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姫。

その少女は、そう呼ばれるに相応しい姿をしていた。

大小の宝石とレースで彩られた、それ自体が相当な金額のしそうなドレス。

純白に見えるが光の具合で色が変わっていくその生地は、確か何処かのダンジョンで見つかる強力なモンスターの糸を紡いだ超高級品……であったはずだ。

綺麗に整えられたウェーブがかった髪も艶やかで、青い瞳もくりっと可愛らしい。

……そして。


(青い髪はレメイン王族直系の証……か)


そこまで瞬時に判断すると、オウカはその場に跪く。


「レメインの麗しき月に拝謁いたします。無作法者故、カーテシーではないことをご容赦ください」

「まあ、そういう挨拶があるとは本で読んでいましたけれど。実際にされたのは初めてですわ」

「え、あ、えっと……拝謁いたします!」


アンナもオウカの真似を慌ててするが、そんな様子を見てアスガルは溜息をつき、姫はくすくすと微笑む。少なくとも気分を害してはいない。そんな様子が良く分かる。


「いいんですよ。此処は王宮でもなければ、公式の場でもありませんから。楽にしてください」

「身に余るお言葉です」

「もう、そういうのはいいんですってば!」

「……姫様の仰せだ。普段通りでいい。たぶんその言葉遣いも違うのだろう?」


言われてオウカは僅かに真意を探るような目になり……すぐに立ち上がり「そうかい」と頷く。


「お作法ってのは大事だが、肩が凝っていけねえや」

「え、もういいの⁉」

「おう、そう仰せだ。ご命令とありゃあ従うしかねえさ」

「うふふ、楽しいお方。ええ、確かにそう言いましたもの。さ、お名前を聞かせて?」

「オウカ。こっちはアンナ」


端的に、しかしこれ以上分かりやすい言い方もないだろう紹介に、姫は楽しそうに手を叩く。


「私はイリーナ! イリーナ・レ・マリウス・オル・レメインですわ!」

「えっ、長っ……」

「ですわよね! 私も常々そう思っておりますわ!」


オウカがたしなめるより先にイリーナ姫が同意してしまったのでオウカとしても何も出来ないが、実のところ、オウカの予想を遥かに超える大物だという自己紹介なのだ。

レ。すなわちレメイン王家の定める最も尊き次代……王太子候補であるということ。

マリウス。これは別にいい。二つ目の名前をつけるのは魔除けのようなものである。

オル。これは王家の始祖の定めし基準をクリアした者であるということ。

これを総合すると……今後死ぬようなことでもなければ次代の王になることが確約された身という証明なのだ。


(やべーな。何が姫様だ。王太子閣下じゃねえかよ……でも聞いたことがねえな。任命式はまだってことか? これだけ称号ぶら下げて? 有り得ねえだろ……うわ、超面倒ごとの匂いがするぜ)


僅かに冷や汗を流すオウカの顔を、アンナと盛り上がっていたはずのイリーナ姫はじっと見ていて……そのままオウカの眼前までやってくる。


「やっぱり素敵な方。もう大体のことを悟った顔をしてる……」

(げっ!)


顔には出さないまま、オウカは「なんのことか……」と微笑む。

間違いない。超ド級の厄介ごとだ。厄ネタだ。関わり合いになりたくない。

精々大貴族程度だと思ったのに。藪をつついて蛇が出ると思ったら、ドラゴンが出てきた気分だった。


「……私、困っておりますの」

「お、おう……」

(その先は言うなよ……頼むから言うなよ……!)

「助・け・て・く・だ・さ・ら・な・い・か・し・ら・。充分にお礼は致しますわ」

「……喜んで」


断れるはずもない。いつも通りの口調を許されようと、立場の差は明確に過ぎる。

次代の王確定のお姫様の頼みを断るなどという選択肢は、最初からない。

まあ、その分報酬は他では得られないほどのものが手に入るのは確定しているのだが。

そんなオウカと「人助けって大事よね」と気楽なアンナを見比べたアスガルがほんの少しだけオウカに同情的な目を向けて。


「頼みとは単純なことだ。姫様を守るだけだからな」

「ええ、腕があるなら難しいことは何もありませんわ!」

「それなら問題ないわよね。ね、オウカ!」

「アンナ」

「うん」

「ちょっと黙っとけ?」

「分かったわ!」


そんな簡単な話であるはずもない。

その辺に転がっているザコ共だって、此処に入り込めている時点で相当なのだ。

大貴族を誘拐しようと企んだ脳みその代わりに土を詰め込んだアホの群れなどでは断じてない。

何しろ相手が次代の王と分かって来たのだ。唐辛子だけ詰め込んだアホのホットドッグを食った方がマシな話に違いない。


「もしや聡明なる姫様は、この連中の紐の先をご存じで?」

「ええ、勿論! 私の目的を邪魔しようと企む兄弟姉妹でしてよ!」


お家騒動、継承権騒動、王族案件、王太子暗殺未遂。

最悪のカードが四枚手元に揃ったオウカは「くそっ……聞きたくなかった」と毒づく。

どうせ聞かざるを得なかったが、それでも聞きたくなかった。


「オウカ。すごく……すっごく頼りにしてますわ?」

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