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紅茶を半分程度飲んだ辺りで、皆さん、ゆっくりと起きてきた。
「いい香りがしたので起きてきたのだ」
昨晩の戦犯は、元気いっぱい。
「ちょっと眠いのです」
未亜さんは眠そう。
それでも、取り敢えず先輩以外は皆さん起きて、朝のティータイム。
「これで御飯を食べたら撤収って、ちょっと勿体ないですね」
美洋さんの言葉に、うんうんと全員で頷く。
でも。
「今日は帰ったら、理科・社会対策が待っているのです」
未亜さんが、そう本日の予定を告げる。
そう、帰ったらまた、図書館でテストに向けた勉強会。
既に問題も用意してあるらしい。
「美洋と亜里砂は、取り敢えず来年にはA組になってもらうのです。特に、亜里砂に対しては、昨日のお礼もあるので、厳しく厳しく指導する予定なのです」
「逆恨みなのだ!」
「昨日のお礼って、何ですか」
「これは、1年生の中での秘密なのです」
うんうん。
でも、未亜さんは、基本的に指導は厳しい派のような気がするけれど。
お礼に関係なく。
「さて、そろそろスープを作りましょうか。御飯も、火を止めて蒸らしておいて」
御飯のフライパンを、鍋置きの上に置いて、代わりに別の鍋でお湯を沸かして。
スープは、残りの野菜入りのコーンクリームスープ。
これが、冷めにくいし簡単だし、アウトドア向きだからだそうだ。
粉を入れて、スープが出来たころ。
まるで見計らったかのように、川俣先輩が起きてくる。
「おはようございます。そろそろ飯かな」
「ちょうど出来たところですよ」
そんな訳で、それぞれの食器に、炊き込み御飯とスープを盛って。
「いただきます」
と、朝食開始。
炊き込み御飯の御飯は、ピラフっぽく硬いけれど、芯が無いタイプ。
御飯とタマネギの甘み、鶏肉の自然な塩味とうま味、トマトの酸味で食べる感じ。
「この炊き込み御飯は初めて食べた味です。どんな感じに作るんですか」
「最初にタマネギを炒めて、色が変わったら、トマトと鶏肉と御飯と水を入れて、煮込むだけですね。水の量は、炊飯器で炊く時と同じで、御飯は、炊くというより、野菜やお肉の上で蒸す感じで。それなりの鍋でやらないと焦げ付きますけれど、ガラス蓋のフライパンで表面を見ながら、そして蒸らす時間を10分以上取れば、わりと簡単ですよ。調味料は無しで大丈夫ですよ」
「美味しいですけれど、微妙にどこか既視感が……」
「実は、川俣さんのビリアニを、先生なりに解析した副産物です。日本米にして、香辛料と調味料無しで」
「ベタなコーンクリームスープが、なかなか合うのだ」
そんな感じで、のんびり朝食を食べて。
一服したら、撤収開始。
そう言っても、食器や鍋を洗ったら、後は案外簡単。
何せ、テントは登山用だし、テーブルや椅子も簡単に折りたためるし。
そんな訳で、10時ちょうどにキャンプ場を出発。
「何か、名残惜しいですね」
美洋さんの言葉に、先輩が頷きつつ口を開く。
「それでいいんだと思うな。楽しいという事と、どうすれば出来るかという事。その2つさえ忘れなければ、今後やろうと思った時にいつでも出来る。山もキャンプ場も、逃げないしさ」
山は逃げない、か。
でも、他の日程やら天気やらで、なかなかうまく行かないけれどな。
そんな事を思いながら、僕達の秋のキャンプは、幕を閉じる事になった。
なお、当日午後と翌日、朝から午後3時まで。
亜里砂さんが、容赦無い未亜さんによる、穴埋め式暗記攻撃に襲われた事。
それに、美洋さんも付き合わされた事。
それはまた、別の話。
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