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#読み切り
ruruha
646
羽海汐遠
11,064
みほり
594
夕焼け色に染まる交差点で、車のクラッシュ音が響き渡った。直也はフロントガラス越しに迫る大型トラックを見て、「ああ、終わった」と思った。次の瞬間、激しい衝撃と共に意識が途切れた。
「……おい、大丈夫か?」
目を開けると、薄汚れたジャケットを着た中年男性が心配そうに覗き込んでいた。周囲を見回すと、朽ち果てたビル群や放置された車両が目に飛び込んできた。地面には血痕のようなものが乾いてこびりついている。
「ここはどこだ……?」直也が問うと、男は眉をひそめた。「そんなことより早く立て!奴らが来るぞ!」
立ち上がろうとした直也は、足元に異様なものを見た。皮膚の剥がれた顔、濁った瞳——ゾンビだった。恐怖で凍りつく直也に、男は叫んだ。「走れ!」
しかし、遅かった。十体以上のゾンビが路地から湧き出てきた。男はショットガンを構え、「クソッ!」と悪態をつきながら引き金を引いた。銃声が轟き、数体の頭部が吹き飛ぶ。だがすぐに新手が押し寄せてくる。
「どうしようもない……」諦めかけた時、直也の身体に異変が起きた。体内から何か熱いものが込み上げてくる感覚。気づけば右手が青白い光を放っていた。
「何だこれ……」戸惑いつつも、直也は無意識にその手を伸ばし、一番近くのゾンビに触れた。次の瞬間、光が爆ぜるような音と共にゾンビが灰のように崩れ落ちた。
「君は何者だ?」男の驚愕した声が聞こえた。だが直也自身が最も混乱していた。
死んだはずなのに生きている。そして不思議な力を持つ自分。
「わからない……でもこれなら戦える」直也は残るゾンビに向かって駆け出した。触れれば消滅する能力。次々と敵を殲滅していく。
最後の一匹が霧散すると、急激な疲労感と共に飢餓感が襲ってきた。喉が渇き、胃袋が捩れるような感覚。視界の端で倒れた人間の首筋が妙に鮮明に見えた——脈打つ血管が美味しそうに見える。食欲とは違う、本能的な渇望。
「危ないぞ、離れろ!」男の警告も耳に入らない。理性と本能がせめぎ合う。食べるのか? 人を?
その瞬間、直也の脳裏に誰かの声が響いた。「食べてもいいけど、魂だけにしておけ」
幻聴か? 混乱する直也だったが、本能的に理解した。彼の力は単にゾンビを倒すだけでなく、生命エネルギーを摂取することにも使えるのだ。
「うおっ!」男が悲鳴を上げる。直也の目が赤く輝き始めた。「大丈夫……俺はまだ……人間だ……」
必死に自己抑制しながら、直也は震える拳を握りしめた。この世界で生き延びるためには、新たなルールが必要だった。
「名前は?」男が尋ねた。「俺はタケシだ」
「直也」掠れた声で答える。二人の視線が合った時、共通の理解があった—彼らは生き残りたかった。どんな代償を払ってでも。
夕暮れの街に、遠吠えのような叫びが響き渡った。新しい夜が始まろうとしていた
コメント
3件
うわあ…第1話から一気に引き込まれました。死んだはずの直也がゾンビだらけの世界で目覚めて、しかも触れただけで敵を消しちゃう能力に目覚める展開、すごく緊張感があってドキドキしました…!最後の「魂だけにしておけ」という声、あれが何なのかすごく気になるし、人間でいるための理性と本能の葛藤が重くて切なかったです。タケシとのこれからも見届けたい…!🥀