テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「おはようござ…チッ」
「えぇ〜、ちょっと酷くない〜?仮にも恋人にする反応じゃないよぉ〜。」
坂本商店に出勤して、坂本さんに挨拶をしようと思ったらこれである。なぜコイツの顔を今見なければならないのか…。南雲は確かに俺の恋人だ、ちゃんと愛してはいる。しかし、だからといって勤務中に会いたいという訳では無い。
俺の眉間にシワが寄っているのを見て、南雲はケラケラと笑った。ウザイとは思う、だけどそれだけじゃなくて可愛いと思ってしまったのだから、俺も相当なんだろうなと頭を抱えた。
「ふふ〜ん、シンくんにも用事があるんだけどぉ、先に坂本くんに話をつけないと〜。」
「…なんで坂本さん?」
「ナイショ♡」
そう言い残して、南雲は事務所へと引っ込んだ。そしてそれから間もなく、物が壊れる音が鳴り響いた。。中からは南雲の笑い声も聞こえてくる。 十中八九、南雲が坂本さんの気の触る事を言ったのだろう。やっぱりアイツは馬鹿だなと呆れてしまったのは言うまでもない。
それから5分経った頃だろうか、青筋を浮かべた坂本さんと、ウザったい笑みを浮かべた南雲が事務所から顔を出したのは。チラリと一瞬だけ見えた事務所内は物が散乱して見るも無残な姿となっていた。
…葵さんに怒られる。
坂本さんの頭にもその事が浮かんでいるようで、事務所へと視線を向け、引き攣った顔をしていた。 しかし、そんな様子もお構い無しに南雲は俺に近付いてくる。
「おい、近づいてくるな。あっち行け!」
「えぇ〜?無理だよ〜。」
後ろに後退していたが、背中が壁にぶつかったことでとうとう逃げ場を失った俺は、呆気なく
南雲の長い腕に捕まってしまった。南雲の影に隠れて見えないが、坂本さんから殺気を感じて背筋に冷たいものが伝う。あぁ、やっぱりコイツがいるとろくな事が無い。
「あはは、それじゃあシンくんは貰ってくよ〜。」
「ちょ、はぁぁぁぁ!?って、待ってよ!」
「…貰っていくな、しっかり返せ南雲。」
「はいはい、わかってますよぉ〜だ。ほら行くよシンくん♡」
「おい、まだ話がっ…あぁもう!!行ってきます、坂本さん!!」
坂本さんに挨拶を告げるや否や、南雲は俺を横抱き…所謂姫抱きをした。
ホントに勘弁してくれ…。見ろよ、坂本さん。あんなにキレてるよ…。あぁ、何でこんな奴好きになったんだろう。でも、こいつ優しいんだよな…今だって、あんなに飄々とした態度とってるけど、目は馬鹿正直に、ごめんね、と訴えて来るんだ。はぁ、惚れた弱みってやつか。今回だけだからな、バカ南雲。
order御用達の黒塗りのレクサスLSにの乗せられる事、早2時間。その間の南雲は、非常にご機嫌だった。俺の指先をひたすらに触ったり、鼻歌を歌ったり。傍から見ても、僕は今機嫌がいいんだ、と言わんばかりである。おい、運転手さんが不審者を見るような目で見てるぞ、やめろいい加減。
「おい、いつまでそうやってんだよ。てか、いつ着くの?これ」
「ん〜、後ちょっとの筈だよぉ。シンくんったらせっかちなんだから〜♡ 」
「いや、誰だって目的地も告げられずに、車に2時間も揺られてたら、疑問にだって思うだろ…。」
「あはは。それよりもさ、僕と楽しい事して時間潰さない?」
その言葉と同時に南雲顔がズイッと近づいてきた。…なんか、雲行き怪しくね??
