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「あそこ、あのブランコだよ。」
カーテンが風でゆれ、光が机に乱反射する夕方の教室で、中くらいの身長で細く長い、白い手を教室からグランドへ指さしている男子生徒。
「可哀想にね。変な大人たちによって殺されたのさ。」
そのブランコを見つめながら語る姿に少し腹立ちを覚えながら、切れ長な目を見つめる。
突然だった、俺のクラスの有栖川さんが行方不明になった。みんな酷く落ち込んでいて朝から気分が悪い。俺は有栖川さんと繋がりはなく、小学2年生の頃同じクラスになったくらいで、喋ったとこもろくにない。別に悲しくはなかった。教室が少し広く感じたくらいだ。
「なぁ、颯太、有栖川さんどこいったんだろうな。家出とか?それとも誘拐?」
幼稚園からの幼なじみの俊は有栖川さんのとこが好きらしい。たしかに彼女は、いつもサラサラした柔らかい髪で、ぷっくりとした唇、フリルが着いたドレスを着ている。遊びにくいだろうなと思う。けれど彼女は学年のアイドルなのだ。顔はイマイチだが、顔を見なければ何とか。
「さぁな。」
適当な返事をして1時間目の授業の準備をしようとしてた時。
ガラガラとドアが開いた。まだ先生が来る時間ではないのだが。いや、先生だけじゃない。小さい、新品の上履きも見える。
「さぁ、いきなりで悪いが席に着いてくれ。」
みんな、有栖川さんの話をしていたが2秒くらい間を開けて、みんなが席に着いた。
「転校生を紹介する。大水 清くんだ。」
先生が無駄に大きい声で話を始める。
「大水 清です。」
それとは正反対に小さくボソボソした声で自分の名前を語る、大水くん。
「仲良くしてやってくれ。」
「ちょっと、かっこいいかも…」
「やだぁ、この前も伊藤くんかっこいいって言ってたじゃない」
「サッカー好きかなあ?」
「家どこら辺なんだろう」
そこらの一般生徒がボソボソと喋る声が耳に入る中、先生は大水くんの席をちゃっかり決めていた。俺の前の席だ。まぁ元は有栖川さんの席なんだが。
「大水くんだよね?隣、よろしくね。私、佐藤」
「え、うん」
それだけ?隣のブスの顔ももっとブスになって困っているようだ。大水くんはどうやら人見知りというか、陰気な性格らしい。俺の嫌いなタイプだ。
4年生にしては少し大人びている俺はこういうタイプが1番嫌いだ。
一時間目の国語は俺の嫌いな教科で、授業なんかに集中はしなかった。窓の外にある木をなんの木か、そんなとこを考えながら退屈な時間を過ごすのが日課で意外と楽しみなのだ。いつものように窓を見ていると、なぜか視線を感じた。前からだ。そっと視線を前に移すと横目でこちらを見つめる大水くんと目が合った。切れ長な目でこちらを見つめる大水くんの目は不気味と微笑んでいたかのようだった。
休み時間、大水くんはクラスのやつらに囲まれて話をしていた。いや、していた、と言うよりかけられていたっぽい。やはり転校生と言うのは、どこか特別な存在なのだろう。僕はそっと席を立って図書室に行った。
「ねぇ、岡本くん」
図書室に行くには渡り廊下を渡らないといけないのだ、が、途中で声をかけられた。
「何…?」
無愛想に返事をし、振り返った。そこに居たのは、大水くんだった。さっきまで囲まれていたのに、よく追いついたな、と少し感心した。
「岡本くんも有栖川さんが見えるんだね。」
「は?」