「今度は粘土工作か。」
「そうなんすよ。ほんと、今度こそヤバいです。」
「上鳴、かれこれ1時間は筆にぎってるんですよ。」上鳴は紙粘土で作った林檎の色づけに苦戦している。
「赤って言っても色んな赤があるだろ。黄色寄りの赤とか…。ここに黄色足してみたらどうだ??」
うっかりしてしまったアドバイスに、その場にいた全員が、豆鉄砲をくらった顔をしている。
「先生、美術得意だったんですね。」
芦戸が、意味深な笑顔で言ってきた。
「…まぁな。」
「心絵先生とぜってーなんかあったよな。まさか、付き合ってセ…!?」
「うるさいわよ。」
蛙吹が峰田の余計な口を塞いでくれて助かった。峰田は適当に言ってるんだろうが、間違ってないので何とも言えない。
「先生のおかげで、終わりましたー!!」
「良かったじゃん!!おつかれ!!」
「いいんじゃない??本物と見間違えそう。」切島と瀬呂が苦労を労う。
「全員、美術以外の成績を気にしとくんだな。毎度のことながら、さっさと寝ろよ。」そう言って寮を後にした。
任務中偶然、彼女と遭遇した。
「先…じゃなくて、消。いやイレイサー…!!」それにしても、呼び名を使いわけるのも一苦労だ。彼女は美術専門店の袋を提げている。「道中気をつけて。」
小声で伝え、捕縛布を伸ばしビルに昇る。任務を終え1番にスマホをみると、お疲れさまのメッセージが。感謝の言葉と共に次の休みはどこに行こうかと返信し、残りの仕事に取りかかった。
「貴重な休みに、デートしてくれてありがとうございます。」
「良いんだ。美樹と過ごす時間が楽しいから。」
今日は、蝶々園でスケッチ。
「虫は大の苦手なんですけど、蝶々だけは平気なんです。」
彼女が手を差し出すと、自然と蝶々が集まってくるようで。その姿が神々しくて思わず写真に収める。
「ちょっとだけ、放してみようかな。」
Hallelujah Forever and ever
唱えると、たちまち絵が浮かび上がった。
「これは、すごい。」
神秘的な空間になり、思わず感嘆の声を漏らす。どれが本物かわからないくらいだ。
「永遠に。っていいながらも、消せば永遠じゃなくなるんですけどね。」
白く塗りつぶすと粒子になって消えた。
「消さなければ、永遠だよ。」
言いながら、写真を撮ったりしながらまわる。ほんとに彼女といると楽しくて、いつの間にか時間が過ぎていく。
今日は、外で食事を済ませ。
「すまない。休みといいながら、夜も一緒にいられなくて。」
「いえ。大丈夫です。残りのお仕事頑張ってくださいね。」
彼女をアパートまで送り届けて、撮った写真を見返しては、余韻を感じながら事務仕事を片付けた。
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