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第一話
「許嫁なんて聞いてない」
日曜日の朝。
珍しく実家から連絡が来た。
『今日の昼、帰ってきなさい』
照は仕事の資料を閉じ、小さくため息をつく。
💛「急になんだよ……」
同じ頃。
辰哉も母親から同じような電話を受けていた。
💜「え、今日?」
「そう。絶対来て」
💜「そんな改まって何?」
「来れば分かるから」
一方的に電話は切れた。
💜「嫌な予感しかしない……」
────────
午後。
岩本家。
照がリビングへ入ると、両親だけではなく見覚えのある夫婦が座っていた。
💛「……あれ?」
「お久しぶり」
深澤家だった。
照は幼い頃に何度か会った記憶がある。
その隣には。
💜「え」
💛「……深澤?」
辰哉も固まる。
何年ぶりだろう。
高校卒業以来、一度も会っていなかった。
💜「なんでいるの?」
💛「それ俺のセリフ」
二人が顔を見合わせる中、四人の親はどこか楽しそうだった。
「二人とも座って」
嫌な予感がさらに強くなる。
────────
全員が席につく。
静かな空気の中、照の父が口を開いた。
「今日は大事な話がある」
💛「うん」
「実は」
「お前たち二人は、小さい頃から許嫁なんだ」
…………。
沈黙。
五秒。
十秒。
最初に口を開いたのは辰哉だった。
💜「……は?」
照もゆっくり父を見る。
💛「今なんて?」
「だから」
「許嫁」
💜「いや意味は分かる!」
💛「なんで今言うんだよ!」
母親たちはどこか呑気にお茶を飲んでいる。
「タイミングを見てたの」
💜「見すぎ!」
「二十八年待ったわよ」
💜「待ちすぎ!」
照も頭を抱える。
💛「冗談だよね?」
父は真顔だった。
「冗談じゃない」
机の上に一冊の古いアルバムが置かれる。
そこには、小さな着物姿の二人。
手を繋いで笑っている写真。
💜「え……」
💛「これ俺?」
「七五三の日よ」
「この時に約束したの」
💜「誰が!?」
「親同士が」
💜「本人不在じゃん!」
────────
さらに追い打ちをかけるように、辰哉の父が封筒を取り出した。
「それで」
「来月から二人、一緒に住んで」
💛💜「…………は?」
「半年間」
「同居してもらう」
💜「なんでそうなるの!」
💛「話飛びすぎだろ!」
「半年暮らしてみて」
「それでも嫌なら婚約は白紙」
照は即答した。
💛「じゃあ白紙で」
「まだ最後まで聞きなさい」
辰哉も勢いよく頷く。
💜「俺も白紙!」
母親たちは顔を見合わせて笑う。
「本当に?」
「半年よ?」
「それくらいできるでしょ?」
💜「いや、できるできないじゃなくて!」
💛「知らない人と同居するようなもんだから!」
辰哉がすかさずツッコむ。
💜「知らない人ではないけど!」
💛「久しぶりすぎるだろ!」
二人はそこで初めて同じタイミングで黙った。
目が合う。
💜「……」
💛「……」
そして同時に口を開く。
💜💛「無理」
その声がぴったり重なった。
リビングには親たちの笑い声だけが響いていた。
二人はまだ知らない。
この”最悪の再会”が、自分たちの人生を大きく変える始まりになることを。
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コメント
1件
第1話お疲れさまです!「許嫁なんて聞いてない」っていうタイトルからもうツッコミ待ちの構えがバッチリ決まってて好きです笑。28年放置してた親たちのノリ、強すぎるだろ…!照と辰哉の「無理」がシンクロするところ、思わず声出して笑いました。この先どう転ぶのか、めっちゃ気になるんで続きも楽しみにしてます🔥