「っはぁ…はぁ…」
駐輪場についた。キヨくんの自転車…前に見たときには変なストラップが付いていた。なぜか前カゴに。普通付けるなら鍵じゃないの?って聞いたけど、『なんか目印になっていい』とか言ってたっけ。
俺は必死になって探した。うちに来たときに何度も見た、ちょっとよれた自転車。使い込んでるらしく、どうやら中学から使ってるんだって。物持ちがいいねって話もした。
…これも違う、あれも…
「あ…」
あった。隅っこの方に隠すようにして置かれた、見慣れた自転車だ。
「キヨくん…来てるんじゃん…」
どうやらまだ学校にいるようだ。俺はキヨくんの自転車の前に座って待つことにした。こんなの、ストーカーみたいで気が引けるけど、こうでもしないと話なんてしてくれなそうだったから。
「眠くなってきた…」
部活始まりのチャイムも聞いた。部活終わりのチャイムも。生徒がぞろぞろと玄関から出てくる。ラケットだったりユニフォームだったり持って出てくるから、みんなもう帰るのだろう。みんなの姿をみていると、長身細身の男子が現れた。
キヨくんだ。
「来た…」
こっちに向かって歩いてくる。周りには友達もいるが、どうやら徒歩で帰るみたいだ。手を振っては散り散りになり、とうとうキヨくんだけがこっちに向かってくる。
心臓がドキドキする。嫌な顔されたり、煙たがられたりもするかもしれない。でも、あの行動の真意を知りたい。
俺はスッと立ち上がってその見慣れた姿に勇気を振り絞って声をかけた。
「キヨくん、お疲れ様」
少し緊張していたせいか、声が掠れてしまった。キヨくんは案の定驚いた顔をした。そしてバツの悪そうな顔で俺を凝視する。何か言いたげなその瞳に俺が映っていることが、久々に顔を見れたことが嬉しかった。
「…レトさん」
カバンから鍵を取り出し、それ以上何を言うわけでもなく歩き始めるキヨくん。会話なんてしなくてもわかってた。一緒に帰ろうってことだって。聞きたいことあるのはわかってるよってそんな顔してた。俺も黙ってその後を追う。
こんなふうに2人で歩く帰り道は本当に久しぶりで、懐かしい気分になってくる。でも安心しきったわけじゃない。俺を避けている理由を、この人から聞き出さないといけない。
お互いの歩く音と自転車を押す音だけが聞こえる。遠くからは虫の声も聞こえて、秋の始まりも近いのだろう。
帰る途中で気づいたけれど、キヨくんが向かっているのは自分の家じゃない。俺の家だった。何日も同じ道を歩いていたんだ、癖になってたんだろう。
そのことがまたちょっと嬉しかった。
To Be Continued…
コメント
4件
気長に待ちますか。
ここまで読んだけどめっちゃ良い… ほんとに続きが気になる⸒⸒⸜( ˶'ᵕ'˶)⸝
最高っすね。アザマス イヤー早く続きがみたいですわ。これからも頑張って下さい!