「は?お前何言ってんの??…やーめーろー!!!」
「もうっ、シンくんのケチ」
27歳の大男の膨れっ面なんて誰得だよ…。なんてそんな事を考えていれば
「あ、あのう…。目的地に着きました…」
可哀想な事に、運転手の顔は引き攣り、声は次第にしりすぼみになっている。全て南雲のせいだ。
「あ、ありがとうございます!…ほら、お前も礼ぐらいしろ。ったく。」
「えぇ〜?僕、お礼なんか行ったことないのにぃ。まぁシンくんがそう言うならさぁ、言ってあげるけどぉ」
そういうと南雲はチラッと運転手に目を向けると、要らないウインクをして、「ありがと〜♡」と全く気持ちの籠っていないありがとうを口にした。…もういいよ、コイツはそういう奴だ…。
車から降り辺りを見回すが辺りは木々で生い茂っている。どうやら車は山中で止まったらしい。
しばらく南雲の後ろを着いてくいくと、1軒の廃屋が目に入った。…ここに入るとか言わないよな、なんてフラグめいた事を考えた。
「シンくん今、ここに入るとか言わないよなって考えたでしょ?当たりだよ♡今からここに入りまぁす。」
「げっ、マジかよ…。最悪だ」
南雲に背中を押されながら、廃屋に足を踏み入れる。しかし、思っていたよりも中は汚れていなかった。何でかなー、と考えていると聞きなれない声が俺に話しかけてきた。
「よぉ、久しぶりやわ。シンくん。坂さん、元気にしとるん?」
「…猫ちゃん。今日は熊さん居ないの。」
神々廻さんと大佛さんが中で椅子に腰かけていた。南雲と違ってカッコイイなやっぱり。と一瞬ズレた考えをしてしまったが、違う違う。今はそんな事を考えている場合じゃなかった。
南雲を含めたorderが3人。そこに混じる部外者の俺。…なんで??坂本さんの誕生日とか未だ先じゃね?とか、まさかこの4人でピクニック?とか、ホントに馬鹿な思考回路は全く仕事をしてくれない。…いや、ホントはさ、 薄々気づいてたよ?坂本さんに許可を取るところとか、order御用達の車とか…。つまりはそういう事だろう。なんで着いてきちゃったかな俺。なんて今更後悔しても遅い。
「…何すんだよ。」
「シンくんてば、話早くて助かる〜♡引き攣ってる顔も可愛いね♡」
コイツやっぱりイカれてやがる。
「なんや、南雲。お前、シンくんに何も言ってへんの?流石に可哀想やと思うわ。」
そうだよな、神々廻さんには常識あって助かるよ。
「…猫ちゃん、これあげる。」
…大佛さん、俺は猫じゃなのでマタタビ貰っても嬉しくないです。
凹凸の激しいorder3人に果たして俺は着いていけるのか。早くも俺の胃は悲鳴をあげていた。
今回のターゲットは、とある成金一家の当主である男だという。その男、表向きは慈善活動の一環で身寄りのない子供たちを、自身が経営する施設で保護するというもの。しかし、そこで行われていることは慈善活動とは程遠いものだそうだ。
子供たちはまず、逃げ出さないように暴力で支配される。そして、逃げる気力を失った子供たちは、2つの種類に分類され、オークションに出品される。1つ目は、人間モルモット。主に研究所にて被検体として売られる。2つ目は玩具。殺すも生かすもオーナー次第。痛めつけられ、屈辱されて。人間の尊厳など踏み潰したかのような扱いを受ける物として売られる。
成金の男は、子供たちの上に成り上がった、最上級のゲス野郎というわけだ。
…反吐が出る。俺の率直な感想だった。そんな奴を生かしていて良い訳がない。これ以上、罪のない子供たちが犠牲になるのを黙認していたくない。
「ターゲットは分かった。けど、それだけなら俺は要らないだろ?んで、俺の役割はなんだ?」
「100点〜!!シンくんの仕事はね、殺す人と殺さない人を僕たちに教えてくれれれば良いだけの簡単なお仕事さ!」
「教える?」
「そう!実はね、成金男、殺し屋と一般市民の護衛の人、いっぱい雇ってるみたいなんだよね〜。僕たちも一般市民は傷付けるのは本意ではないしぃ。もちろん、僕達も確認はするんだけど、行動される前に潰しておくのがベストだもん。あそこには子供もいっぱい居るからね。そこで、シンくんの出番って訳!シンくんには僕たちの連携を取ってもらいまぁす。」
「ん、分かった。」
「シンくんってば、2ᖴまでならエスパーの力使えるって聞いたからね〜♡終わったらちゃんとご褒美もあげる♡ 」
「ん…。」
そう言って南雲に頭を撫でられる。途端にふわふわとした気分になった。
「ここに俺らも居ること忘れんでもらってもええ?南雲が気持ち悪くて見てられへんわ。」
そうだ、そうだった。神々廻さんと大佛さん居たじゃん。人前で何イチャコラしようとしてんだ俺。
「はぁ。兎にも角にも、シンくんには頼りにしとるで〜。」
そう言って神々廻さんは大佛さんと共に隣の部屋へと消えていった。
疲れた。気まぐれで続けるかも