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#そのじん
笑う門には福来る
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nanana

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翌日。
M!LKのメンバー全員が事務所の会議室へ集められた。
部屋には重たい空気が流れている。
誰も冗談を言わない。
誰も笑わない。
マネージャーが来る前から、この場にいる全員が昨日の出来事を知っていた。
勇斗は部屋を見回す。
大智。
柔太郎。
舜太。
そして、仁人。
目が合った。
仁人は小さく頷くだけだった。
その姿を見て、勇人は静かに立ち上がる。
「……ごめん。」
深く頭を下げた。
「俺の不注意だった。」
誰も動かない。
「みんなに迷惑かけた。本当にごめん。」
静まり返った部屋に、その声だけが響く。
しばらく沈黙が続いたあと、小さく息を吐いた舜太が口を開いた。
「……ハヤちゃん。」
勇斗はゆっくり顔を上げる。
「恋人、おったんやな。」
責めるような口調ではなかった。
純粋な驚きだった。
「俺、ハヤちゃんは恋人とか作らへん人やと思っとった。」
その言葉に、大智も苦笑する。
「俺も。」
柔太郎も静かに頷いた。
「仕事が恋人みたいな人だと思ってた。」
3人の反応は似ていた。
恋人がいたことよりも、
勇斗が誰にも気づかれないまま、恋人を作っていたこと。
その方が驚きだった。
勇斗は困ったように笑う。
「そう思わせてたなら、そうなんだろうな。」
そこへ会議室の扉が開いた。
マネージャーが静かに入ってくる。
「全員そろっていますね。」
誰も返事をしない。
マネージャーは机に資料を置き、全員を見渡した。
「昨日の件ですが。」
その一言だけで、部屋の空気がさらに張りつめる。
「まず、一番問題なのは恋人がいたことではありません」
誰も顔を上げない。
「恋愛をするな、と言うつもりもありません。プライベートまで縛る権利は、私たちにはないです」
そこで一度、言葉が切れた。
「ですが――あなた達はアイドルです」
静かな声だった。
けれど、その場にいた全員の表情がわずかに強張る。
「あなた達の言葉ひとつ、行動ひとつで、今まで積み上げてきたものが大きく揺らぐこともある。それは、自分一人の問題では済みません」
勇斗は黙ったまま、膝の上で手を組んでいた。
「今回のことも、勇斗一人の問題ではない。
影響が出れば、M!LK全体の活動にも関わってきます」
その言葉の重さを、理解できない者はここにはいなかった。
「今後の活動を考えた時、このまま交際を続けることが最善なのか。」
一拍置く。
「それも含めて、考えなければいけません。」
“別れた方がいい。”
そうは言わなかった。
けれど、この部屋にいる全員が、その言葉を聞いたような気がした。
沈黙が落ちる。
誰も口を開けない。
最初に動いたのは大智だった。
「……佐野さん。」
勇斗が視線を向ける。
「一個だけ聞いてええ?」
「うん。」
大智は少しだけ迷うように息をついた。
「俺らさ。」
言葉を選びながら続ける。
「佐野さんは、M!LKを一番に考える人やと思ってる。」
柔太郎も静かに頷く。
舜太も同じだった。
誰よりもグループを優先してきた人。
だから今回も。
苦しくても、きっとM!LKを選ぶ。
3人とも、そう思っていた。
「……でも。」
大智はまっすぐ勇斗を見る。
「それは俺らが勝手に思っとるだけや。」
部屋が静まり返る。
「佐野さん自身がどう思っとるんか、ちゃんと聞かなあかん。」
勇斗は何も言わない。
大智はゆっくり続けた。
「その人のこと、どう思っとる?」
少しだけ間が空く。
「これから、どうしたい?」
そして最後に、一番聞きたかったことを口にした。
「……別れるつもりなん?」
その瞬間。
部屋中の視線が、一斉に勇斗へ集まった。
仁人だけは俯いたまま、拳を静かに握りしめていた。
コメント
1件
読ませていただきました。第3話、重い空気の中でメンバー一人ひとりの反応が丁寧に描かれていて、胸が締め付けられるようでした。特に大智くんが「俺らが勝手に思っとるだけ」と勇斗自身の気持ちを確かめたシーン、あの問いかけが本当に印象的です。グループを優先してきた人だからこそ、メンバーが一歩引いて勇斗の本心を聞こうとする優しさが沁みました。仁人くんが俯いて拳を握るラストも、無言の感情が伝わってきて…続きがすごく気になります。素敵なお話をありがとうございます🌷