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最近寒くなるの早くない?
12月の夜だけどさ、去年ここまでじゃなかったじゃん。
マフラー越しに悪態をつきながら、携帯を両手で持つ。
画面には、[もう着く]の四文字。
今日はジンさんと二人で遊べるらしい。
違和感を覚えてからあまり話しかける勇気が無かったが、たまたま一昨日再開して今日遊ぶ約束が出来た。
すでになんだか楽しい。
今日も髪下ろしてるのかな、またタートルネックかな、とか考えてはドキドキして。
…これ…恋だったりして。
「まぁ…そんなわけないか…w」
「何が?」
背後からヒョコリと画面を覗く。
驚いて振り返ると、…やらかい…???
「ッッ…!!すみません!ごめんなさい!!事故です!ほんとごめん!!です!!」
急いで距離をとって謝る。
ジンさんは目を見開いて固まっていたが、すぐにハッとして首に巻いていたマフラーに手を掛けた。
「は、ぇ、…いや…ごめん、僕も…その…近かった、よね、ごめん…」
マフラーをグイと持ち上げる。
珍しくポニーテールにされている髪がフワリと揺れた。
「ッスゥ…えーっと…本当にすみませんでした…」
「いやほんまに今のは俺が…僕が悪い。調子乗りすぎたすまん」
深々とお互い頭を下げる。
ジンさんは珍しく笑顔も口調も崩れてしまっている。
さっきまで手が震えるくらい寒かったのに、今は全身が熱いし別の意味で手が震えてきた。
チラリと彼の方を見ると、顔はサングラスと鼻の位置まで上げられているマフラーで見えないが耳が真っ赤になっていた。
視線もめちゃくちゃ泳いでいる。
「ぁー…い、こ、はよ行こ、ほら、…あんま見んなや…!」
ジッと見ていると、そう言って先々行ってしまった。
思わず零れた笑みを抑えて、遠くなっていく背中を急いで追った。
「…」
「…」
夜ご飯の為に予約したカフェレストランについても、ジンさんは目すらあわせてくれなかった。
暖房で暖かいはずなのにマフラーすら外さない…。
そんなに嫌だったのか。
「ジンさん?」
「…ん?」
口角は上げてくれるが目は別方向だし、いつものもう一言がない…。
「怒ってますか…?」
「怒ってへんよ?」
一瞬目があったがすぐそらされてしまった。
このままご飯食べるの?雰囲気やばくない?
どうにかしようにも何も思い付かない…。
そんな状況のまま料理が運ばれてきてしまった。
オススメのパスタ二つ。
カルボナーラと、ミートパスタ。
フォークを取ろうと手を伸ばすと、丁度ジンさんも取ろうとしたようで手が当たってしまった。
「あっ…すみませ…」
「…ッ!!」
勢いよく手が引っ込められたかと思えば、ジンさんはさっきよりも赤くなっていた。
小さく震えてる気もする。
こんなこと言うのもあれだが…意外と初心?
「ジンさん…照れてます?」
「はぁ”っ?!いや…ん”ん”…別に?早よ食べよ冷めるで」
一瞬取り乱したが、すぐにいつも…よりはなんか変だけど、笑顔に戻る。
マフラーは外してくれたけど。
「顔真っ赤ですよ」
「ッ”ッ”…暖房暖かいしね。外寒かったし」
やべ楽しい。
「ジンさん今すげぇ可愛い」
「…は?」
彼は目を大きく見開き、持っているフォークも落としかけている。
「…え、は?いや、間違えた。いや間違えてない。は?」
「…あんまおじさんからかうなよ…」
そう言って食べ始めた。
「からかってませんよ…」
それだけ言って、俺もフォークを取った。
めちゃ美味しい。
けど…味しねぇー!!
心臓痛い…なんだよ!今…すげぇ可愛い…って!!きっしょ!はっず!!最悪すぎんだけど!!
会話もろくに出来ず食べ終わってしまった…。
ジンさんはまだ三分の二くらい残ってる。
お口ちっちゃい…ハムスターみたい…。
「ん”…あんま見んなや…」
軽く睨まれる。
「先食べ終わった人の特権です」
自分でも何言ってんのか分かんない。
けど、優しいジンさんは何も言わずまた食べ進めた。
マジ可愛いなこの人。モグモグじゃなくてモッキュモッキュじゃん、可愛いかよ。
俺がほっこり癒されていると、食べ終わったらしい彼は口元を拭きながら睨んできた。
「ほんまに、おじさんをからかうなや…」
「からかってないです」
「からかっとるやん」
不機嫌気味にそう言う。
すみません可愛いです。
「この前おった女の子にそれやったり。こんなおじさんやのうて」
「拗ねてます?」
「なんでやねん…どうなってそうなったんや…」
呆れたようにタメ息をつくが、なんだか嬉しそう。
ニマニマしているとデコピンされた。
ひどい。
「痛いっす」
「しらーん。君が悪い」
そう言って会計をしに行った。
…あっちょっと待って俺も会計!
「奢られとったらよかったんに」
「駄目です!ってか俺が奢るつもりだったんですよ?!」
「年上に甘えとき」
「年上?ふーん?」
「なんやねんその顔」
最初より雰囲気もやらかくなった。
よかった。
次は買い物!何を、とかは決まっていないが、もうすぐクリスマスなのでお互いへのプレゼントを見る。
いっぱいありすぎる。
っというか俺達ちゃんと話すの二回目じゃね?好みとか何も分かんないんだけど?
カフェレストランで色々聞き出そうと思っていたのに何も話せていないし…。
え、二回目なのにこの距離感?えぐくない?俺最低じゃん。
なんだか急に焦ってきた。
「わ、かわい」
「へ?」
とても小さな声でそう言う。
ジンさんの視線の先には、猫グッズ店があった。
「…わーあれかわいー、入りましょ?」
「!えーよ、猫好きなん?」
「動物全般ですね」
「そなんや、いーねぇ」
嬉しそうにニコニコする。
猫が好きなのだろうか。
店の中にはキーホルダーなどだけでなく、コップや歯ブラシなどのあまり見ないタイプのグッズも売られていた。
ジンさんはその中のクッションが気に入ったらしい。
選ぶの物も可愛いかよ。
少し見てから、また別の店へ向かった。
その後も色々見てみたが、猫か何かの動物系のものがいいっぽい。
微笑ましく思いつつ、それを悟られないようマフラーに顔を埋めた。
「前見えてる?」
「めちゃ見えます」
12月の夜の街はイルミネーションや装飾が沢山飾られていて、キラキラ輝いている。
普段はあまり外には出ない時期だが、たまには良いなと感じた。
特に、この人となら。
「なんや」
「いえ、…楽しいなって」
「…そりゃ、良かったわ」
恋、無縁なんかじゃないみたい。