テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
こげ丸
「自分令和ちゃんと昭和ちゃん、隣の席になる」
(席替えの日は、だいたい運ゲーだ。)
「はい、じゃあ引いてー」
くじを引いた瞬間、令和ちゃんは結果より先に“位置”を確認した。窓側か、後ろか、
充電しやすいか。
「……あ、まあいいか」
悪くない。後ろから二番目、コンセントも近い。
問題は、隣だった。
「よろしくね!」
やたら元気な声が飛んできた。
振り向くと、もう笑っている。
「……どうも」
「昭和っていうの!よろしく!」
「知ってる。同じクラスだし」
「え、見ててくれたの!?うれしい!」
「そういう意味じゃない」
ちょっと声が大きい。距離も近い。
令和ちゃんは、椅子を数センチだけ引いた。
一時間目、現代文。
「はい、ここ大事だから線引いて」
先生の声に、クラスが一斉にペンを動かす。
昭和ちゃんは、きっちり定規で線を引いていた。しかも二重線。
「そこ、テスト出ないよ」
小声で言うと、
「え!?」
めちゃくちゃ驚いた顔でこっちを見る。
「出なくても大事なところでしょ?」
「いや、効率」
「効率?」
「テスト出るとこだけやればよくない?」
「よくないよ!」
思ったより強く返ってきた。
少しだけ周りがこっちを見る。
「あ、ごめん……」
昭和ちゃんは小さくなって、でもすぐにまたノートに向き直る。
その横で、令和ちゃんは教科書の写真を撮った。
「それで覚えられるの?」
「あとで見返すから」
「今覚えたほうが早くない?」
「それ非効率」
「うーん……」
納得してない顔だった。
昼休み。
弁当を開けて、スマホも開く。
通知は三件。どうでもいいやつ。
「ねえねえ、一緒に食べよ!」
顔を上げると、すでに目の前にいた。
「ここ、いい?」
「もう座ってるじゃん」
「えへへ」
距離が近い。ほんとに近い。
昭和ちゃんは、ちゃんと「いただきます」と手を合わせた。
令和ちゃんは、その間に動画を再生する。
「ねえ、スマホ見ながら食べるの?」
「うん」
「会話しようよ」
「してるじゃん」
「今はしてないよ!」
確かに、今はしてない。
「……じゃあ、なに話すの」
「えーっと……好きな食べ物!」
「急に浅い」
「いいじゃん別に!」
少しだけ笑う。
「で、何?」
「ラーメン」
「わたしは卵焼き!」
「へえ」
「それだけ!?」
「広がらないでしょ」
「広げるの!」
昭和ちゃんは本気で言っている。
ちょっとだけ、面白いと思った。
放課後。
「また明日ね!」
「うん」
あっさり別れるつもりだったのに、
「あ、待って!」
呼び止められる。
「これ、落としたよ」
差し出されたのは、イヤホンケース。
「あ……ありがと」
「大事なものでしょ?」
「まあ」
「ちゃんと持っとかないとダメだよ!」
「はいはい」
そう言いながら受け取る。
少しだけ、指が触れた。
「じゃ、また明日!」
今度こそ、走っていった。
うるさいな、と思った。 でも、、、
「……まあ、いいか」
令和ちゃんは、イヤホンをポケットに入れた。
通知が一件増えている。
画面を開く前に、少しだけ空を見た。
なんとなく、明日も隣でいい気がした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!