テラーノベル
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夕日が地上を綺麗なオレンジ色に染め上げた。
金髪がきらきらと橙を跳ね返して光る。
魔理沙の横顔は相変わらずいたずらっぽく笑っていた。
なんの前触れもなくぴょんと神社の縁側から飛び降りた魔理沙は、瞳を弓
なりに細め、いつも通りのあの約束を口角の上がった唇に乗せる。
「また明日!」
霊夢は、はいはい、と笑って揺れる背中を送り出した。
いつも通り。
ほら。いつも通りのこと。
ほんの日常の、何気ない一言。
なんの根拠もない、うわべのお約束。
でも、たとえうわべだったとしても。
破られるとは、夢にも思わないでしょう?
…魔理沙は、
もう博麗神社に訪れることはなかった。
「今日は遅いわねぇ」
不安を紛らわすために口に出す。
なんだか嫌な予感がした。
眩しいくらいの笑顔。
思い返せば、あの日の夕焼けはやけに綺麗だった。
あんなに綺麗な夕焼けの日は、何かしら起こる。
迷信。噂。都市伝説に過ぎない。
そんなの信じるわけがない。
だけど、
だけど。
あの日の魔理沙は、一度だけ振り返った。
手を振るわけでもなく、満面の笑みを見せるわけでもなく。
妙に優しく、柔らかく笑った。
いつも通りじゃ、なかった。
もう魔理沙は博麗神社に来ることはない。
人間だから。
いつかこうなることはわかってた。
人間だから。
いつか、別れが来るのはわかってた。
人間…だから?
永遠だなんて、夢物語でしょ。
まごうことない私の言葉だった。
あいつがいなくなったあとも、世界は相変わらず綺麗。
私にとって大事なものが失われたって、世の中は変わらずまわるんだよ。
町ですれ違う人間は皆幸せそうに笑ってるように見えて。
なんだか自分がとってもばかに思えた。
たった4文字で、人は明日を信じてしまう。
・・・・
また明日。
たった4文字でしょ。
不安定なソレが約束された未来みたいに思えてしまう。
どうして引き止めなかった?
どうしてもっと知ろうとしなかった?
もし、数分でも遅れてたなら?
もし、本気で引き止めてたら。
あいつは、今でも私の隣で笑ってたんだろうか。
ねぇ?…魔理沙。
今日も、日が沈む。
魔理沙がいなくなった世界でも、変わらず夕日は綺麗。
縁側に座った私の影が地面に薄く落ちた。
惰性でやり続ける私の習慣。
猫が目の前を横切って、帰りを急ぐ子供の声が遠く向こうに聞こえた。
チリン。
どこかから鳴った鈴の音。
金色の風が吹く。
隣に、懐かしい気配がした。
もちろん誰もいないけれど。
地面に落ちた影は、2人分を示して揺らめいていた。
一つはもちろん私のもの。
もう一つは。
よく笑って、よく話して。
誰よりやんちゃで、たまにどきどきするくらい大人になる。
あの日、何かを悟ったように笑って死んだ、白黒魔法使いのものだった。
思い焦がれたそのシルエット。
特徴的なとんがり帽子。
ただの影なのに。
私には、目を細めて笑う金髪の彼女が鮮明に見えた。
次に風が吹いたとき。
影は消えていた。
顔を上げると、沈みきったあの夕日の代わりに、紺色とわずかなオレンジのコントラストがよく映えた空が目にうつった。
星がまたたくその空に、たった一つのお約束。
あいつが使った、人を未来に運ぶ魔法。
「…また明日。」
あともう少しだけ、夢を見ていたかった。
コメント
1件
わあ……切なすぎるよ……。いつもの「また明日」が、たった4文字でこんなに重くなるなんて思わなかった。夕焼けの綺麗さが逆に胸に刺さるね。霊夢の後悔と、魔理沙の優しい笑顔のギャップが泣ける。最後の影が2人分になったとこ、すごく好き。魔法みたいな一瞬の逢瀬、でももう戻れない現実。言葉がすごく綺麗で、心にじんわり染みたよ🌙
りゆ
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