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 インガンダ・ルマがどんな魚かについては、ひととおり冒険者ギルドでミーニャさんに聞いた。

 しかし何処で釣れる魚か、船の手配はどうすればいいのか、仕掛けや餌は何を使うのか。

 その辺りについては、ミーニャさんも把握していなかった。


 いちおう前世のウィークリーバカンスフィッシュに使う仕掛けについては、ある程度は覚えている。

 しかしこの世界でどうやって釣っているかは、冒険者ギルドにも資料はないようだ。


 こういう場合は、知ってそうな人に聞くのが一番だろう。

 となると……

 ということで、冒険者ギルドを出た後の俺の足は、自然にベルクタ漁業・水面管理事務所、もっと具体的に言えばバラモさんの方へ向く。


「ああ、その件なら漁業組合にも依頼として入ってきている。前はアクラのマーシュさんが時々揚げていたんだがな。依頼によると、ここ3年は獲っていないらしい。確かマーシュさんは、アクラの漁業組合の……」


 やっぱり聞いて正解だったようだ。

 そう思う俺の前で、バラモさんはいつものように、机上に立てかけてあるファイルのひとつを取ってパラパラめくる。


「ああ、あった。マーシュさんは3年前、アクラ漁業組合の事務長になっている。つまりは俺と同じで、現役引退したんだろうよ。ただあの人はドワーフだから、まだまだ引退するような年齢じゃねえ。それに他の漁師には扱えねえ魔法機関を積んだ船で沖まで出て漁をすることに、こだわりと誇りを持っていたはずだ」


 今までインガンダ・ルマを獲っていた漁師が現役引退したから、手に入らなくなったということのようだ。

 ただバラモさんは、引退したということに納得がいっていない様子だ。

 ファイルをめくりながら内容を読んでいたけれど、探している内容はなかったらしく、首を横に振って、ファイルから顔を上げる。


「何故引退したかはわからねえ。でもインガンダ・ルマを手に入れる方法を探すなら、マーシュさんに話を聞くのが早いだろうよ。紹介状を書いてやる。だからちょっと待ってろよ」


 これはなかなかありがたい。

 何せ余所者の若造が行ったところで、話を聞けるかどうかなんて怪しいところだ。

 バラモさんからの紹介なら、話くらいは聞かせてくれるだろう。

 そうすれば何処で連れたのか、場所くらいはわかる可能性が高い。


「ありがとうございます」


「いいってことよ。この前貰ったカンディルー、美味かったしな」


 バラモさんは慣れた感じで書状を書き上げ、サインして封をした後。


「マーシュさんに挨拶なら、あれも出しとくか」


 思い出したかのように言って立ち上がり、部屋の隅にある戸棚から、木箱で保護された小甕を出して持ってくる。


「あの人はドワーフだから、酒は度数が強きゃ強いほどいい。ってことで、昔カサクラのドワーフから貰った甕酒だ。酒というよりはほぼアルコールで俺でも飲めねえけどよ。マーシュさんなら喜ぶだろうよ」


「ありがとうございます。しかしドワーフで漁師というのも、珍しいですね」


 ついそんな感想を言ってしまう。

 ドワーフは基本的には開けたところより、地下が好きな種族だ。 

 具体的には洞窟とか鉱山とか。

 海で漁師をやっているドワーフというのは、前世でも聞いた事が無い。


「元々ずっと東の国の出身で、師匠と一緒に魔法船で旅していたらしい。その師匠がアクラで亡くなって、それでそのままアクラに腰を落ち着けたと聞いたな。今からもう30年以上前の話だが」


「お知り合いなんですか」


「昔はドーソンにも良く来たからよ。あの人の魔法船なら、ちょっと出かける程度の距離だからな。ということでこの紹介状と酒を持ってけば、話は聞いてくれるだろうよ」


「ありがとうございます」


 両方を受け取って、魔法収納アイテムボックスへ。


「それじゃ帰ってきたら、マーシュさんがどんな様子だったか、話を聞かせてくれや」


「わかりました。本日はありがとうございました」


 俺は頭を下げて、漁業組合を辞する。

 話の感じではバラモさん、マーシュさんについて、『昔はドーソンにも良く来た』以上に知っているような感じがした。

 しかしそこはプライベートだから、聞く必要はないだろう。


 それではアクラに行ってこようか。

 しかし俺はアクラの地理がわからない。

 一応住所は聞いているので、冒険者ギルドに聞けばわかるだろうけれど。


 でもアクラに行くのなら、他にも向こうで探したいものがある。

 釣り道具と、本だ。

 以前小説や百科事典等が何処で手に入るか聞いた際、クリスタさんがこう言っていた。


『そういった本となるとせめてアクラ、出来れば王都ハイファや商都ナムティ等に行かなければ手に入らないでしょう』


 そうなると、行く前にある程度アクラに詳しい人に話を聞いた方がいい気がする。

 そしてミーニャさんは、アクラにいたことがある筈だ。

 

 なら一度冒険者ギルドに戻って、ミーニャさんに話を聞こうか。

 でも仕事中だと申し訳ないよな。

 なら言伝をして、仕事が終わるのを待つとするか。

 ただ講習生と顔を合わせるのは、出来れば避けたいところ。


 よし、それなら確実な方法をとることにしよう。

 その確実な方法とは、魚釣りだ。

 新鮮な魚を調理して夕食を作れば、まず確実にミーニャさんはやってくる。

 そこで話を聞けばいいだろう。


 今日一日が終わってしまうけれど問題ない。

 今日のスケジュールは今日中に終わらせないと、明日以降が地獄になるように予定が詰まっているなんてことはないのだ。

 上司や各部署からせっつかれているなんてこともない。


 このインガンダ・ルマの件だって、明後日までに終わらなければ先送りすればいい。

 だから焦らず、自分のペースでいこう。

 

 だから今は、ミーニャさんに話を聞くための魚釣りに行く。

 短時間で確実に釣果を出せるというと、やっぱり岸壁からサビキ釣りだろうか。


 カゴ釣りや投げ釣りも含めて挑戦してもいい。

 以前廃坑調査任務の前に、捕食用の魚を確保する為にやったのと同じように。

 餌も仕掛けも道具一式も、魔法収納アイテムボックスに入れっぱなしだから大丈夫だ。


 そんな訳で、俺は港へと向かうことにした。  


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