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人には五感というものがある。
視・聴・嗅・味・触
の5つである。
人が特に使っている物は
視・触
娯楽として感じるのは
聴・嗅・味
それぞれ違う役割を持って一つ一つが大事な感覚だ。しかし世界にはこの感覚が産まれた時から消えてしまった人、不慮の事故で消えてしまった人が存在している。
よく聞く事例としては視・聴・嗅だろう。
この5つの感覚の物語をこれから読んでいく。
感覚がどれだけ大事なのか、普通に生活している人達に知って欲しい。
しかし私は5つの感覚を持っている。
全てが分かるわけではない。
だが、「もし~だったら」という観点で想像してみるといいのかもしれない。
私は事故で両目が私の人生から消えてしまった。
私がまだ幼い頃、幼児の頃だった。
その記憶は鮮明に覚えている。
いつもお母さんと近くのスーパーで買い物をしていた時、事が起きた。
それはあまりにも早く、無惨に、人生が散った気がした。
スーパーの中で毒液を持った不審者が走り回っていると放送が入った。
買い物をしている人達はドタバタと足音を立てて出口から出ようとしたり、物陰に隠れようとしたりと、その時私は混乱していて泣いていた。
なぜ混乱していたのか、こんな状況だからだと思うかもしれない。でも状況が悪かったから。
お母さんに
「お菓子持ってくる!」
と言ってお菓子売り場に駆け足で離れてしまったから。
私1人。ぽつんとスーパー内に残った。
ギャーギャー泣いて、誰も私に声なんて掛けてくれなかった。それもそう。
そうしてるうちに誰かの足音が聞こえた。
タッタッと走ってくる音がした。
私はお母さんだと思ってその音の方向に涙を残しながら歩いていった。
出会ったのは運悪く不審者だった。
突然不審者に謎の液体を掛けられてどこか去ってしまった。
謎の液体に私はびっくりしてさっきの泣き叫びよりも大きい泣き叫びになった。
痛い、痒い、取れない、助けて、お母さん。
いつの間にか失神していたらしい。
目を開けると真っ暗だった。
目をパチパチさせても何も見えない。
「びゃぁぁぁぁん!!」と恐怖で泣き叫んだ。
目は液体によりダメになり視力は消えた。
目が痒く手で擦ったのが運が悪かったらしい。
手も火傷したような跡が残っているそう。
そこからは地獄の人生だった。
目が見えないからどこに何があるか分からない。
気軽に外出も出来ず、歩くこともままならない。
何度も何度も心が折れそうになった。
死のうと思っても勇気がないしそもそも見えないからどうしようと、死ねない。
だからお母さんに安楽死を頼んだ。
答えは却下だった。お母さんは私を世話するので精一杯だというのに何故これほど私にこだわるのか分からない。
お父さんも反対した。
「お前が死んだら俺達は…うっ…う….」
と、悲しい声で言う。
悲しいのは私じゃなくてもしかしたら親だったのかもしれない。
自分の子がこんな姿になって、自分の責任。自分を責め立てているかもしれない。
そう思うと私は涙が出たような気がした。
目は包帯のような物でグルグル巻にして、障害者ながらも、今も近くの特別支援学校に通っている。
特別支援学校は普通の人として学校に行けない人が行く学校で、私はそこの生徒の1人。
そこではみんな楽しく学校生活を充実していた。
楽しい会話が聞こえる。聞こえるだけ….
見えないからみんながどこにいるかも分からない。話しかけれない。でも、そこは優しい人達だった。目が見えなくても話しかけてくれる。
人生が変わったと思った。
私はどこを向いて話したらいいのか分からずとりあえず声が聞こえる方向に向いている。
大きな声で言わないと伝わらない時もあるので少し大変。
時々寝ている時、夢に出てくる。
あの時の恐怖。
人生がまた一変したのはその1年後だった。
毎日話しかけてくれる瑞穂ちゃんが自殺した。
理由は人生の嫌気、だそうだ。
私だって嫌気しかない。なのになんで、私より辛くない人が死んでしまうんだろう…
そう、先生に言った。
すると先生は優しい声でこう答えた。
「自分の気持ちは自分にしか分からないんだ。例えどんなに分かろうとしてもそれはほんの1部にしか過ぎないんだ。
自分の想像で他人を思うのはいけないよ。」
この言葉を聞いても納得はしなかった。
モヤモヤは永遠に残った。
次の年も、再来年も。
月日は流れ…
私が15歳となった時、神を恨んだ。
お母さんが他界した。
過労だそうだ。
過労で死んでしまった。私のせいで死んでしまった。
お父さんは違うと否定した。
否定してくれたのかもしれない。
私の人生、どうしてほしいの?どうしたら正解なの?正解なんてあるの?
疑問が疑問を生んでいく。
負の連鎖が続いていく。
続いて続いて続き続ける。
挙句の果てに、死を選んだ。
1番楽な選択だ。
全てが無に帰るだけ、それだけ。
お父さんは許可してくれた。
「一緒にお母さんとまた、幸せに暮らそう…」
「なぁ…亜希子、結婚した時言ったよな…?一緒に居ない日なんて無いって…」
「なぁ….神は何をしてるんだろうなぁ….」
「こんなことが…あっていいのか…?」
私は黙って聞いてるだけだった。
歯を噛み締めて一緒に行くことになった。
お父さんは私をどこかに連れて行った。
かなり道がゴツゴツしていて、車椅子がガタガタと揺れる。
登っている間、お父さんと最後の会話を交わしていた。
「着いたぞ。」
そよ風が私の髪をゆらゆらと吹かしている。
「ここ…どこ?」
「見せてやりたかったなぁ…この”…!!
景色を”…!!」
お父さんは泣き崩れた。
「そうだねっ…!私も見たかった…!!
景色を”….!!」
私も泣き崩れた。
こんな事があっていいのだろうか。
こんな理不尽があっていいのだろうか。
「おとうさん….私!生まれ変わったら…
こんな世界にさせない凄い人になるからっ!!」
「あぁ…待ってるよ…!!」
ドサッ…
第一感覚【視】〜完〜