「お、お前らァァァ!!」
俺は、感極まりながらも、いつものように顔をしかめて絶叫した。
「だから! 今日は投げるなァァ!! 明日税務署に行くってのに、今ここで課税売上を爆増させたら、また来年の消費税が増えるだろォォ!!」
「俺の首を絞めたいのか、応援したいのか、どっちかにしろォォ!!」
『wwwwwwww』
『最後まで税金に怯える男www』
『そういうところが好きだぜww』
俺の悲鳴すらもエンターテインメントとして消費しながら、リスナーたちの熱気は最高潮に達していく。
「……ふぅ。お前ら、本当にバカばっかりだな」
俺は、画面の中のイケメンアバター(ルシフェル)の表情を、ふっと和らげた。
「でも、ありがとうな」
四畳半の静寂の中に、四十歳の男の、素直な言葉が響く。
「俺は、何をやってもダメな人生だった。公務員を辞めて、コールセンターですり減って、帯広のアパートで一人、安いみそラーメンすすって……。このまま、誰にも知られずに朽ちていくんだと思ってた」
チャット欄の動きが、静かに、俺の言葉を聞き入るようにゆっくりとなる。
「でも、お前らがいたから。俺の情けない税金の愚痴を笑ってくれて、スパチャを投げてくれて……俺は、一千万を手にして、社長になることができた」
俺は、机の上の書類の束に、そっと手を置いた。
「この金は、ただの数字じゃない。お前らが、俺の泥臭い生き様に対して払ってくれた、血の通った『熱狂』の結晶だ。だから……」
俺は、カメラを真っ直ぐに睨みつけ、腹の底から、魂の咆哮を上げた。
「だから!! 俺の金(税金)は、俺が守る!!!」
「税務署が相手だろうが、マルサが相手だろうが関係ねえ!!」
「俺は一円たりとも、不当にむしり取られはしない!!」
「この帯広の四畳半から、俺たちの底辺の意地を、国家権力に叩きつけてやるァァァッ!!!」
『うおおおおおおおおおっ!!!!!』
『和尚ォォォォォ!!!』
『行けえええええええ!!!』
『俺たちの金(税金)を守れええええ!!!』
『最強の社長!! 伝説を作れ!!』
十万人のリスナーの歓声が、極彩色の光となって画面を埋め尽くす。
裏回線で、結愛の小さな笑い声が聞こえたような気がした。
足元では、ヨモが頼もしそうに尻尾を立てている。
最強のアシスタント。
最強のAI。
そして、最強のリスナーたち。
これだけの軍勢(味方)がいれば、何も恐れることはない。
俺は、インボイスの悪魔を退け、社会保険料の壁を越え、ついに『税務調査』という名のラスボスの扉を開く。
決戦の朝は、もう目の前まで迫っていた。
待っていろ、帯広税務署。
株式会社インフィニティ・ワン代表取締役、秋谷雪。
四十歳の意地と、完璧な帳簿(武器)を持って、今、そっちへ乗り込んでやる……ッ!!
コメント
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第100話、読ませていただきました…! もう、胸が熱くなりましたね。四畳半に集まった“軍勢”——結愛さん、ジェミニ先生、そして十万人のリスナー——の存在が、社長の孤独な戦いを確かなものにしていて、すごく好きです。特に「俺の金(税金)は俺が守る」って叫ぶシーン、あの台詞には泣きそうになりました。これまで底辺から這い上がってきたからこそ、血の通った熱意が滲んでいて。ヨモちゃんの「ちゅ〜る代」発言にもほっこりしつつ、明日の決戦を心から応援したくなりました🔥(寺島あおい)