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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。情報を得たからには迅速に行動します。偵察に長けた人員から選抜された斥候を放ちます。この偵察部隊、貴重な自動車を装備させています。我が暁はシスターが持っていた自動車一台のみを保有しているのが現状で、機動力の観点から速やかに全部隊に装備させたいのですが自動車と言う奴はバカみたいに高いんです。ビックリします。一台金貨数百枚レベルですよ!
帝都でも極一部の大貴族が持っているだけの代物。普及には恐ろしい時間が掛かるでしょう。つまり、流石に手に入らないのです。ふぁっく。
仕方がないので偵察部隊にのみ装備しているのが現状です。これも何とかしないといけませんね。
さて、斥候を向かわせ部隊に戦闘用意を指示しつつ私はベルを連れてターラン商会へと向かいます。『闇鴉』と敵対する以上、前もって伝えておけば余計な混乱を避けられます。
相変わらずドピンクな本店に顔を出すと、マーサさんが笑顔で迎えてくれました。おや、今日はビジネススーツではなくエルフの民族衣裳ですか。うん、露出多めでナイスです。色々と目のやり場に困りますね。何がとは言いませんが。
私は早速『闇鴉』の件を伝えると、マーサさんは二つ返事で了承してくれました。
「むしろ私が頼みたいくらいよ。あいつらのシノギを削れるだけでも価値があるわ」
「お任せください。本人達の捕縛が出きれば一番なのですが、それは保証できませんから」
「良いわよ、現場に出てくるような奴等じゃなかったし。取引を台無しにしてやるだけでも大打撃だわ。報酬は期待して良いわよ?」
「はい、期待していますよ」
「ついでに……人を貸してあげる。ルイス」
「なんだ、姐さん?」
「シャーリィの初仕事を手伝ってあげなさい。うちとしても利益のある話だから」
なっ!?この男を!?
「マーサさん、とてもありがたい提案なのですが…」
「分かったよ、姐さん。シャーリィ、俺が手伝ってやるから安心しなって」
「むしろ不安を禁じ得ないのですが」
「なんだよ、いざって時にドジやらかすのがシャーリィだろ?」
「事実無根です。むしろ何事も大雑把な貴方が大失敗をしないか心配になります」
「シャーリィは細かすぎるんだよ、禿げるぞ?」
「失礼な、まだそんな歳ではありません」
本当に失礼な人ですねっ!
「ほら、眉間に皺が出来てるぜ?」
「誰のせいだと!」
ストレスで胃が痛くなります!
「いちゃつくのは後にしてくれねぇか?」
「そんな事実はありません!」
「軽いスキンシップさ、ベルさん」
この男ぉ!
「意外と相性が良さそうね。ここまで感情的なシャーリィは始めてみたわ」
「そうかぁ?こいつ顔に出すのが下手くそなだけで滅茶苦茶感情豊かだと思うけどなぁ」
下手で悪かったですねっ!
ああ、憂鬱です。マーサさんの好意を無駄にするわけにはいかないし。
「貴方が大失敗しないように見張っておきますからね、ルイ」
「なら安心だな、細かいのは任せた」
「細かいのを気にしなさい」
「やだ」
「やだじゃありませんっ!」
「また始まったよ。マーサの姉御、ここらで失礼するぜ。ほら、お嬢」
ベルに促されて、マーサさんの前だと言うことを思い出せました。
「お時間頂いてありがとうございます、マーサさん。必ず良い成果を報告に参りますね。ベル、いきますよ」
「気をつけてね、シャーリィ」
「おい、俺を置いていこうとすんな」
ちぃっ!勘づかれたか!
斯くしてターラン商会からルイスを助っ人として借り受けた私達(極めて不本意ですが!)は、教会へ戻り全部隊に出動を命じました。
現在我が暁は二十名の戦闘員を保有しており、十名で一個小隊として二個小隊で編成。サブマシンガン装備が四人、残る十六人はボルトアクションライフルを装備しています。教会と農園の守りをシスターとロウに任せて私達は出撃、馬車に分乗して目的地の廃村を目指します。
移動中に打ち合わせを済ませます。
「第一小隊をセレスティン、第二小隊をベルに任せます。深夜の寝込みを襲うので、皆には目印の白い腕章を右手に着けて貰いますよ」
「初陣が夜襲ですか、些か困難では?」
セレスティンが疑念を出します。まあ、当たり前ですね。
「既に偵察部隊が廃村周囲に展開、事が始まれば家屋などに火矢を放って放火します。後は照らされた敵を撃つだけ、簡単なお仕事です」
白い腕章を着けていない=敵なのですから。確実な勝利を期する必須項目の一つは奇襲なのです。
「ちゃんと相手は居るんだろうな?」
「抜かりはありません。正午に廃村へ海賊船が一隻入港。旗印は海の大蛇で間違いありません。戦利品の交換を行って今は宴会の真っ最中です」
「気分が良いところにズドンか。相変わらずエグい真似をするよなぁ、お嬢」
「そうでしょうか?」
まだ訓練が万全とは言えないので、出きれば乱戦や接近戦を極力避けたいだけなのですがね。犠牲は出したくありません。訓練だって大変なんですよ?
「奇襲効果を最大限に活かすならば、良い策かと。お嬢様のご期待以上の成果をご覧にいれましょう」
「期待していますよ、セレスティン」
セレスティンはお祖父様の代から数多の戦場を潜り抜けた猛者。部隊指揮もお手の物です。
「なら、セレスティンの旦那に負けねぇようにしねぇとな」
「ベルにも期待していますからね?」
「おうよ。あっ、そうなるとお嬢の護衛が居なくなるな」
「必要ないと思いますけど」
「大丈夫だって、ベルさん。シャーリィのお守りはちゃんと俺がやるから」
「だな。任せたぜ、ルイ」
「おうよ」
勝手に話が進んだ!?ああ、もう。何でこうなるのか。仕方ない。
「不本意ですが、護衛はルイに任せます」
「怖がらなくて良いぞ?ちゃんと護ってやるから」
「むしろ私が貴方の制御に苦労する未来しか見えないのですが」
「何だ。恥ずかしがってんのか?」
「今の言葉のどこにそんな要素がありましたか!?」
本当にこの男はっ!
私は不本意な不満を抱えつつ現地に到着。既に夜となっていました。