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プロローグ

私は人生で二度とおこることない不思議な体験をしたことがある。

みんなも体験することのできない私にとって特別な話。

それは,ある日私のもとに来た死神から始まった話。

もうこの時点で不思議だよね,だって死神が目の前にいるんだもん。

この体験から私の人生は大きく変わった。

私はこれが奇跡だと感じた。

もう会うことのできない人に会うことができたんだから。

今から届ける私の物語。

二つの世界を繋いだ不思議な物語を。

創り上げた最後の思い出。

私の人生の中の一つの物語を話すために,私の記憶は過去へとさかのぼった。


第1章 出会った死神

春,真波は高校生となった。校庭に咲く桜の木の下で記念写真をとった。その写真には,本来なら側には彼女の兄である直樹が一緒に写っているはずだった。

そう,あの事件さえなければ……


時は遡ること半年ほど前,大きな豪雨で彼女の住んでいる町は被害を受けた。川は氾濫し,山は土砂崩れをおこし,避難警報が出されたほどだった。

真波の家も避難区域であり,急いで準備をして避難所へと向かっていたところだった。その途中で小さな男の子の泣く声が聞こえた。

辺りを見渡してみると,道路の真ん中に一人で立っている男の子を見つけた。

「あのままじゃ危ない……」

と,つぶやいたのは直樹だった。

「俺,助けに行く」と言って彼は荷物を置いてその子のもとへと走っていった。

その時,強い風がふいて,男の子は飛ばされそうになったが,その小さな手を彼が掴んで万が一を逃れた。

しかし,その一瞬の気の緩みが天が許さなかった。すぐにまた強い風と一緒に一台の車が飛んできた。

それは運悪く,彼らにあたり,直樹は大けがを負った。そのまま車の下敷きになり身動きがとれない状況になってしまった。

急いで病院や警察に電話をかけたが,現状すぐには来れないと返されそのまま二人は亡くなってしまった。

数日後,家族や親戚は黒い服を着て彼の写真を見て泣いていた。真波もまだ現実を受け入れられない状態でいた。

友達からの慰めもあったがなかなか立ち直れずに春を迎えた。入学式にとった写真を見ながら,彼の顔を思い浮かべる日が続いた。

そんなある日,彼女は母と喧嘩してしまった。そして母からポロッと出た言葉に彼女は怒りと涙をあらわに家を飛び出した。

(直樹がいればこんな喧嘩してないのにね……)母の言葉が頭の中によぎる。

「お兄ちゃんがいなきゃ私何もできないよ…」

「私があの時止められていればこんな事にならなかったのかな?」

今の彼女には後悔しかなかった。夕方の公園には彼女の他に誰一人とおらず,公園のベンチに座る悲しき少女の後ろ姿しかなかった。

「こんなわがままで弱虫な私を支えてくれていたのは結局お兄ちゃんだったんだね」

「会いたい……」

一人でぶつぶつと話していると後ろから声をかけられた。

「会えるよ。」

「えっ? 誰……?」

その声に反応するように振り返ると目の前には,フードをかぶった二十歳ぐらいの男がいる。

「どうも,会いたい人がいるなら僕が連れてってあげるよ?」

「まぁ死者に限るけどね」

真波の質問に答えもせずその男は話を始めた。その内容はこの男が普通ではないことを示してもいるようだった。

「な,何を変なこと言ってるんですか?」

「ん? 僕ができることを言っただけさ」

「できること……? ってかあなたは誰なんですか⁉︎」

「あぁ,僕に誰なんてそんな明確なことはないよ」

「無い?」

「そうだよ,強いて言うなら僕は死神かな?」

彼女は彼のその言葉を聞いて口をぽかんと開けた。死神がいるだなんて考えられなかった。

しかしそれは何故か逆に,彼女の緊張感をやわらげる感じがした。

「会いたい人に会えるってのは本当なんですか?」

「あぁ会えると思うよ? その代わりに君の大事なものを奪うけどね」

「大事なもの……?」

「何を奪うかは言えないけど君が1番大切にしてるもの奪うのさ」

「どうして?」

「取引だよ。人間だってお金とものを交換して経済を成り立たせているだろう? それと一緒さ」

「僕は人間の願いを叶える代わりにその人の大事なものを一時的に奪う。そして,死者が別のものに成り代わったときに返すんだ」

(大切なもの……)何を奪われるかは分からないが,直樹に会えるかもしれないという真波の好奇心が耳を傾ける。

「僕は死神,死者をあの世へ送るのが僕の仕事さ」

「今回だけ特別に連れてってあげても良いんだよ? あの世へ……ね」

「君の会いたい人は君のお兄さんだろう?」

「どうして——」

「これは僕の能力さ,目の前にいる人の考えていることがわかる能力だよ」

この後,どんなことになるかなんて考える余裕もなかった真波は,今,目の前にある直樹に会えるチャンスを逃したくはなかった。

「お兄ちゃんに会いたい……」

