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相席事件から二週間程たったころ、俺は大学の女友達の”竹内 春”と二人で出掛けることになっていた。
あれ以来ジンさんとは会えていない。
春は行きたい場所があるらしいが、どこかは教えてくれなかった。
待ち合わせ場所で携帯をいじりながら待っていると、通知が表示された。
ジン、と見えたのでタップすると、
[前]
とだけ送られていた。
不思議に思って前に視線だけやると、人混みの奥に見慣れた黒髪にサングラス…。
「えっ」
こちらが気付いたことに気付いたのか、パァッと笑って指でハートを作った。
驚いて石化していると、横にはあのおっきな人も居てなんだかニヤニヤしている…。
ニコニコと笑っているジンさんを見たままその場で固まっていると、また通知がきた。
[ビックリした?]
「…かわい”い”かよ…」
自分の謎の思考に苛立ちつつ、返信を送った。
[ビックリしました]
[やった✌️]
もう一つ送ろうとして、少し考えて消す。
気分がいいのかいつもより笑顔のジンさんに近づこうとしたとき、丁度春が来た。
「お待たせ~!早いね!」
「あ…うん、全然待ってないよ」
ジンさんの方へ視線を戻すと、少し止まってから手を振ってどこかへ行ってしまった。
少し寂しくなって、最後に一通だけ送った。
[今度は、俺からです]
「どしたの?」
「んーん、気にしないでいいよ。どこ行くの?」
「えっとね、こっち!」
繋ごうとする手をさりげなく避けて、後ろをついていった。
スマホを持ちながら両手で作るタイプのハート…器用だなあの人。
一緒に居るのは春なのに、頭の大部分はさっきのことを考えている。
少し申し訳なく感じていると、ついたのは可愛らしい家?お店?だった。
「ここね、新しくできたカフェなんだ~♪」
そう言って入っていく。
抵抗はありつつあとに続く。
中もちゃんとピンク…。
案内された席に座ると、秋のスイーツフェアをしていた。
芋や栗系のがいっぱい。
俺はホイップラテ、春は秋の味覚大集合スイーツパフェを頼み、世間話を始めた。
「最近絵がうまく書けなくてさぁ…スランプなのかな…」
「別に上手いと思うけどね、俺は。自分へのハードルが高いんじゃない?君が思ってるより上手いしキレイに書けてると、俺は思うよ」
「なんでそんな欲しい言葉すぐ言ってくれるの?」
「姉のおかげかな」
昔の対女子特訓(笑)を思い出し身震いする。
もう二度とやりたくねぇ…。
「いいお姉さんなんだね」
「うん、尊敬してるよ」
「失礼します、コーヒーと秋の味覚パフェでございます」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます!わあ、めちゃ美味しそうだね!」
「んね」
パシャパシャと小さくシャッター音が鳴る。
その間は俺も手をつけない。
満足したのか携帯をなおし、スプーンを手に取る。
「ん!美味しい!」
「…うん、うまい」
一口頂戴あげるの流れを回避しつつ、安全に飲み終わった。
ホイップは甘いけど軽かったし、コーヒーもちゃんと苦めの味で美味しかった。
満足して会計を済ませ外に出る。
「美味しかったね、また来る?」
「美味しかった。そうだね、いつか来ようか」
その後も買い物や食べ歩きをして、春を駅まで送った。
「今日はありがと!」
「うん、こちらこそ楽しかった」
「へへ、また誘うね!」
彼女は嬉しそうに改札へ歩いていった。
肩の力を抜いて自分の家に戻る。
帰りジンさんに会えねえかなー、なんて思いながら、そんなことあるわけないので何事もなく家に着いた。
誰もいない家に帰ると、ほんの少し寂しく感じる。
姉は流石にこの歳で二人暮らしはちょっと嫌だし、それ以外家族は居ないし、他人となんて無理だし。
犬飼かうかなーとか思いつつ、夕飯の準備を始めた。
シャンプー中、よく背後に気配感じるよね。
ただの気のせいなんだけど、ちょっと面白い。
それをこの前サークル仲間に話したら引かれたが…。
湯船に浸かって今日のことを思い出す。
ハート…あれよくスマホ落とさないよなぁ。
出てくるのはやっぱそんなこと。
意外と器用なんだなとか、八重歯あるんだとか。
我ながらちょっとキモくね?とか思いつつ、つい思い出してしまう。
「…かわい」
何に対して?
今日はおかしい。
今日だけの気はしないが、ほんと、風邪でも引いたか?
冷水で頭を冷やして、いつもより早めにあがった。
長風呂だったからだろ、きっと。
そう自分に言い聞かせて。