コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「し、失礼しましたぁっ!! あ、あなたはぁっ! くぅっ! 勇者様ぁっ! あたいはっ! 大したことのない戦士ですぅっ! はうぁぁっ!!」
「はい。よくできました。じゃあ、みんなに謝ろうか? 入学式の邪魔をしてごめんなさい。それと、偉大なる魔王様が選定した教師の人たちを侮辱してごめんなさい。できるね?」
「う、うううっ! ご、ごめんなさぁいっ!!」
ヘルルーガはそう叫ぶと、涙を流した。
だが、シンカはこれで満足しない。
「自分が何をしたことに対する反省なのか、ちゃんと説明してっ! あと、手は顔の横で、こう! みっともなく抵抗しないの!!」
シンカがそう注意する。
確かに、先ほどのヘルルーガは『ごめんなさい』と言っただけだ。
具体性がないので、本当に反省しているのか分からない。
その上、彼女の手はシンカの足を押さえている。
自分の股間部への刺激を少しでも減らしたいという気持ちは理解できるものの、あれでは反省の念が足りていないと取られても仕方がないであろう。
「に、入学式の邪魔をしてごめんなさい! 先生たちを侮辱してごめんなさぁいっ!!」
「うんうん。それでいいんだよ。さぁ、最後は手を顔の横に持って行って……」
ヘルルーガが泣きながらも、言われた通りに行動する。
彼女は屈辱に身を震わせていたが、しかし完全にシンカの手中に収まっていると言ってよい状態であった。
「み、みんなぁ、ぐすっ! ひぐっ! お騒がせしまひてぇ……、ご、ごべんなざいぃぃっ!!」
ヘルルーガはそう言うと、顔の横で両手をピースサインにした。
ベッドの上で余がシンカに教えた、最大限に反省の意を表したポーズだな。
あれは冗談で教えたつもりだったのだが、どうやら本気にしてしまっていたらしい。
「うん、偉いねっ! 最後に……」
「あ、ああああぁっ!!」
「はい。これでおしまい」
「はうっ!! んほぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!!」
ヘルルーガは大きな声を上げると、そのまま気絶してしまった。
同時に、彼女の全身から放出されていた闘気が消え去る。
「ありゃりゃ……。ちょっとやり過ぎたかなぁ」
シンカはヘルルーガを横たえると、テヘペロ的な表情でこちらを見た。
その仕草は可愛かったが……まあ、後ほど軽く説教しておくことにしよう。
ユリアやヘルルーガを無力化した余たちは、倒れていた教師たちを介抱し、式場を修復した。
「ううぅ……。屈辱ですわ……」
「くっ……。足が痺れて……」
ユリアとヘルルーガがうめき声を上げる。
彼女たちは、式場の片隅で正座をしていたのだ。
「あははっ。これはいい眺めねぇ」
「あ、あの、姉上……」
「何よ? ユリアぁ? 何か言いたいことでも?」
「いえ……。なんでもありませんわ」
フレアはまだご立腹だ。
まぁ、実の妹が入学式をメチャクチャにしたのだからな。
実家のバーンクロス家の名に傷をつけかねない暴挙だ。
彼女としては、怒りたくなって当然だろう。
こればかりはしょうがあるまい。
「くぅ……。このあたいが晒し者になるなんてぇ!」
「ちょっと静かにしてもらえるかな? 今から入学式が再開されるんだからさ」
シンカがヘルルーガに文句を言う。
彼女たちに直接的なの血縁関係や師弟関係はない。
だが、ヘルルーガはシンカを一方的にライバル視して入学式をメチャクチャにしたのだ。
今回の件について、シンカは多少の責任を感じている様子である。
「それとも、まだ反省が足りないのかな?」
「ひぃっ!? い、いえ! もう充分です! はい! あたいは悪い奴なんです!! 勇者様に逆らってごめんなさい!!」
ヘルルーガが怯えている。
彼女は、シンカから散々に電気アンマをくらいまくったあげくに、上り詰めさせられてしまったのだ。
さすがにこんな辱めを受けたのは初めてに違いない。
余たちがこんなやり取りをしている間にも、入学式の再開準備が整ったようである。
校長が再び壇上に姿を現し、挨拶をした。
「……であるからして、諸君らの未来がより豊かになることを祈っているわけであります。今日はちょっとしたハプニングもありましたが、皆さんの笑顔を見ると問題はなかったようですね」
ちょっとしたハプニングとは、もちろん首席合格者のユリアとヘルルーガによる暴挙のことだろう。
あれほどの事態が発生したとなると、本来は警察や軍隊すら出動しかねないところだった。
フレアとシンカという強者により収められたとはいえ、その後の教師や生徒たちの落ち着きっぷりもなかなかのものだった。
さすがは世界的に優秀な者が集められている学園といったところか。
「えー、続きまして首席合格者の挨拶といきたいところですが……」
校長が視線をチラリと会場の片隅に向ける。
つられて、生徒たちも視線をそちらに向ける。
そこでは、首席合格者のユリアとヘルルーガが正座していた。
「ううっ……」
「くっ……」
校長や生徒たちの視線に耐えられないのか、二人の体がプルプルと震えだす。
だが、近くでフレアとシンカに見張られているためか、逃げ出そうという気配すらない。
余は彼女たちの様子を見て、思わず苦笑する。
どうやら二人は完全に心が折れたようだな。