彼女が小さな声でそう言うと,「ほんとに?」と死神に聞かれ,彼女は頷いた。

「じゃ,連れてってあげるよ」

死神はそう言いながら深く被ったフードの下で悪い笑みを浮かべた。

「目をゆっくり閉じて,大きく息を吸ってはいたら止めてね」

彼女は死神の言う通りに目を閉じ,大きく息を吸ってはいた。

「止めて」その指示で彼女はしっかりと息を止めた。すると,スゥッと意識が遠のき身体が軽くなった気がした。

その間,彼女は何があったのか分からないが身体が重力に逆らったように感じた。そしてそれは次第に元の感覚へと戻っていく。

「息をして,目を開けてごらん」

死神の声で彼女はゆっくりと目を開けた。目の前あったのは見たことのない景色だった。高い建物がずらりと立ち並び,一つの宮殿がこの場所の中心に位置していた。

そして,その宮殿を中心に四方へ分かれた四季がみられた。

道を歩くのは人ではなく動物や着物を着た人間の姿をした妖怪たちだった。

「ここはどこ……?」

「ここは死者や妖怪の暮らすまちで,人間界とは違うもう一つの世界さ」

「僕たちはここを妖魔界と呼んでいる」

妖魔界——

真波は一度本で読んだことがあった。この世には二つの世界が存在してその世界を行き来する者たちがいる話を。本当にあったことに彼女は驚きを隠せなかった。

「すごい,ここに本当にお兄ちゃんがいるの?」

「あぁいると思うよ」

「確実にいるとは言えないけどね」

「えっ……?」

「でも,会えるって——」

「確かに言ったさ。でも,確実に会えるとは言っていないよ」

死神は見下すような感じで真波の目をみつづける。

「それなら一緒に探してくれませんか? ここまで来たなら私,会いたいんです」

真波は真剣な眼差しを彼に向ける。

「僕は探さないよ?」

が,しかし冷たい言葉であっさり返されてしまった。

「会えるとは言ったけど会わせてあげるとは言ってないよ」

「そしたら私は,どうしたらいいんですか?」

「どうするって,君のお兄さんを探して会えばいいんじゃないか?」

「その後は……?」

「知らないね。自分で帰る方法を探すしかないんじゃないかな」

「死神さんは私を元の世界に返してくれないの?」

彼女のその問いに死神は高笑いで答えた。

「何度も言うけど僕は死神だよ? こっちの世界に死者を送り込んだら僕の役目は終わりさ」

その彼の言葉に彼女は,呆然と立ち尽くしながら言った。

「えっ……私死んじゃったの?」

「君はまだ死んでない,特別だよ? でもね,一度全ての記憶を失えば二度と元の世界に戻ることはできないよ」

この時,真波の頭の中で彼と会った時の話が浮かんできた。

(君の大切なものなものを奪うけどね)すると,彼女の引っかかっていた疑問が解けた気がした。そして彼の顔を見つめ直した。

「君は分かったんじゃないか? 僕が君の何を奪ったか」

続けて彼は話し始めた。

「僕はお喋りでタチの悪い正直者の死神。死者の大切なものを一度奪って,この妖魔界に送る。普通ならすぐ死者は妖怪になるか転生するか,はたまた地獄に落ちるかを決められることになる」

「でも今回は少し違う。君はまだ生きてる。今,君が持ってる記憶が全て消えればもう人間界には戻れない。もし帰りたいのなら自分で帰る方法を見つけなきゃいけないな」

「まぁここに来た目的はお兄さんに会うことだろうしそれをしてからでも良いと思うよ。」

「あっでも気をつけてね,ここには悪い妖怪がたくさんいるから。生きている人間と聞いた瞬間襲われちゃうかも?」

死神は話し終えたが,その話をまだ真波は受け入れられない状態だった。記憶を失えばもう生きて帰れない。そう思うとだんだん不安が大きくなっていった。

「記憶を失う前に元の世界に戻れば良いんだよね?」

「あぁそうだよ,でも安心して死者になった後だとしても元の世界に戻ったとしても記憶は全部戻るから」

「この世界で忘れてしまったことも,何かのきっかけで思い出すことはできるの?」

「まぁ可能性は低いけどね」

彼女は死神の言葉を信じていいかどうか悩むところはあったがこの可能性を信じたいと思った。

「そろそろ行ってもいいかな? 僕次の仕事があるんだよね」

早くこの場を離れたいかのように彼は話し出す。

「いなくなるの?」

「そりゃもちろん。えっ,もしかして僕が君のそばにずっといるとでも?」

「えっ,いや……」

「そっか」といいながら彼はその場を去っていった。

見慣れない,普通ではない場所にただ一人,人間である真波は取り残されてしまった——

私の記憶と僕の思い出

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コメント

3

ユーザー

ありがとうございます! 第二話を書き進めているのでしばらくお待ち下さい

ユーザー

面白いです。続きが気になります。

ユーザー

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